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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑨ショッピングモールダンジョン編
266/322

【第百二十八話(1)】新たな企画(前編)

【配信メンバー】

・勇者セイレイ

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・魔物使い雨天 水萌

【ドローン操作】

・秋狐(白のドローン)

 一ノ瀬 有紀です。

 魔災前にちょっとした事故で女性の姿になって、それから魔災に巻き込まれました。

 今は勇者一行の盗賊をやっています。

 

 今日は男性の頃の自分……通称anotherから料理を教わっていました。

 元々勇者一行の仲間入りをするまでは「最低限栄養を取れれば何でもいい」というスタンスだったので、料理なんて全くやったことがありません。

 試しに作った料理はanotherに「野生の猿でももう少しまともなもの作るだろ」と鼻で笑われました。昔の私、ここまで性格が悪かったのでしょうか。

 ムカついたので一発ビンタをかましました。プライドが傷ついたのかちょっとだけ涙目になってました。ざまあみろ。


 ……そんな話は置いておきましょう。

 今、私達はリビングで皆と食事を取っています。

 ですが、どこか殺伐とした空気が流れているので気まずいです。

 あ、決して私の料理をお出しして葬式ムードになっているとかではないです。断じて。決して。……もし、そうだったらごめんなさい。

「……」

 勇者一行のリーダーであるセイレイは、元々から難しそうな顔をしていますが今日は一段と酷いです。ちょっと図形描画ツールで弄れば簡単に般若でも作れそうなほどにしかめっ面をしています。破裂寸前の風船みたいで、あまり関わりたくありません。

「なに。有紀姉も食べたら?」

 いつもはのほほんとしてる空莉でさえも、とても張り詰めた空気を醸し出しています。雨天に次ぐムードメーカーの彼がこの様相なので、正直気まずいったらありゃしません。

 「……むぐ」

 そして雨天も場に流されやすいので、先生に怒られた時みたいに縮こまってもそもそとご飯を食べていました。

 しかし、私が作った肉じゃがに一口手を付けたところで彼女も神妙な表情を浮かべた後、硬直してしまいました。えっと、あの……その。

「空莉君、口元汚れてるよ」

「……ありがとう」

 そして、秋狐こと秋城 紺は、いつもは自由気ままにどこかに行っているというのにどういう訳か、今は空莉の隣に座って甲斐甲斐しく世話を焼いていました。

 どういう風の吹き回しなのでしょう。まあ、この二人なら相性はいいと思うので私は何も言いません。元々秋城は相手に安心感を求めるタイプなので、穏やかな彼とはお似合いだと思います。ただ空気は読んで。

 それから、縋るように私は後輩の船出に視線を送ります。

「……はは……」

 私と目が合った彼女は、一瞬あちらこちらに視線を送った後に苦笑いを浮かべました。いや分からん分からん。なんだその「察して」と言わんばかりの反応は。

 なんだか、私だけ蚊帳の外に追いやられたような気分です。

 穂澄はセイレイと空莉の表情からある程度の状況を理解したのか、何食わぬ顔で食事を取っていました。

 ですが、ふと顔を上げて私の方を見ます。

「これ、有紀さんが作ったの?」

「あっ、うん……そうだけど」

「ちゃんと野菜の皮向いた?土残ってるよ、しっかり洗ったの?」

「……」

「戦闘中は細かいところ気が付くのにこういう所はダメなんだね」

「……ごめんなさい」

「謝罪の言葉は良いから次から気を付けて」

 助けて。この子、最近特に怖いんだけど。


「……美味しいと思うぞ、俺は……うん」

 須藤だけは唯一気を遣ってそう言ってくれました。今はその優しさが身に染みるよ。

 でも顔引きつってるの気付いてるよ。


 ----


 食事を終えた皆はいそいそとその場を離れ、自由時間を過ごし始めた。

 リビングに残ったのは私だけだ。

 

「っはぁ~……」

 さて、どうしようかな。

 明らかにギスギスしてるのは分かるけど、何をどうしたらいいものか。

「四天王、かー……」

 空莉が四天王というのは、可能性のひとつとしては考えていた。雨天以降から現れた者達は皆、何かしらの繋がりを持っていたからだ。

 セイレイの幼馴染であり、瀬川 沙羅と私達の中で唯一面識のあった彼。だからこそ、最後の四天王に選ばれたのだろう。

 私達は勇者一行であり、空莉は四天王という立場を取らないといけない。

 だが、共に戦ってきた彼を傷つけるようなことはできない。けど、やらせの決戦でもしようものなら、当然運営である瀬川 沙羅は納得しないだろう。

「なんかないかなぁ……空莉との戦いを演出しつつ、傷つけなくていい方法……」


「あるよー」

 ぼやいている私に近づいてきたのは、件の秋城だった。

 彼女は何を企んでいるのか、にやにやと楽しげな笑みを浮かべている。

「あ、どう?空莉とは上手くいきそうかな」

「いいいいいいい今関係ないでしょ!?」

 何気なくそう問いかけてみると、秋城は顔を真っ赤にして噛みついてきた。

 コロコロと変わる、分かりやすい表情は魔災以前から変わらないようだ。

 そんなどこか懐かしい様相に思わず「ぷっ」と吹き出し笑いしてしまう。より一層秋城の顔が真っ赤になったけど。

「……で、どうしたの?何かいい案ある?」

 ただ茶化していても話が進まないので、早々に本題に切り込んだ。すると、秋城はまた違う理由で頬を膨らませる。

「いい案も何も、何度も”ショッピングモールダンジョンにおいで”って言ったのに有紀ちゃんとか全然来ないじゃん」

「あ」

「あ、じゃないが?」

 正直、忘れていた。

 私とセイレイ達が出会った頃から「いつかはドローンを拾ったショッピングモールに行かないと」という話はしていた。

 しかし、次から次に変化していく状況の中でいつしか、そんな話など忘却の彼方へ消えていた。


 どれほど腑抜けた顔を浮かべていたのか自覚していないが、気付けば秋城は頬を膨らませて怒りを主張している。

「むー……忙しかったのは分かるよ?道音ちゃんとかほったらかして行けないもんね。セイレイ君ほったらかして行けなかったもんね」

「……ごめん」

 さすがにねちねちと言われては謝るよりほかはない。

「むー!」

「わっ、やめてよ紺ちゃん!悪かった!悪かったって!」

 秋城はいきなり私の背中に飛び移った。それからロデオの如くバタバタとのしかかったまま暴れる。

「もう今視聴者が欲しい情報なんて残ってないよ!全部暴露しちゃったもん!白のドローンは私だし、今更お葬式ムードの追憶のホログラムとか見せれんでしょうがっ!」

「えっ、そうなの!?」

「追憶のホログラムで私と有紀ちゃんの映像映し出して『紺ちゃん……』とか郷愁に浸って欲しかったのに!いるもん!私ここにいるもん!」

「……じゃあ行かなくて良くない?」

「よ・く・な・い!!」

 秋城の暴走は止まらない。というか出さなくていいボロまで次から次に出している気がしてならない。

「私の宣伝も兼ねてるの、視聴者を増やさないといけないから!」

「そっちが本音なんだね」

「私が生み出す企画の中で、セイレイ君と空莉君に戦ってもらいますっ!それならお互いに傷つかないし、四天王としての尊厳も維持できると思うんですっ」

 秋城は勝ち誇ったような顔で「ふふん」と鼻を鳴らした。


 ……この世界の四天王の尊厳って何だろう。

 

 To Be Continued……

【開放スキル一覧】

セイレイ

青:五秒間跳躍力倍加

緑:自動回復

黄:雷纏

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

赤:形状変化

雨天 水萌

青:???

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