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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑦ターミナル・ステーション・ダンジョン編
213/322

【第百二話(2)】想い人との出会いの地(後編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

世界に影響を及ぼすインフルエンサー。

他人を理解することを諦めない、希望の種。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染として、強い恋情を抱く。

秋狐の熱心なファンでもある。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

男性だった頃の記憶を胸に、女性として生きている。

完璧そうに見えて、結構ボロが多い。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心穏やかな少年。あまり目立たないが、様々な面から味方のサポートという役割を担っている。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。健気な部分を持ち、ひたむきに他人と向き合い続ける。

案外撫でられることに弱い。

・another

金色のカブトムシの中に男性の頃の一ノ瀬 有紀のデータがバックアップされた存在。

毅然とした性格で、他人に怖い印象を与えがち。

・ディル

役職:僧侶

瀬川 沙羅の情報をベースに、ホログラムの実体化実験によって生み出された作られた命。詭弁塗れの言葉の中に、どこに真実が紛れているのだろうか。

船出 道音(ふなで みちね)

元Relive配信を謳っていた少女。過去に執着していたが、セイレイに希望を見出したことにより味方となる。やや気が強い。

秋城(あきしろ) (こん)

配信名:秋狐

セイレイ達より前にLive配信を歌っていた少女。運営権限を持ち、世界の真相に近い存在でもあるようだ。

須藤(すとう) 來夢(らいむ)

配信名:ストー

船出 道音より運営権限を引き継いだ、漆黒のパワードスーツに身を包む青年。今回の配信相手でもある。

 崩れ、積み重なった本が足の置き場を失っていた。

「このままじゃ、まともに通れないね」

 ホズミはそう呟くと共に、足の置き場を奪う本を丁寧に片付け始めた。

 その光景を見たディルが苦言を呈する。

「ねえ。片付けするのも大事だけど、目的を忘れないでよ」

「だからって本を滅茶苦茶にしていい訳ないでしょ。先人の知恵には敬意を払わないと」

「……はー……面倒な性格ねえ。戦士クン、出番だよ」

 呆れたようにため息を吐いたディルは、ちらりとクウリの方を向く。一体どういう意味での”出番”なのか分からずクウリはきょとんと眼を丸くする。

「あっ、片付けたらいいのかな」

 それから、ハッとしたようにホズミと同じく本の片づけを始めようとした。

 だが、意図が伝わっていなかったことにディルは苦笑交じりにため息を吐く。

「いや、違うって」

「えっ、ごめん。何?」

「ほら、せっかく戦士クンは”浮遊”を持ってるんだからさ。それを使えば早いでしょ」

「あっ」

 ディルの指摘で初めてクウリも気付いたのだろう。床に散らばる本へと視線を送り、クウリは静かに宣告(コール)する。

「……スパチャブースト”青”」

 ……少し不服そうな声音だったが。

[クウリ:浮遊]

 そのシステムメッセージが流れると共に、床に散乱していた本がふわりと浮かび上がる。

 クウリは両手を動かし、器用に宙に浮かぶ本を棚の上に乗せていく。

 あっという間に散乱していた本が片付いたことに、ディルは満足そうに頷いた。

「うん。これで自由に行動できるね。戦士クンは分からなかったら聞くようにしてよ?」

「……気を付けるよ」

 委縮しながらもそう言葉を返すクウリ。

 俺としてはあんまりな口ぶりのディルを看過することが出来ない。あえて低い声を作り、ディルを咎める。

「さすがにこれはお前じゃなきゃ思いつかねーよ。クウリは間違ったことしてねーだろ?」

「話には流れがあるの。ボクはちゃんと言ったつもりだけどなあ」

「お前なりに周りへ気遣ってるのかもしれねーけどさ。もう少し言い方考えてくれ」

 思わず言葉に怒りが滲む。どうしてこうもこいつはデリカシーに掛けた物言いしかできないのか。

「セーちゃん。僕なら大丈夫だから、庇ってくれてありがとう」

 クウリは柔らかな笑みを零しつつ、俺達の会話に割って入る。

「クウリ……でも……」

「僕の為に怒ってくれてるのは分かってる。でも、今優先すべきなのはそっちじゃないよ」

 そう言って、クウリは上階へと続く階段に視線を向ける。

 今俺達がいる1階と比較しても、明らかにその先からは陰鬱な空気が漂っていた。

「恐らくこの先のフロアも、僕の”浮遊”は役に立つはず。足元に気を付けて進もう」

「……分かった」

 そう返されては、何も反論することが出来なかった。クウリは身構えるように大鎌を顕現させ、周囲を警戒しつつ進む。

 俺の隣に並んだホズミは、曇った表情を浮かべ、不安が滲む胸中を語る。

「正直、この先に進むのは、怖い……」

「……俺もだ」

「パパ、ママ……どうして……」

「……」

 それから、心の底に渦巻く陰鬱とした感情を振り払うように、ホズミは首を横に振った。

「……ごめん。弱音吐いてた。行こう」

「そんな時もあるだろ、気にすんな」

「……ありがと」

 意を決したように、続く道へと進む俺達。

 ディルはそんな俺達を見ながら、不服そうにぽつりと呟く。


「ボクだって、決して皆のことを馬鹿にしたい訳じゃない。もちろん、キミ達の為に行動するのが最善だと思ってるよ……はは、上手くいかないもんだね」

 こいつも、こいつなりの葛藤を抱いているのだろう。

 だが、返す言葉が見つからない俺は、聞こえなかったふりをして先へ進むことにした。


 ★★★☆


『サポートスキル”光源開放”』

 恒例行事のように、”光源開放”を使用する為にnoiseはそう宣告(コール)した。

 瞬く間に、薄暗い図書館の内装が明かりにともされる。それと同時に暗闇から姿を現したのは、二体の骸骨だった。

「……ゾンビとは戦ったことあるけどさ、今度は骸骨?いや、スケルトンかな」

 本棚の影から様子を伺ったディルは、そう己の見解を発する。

 しかし、どういう訳か図書館の中にいる魔物は、そのスケルトン2体のみだった。

 体格の異なる、二体のそれは、ぼろきれのように破けた衣服を身に纏っている。背丈は、おおよそ成人ほど。

 頭蓋骨はひび割れ、頭蓋腔が露見している。

「……まさか」

 その特徴には、心当たりがあった。


 ——だから、パパとママが魔物に頭を潰されるその瞬間まで、私はそれが魔物だって気付くことはなかったよ。


「……パパ、ママ?」

 ホズミがぽつりと声を漏らす。縋るように、ゆっくりとそのスケルトンに向けて一歩、また一歩と距離を縮める。

「……」

 スケルトンは、何も喋らない。いや、喋ることが出来ない、というのが正しいか。

 そんなスケルトンへと近づこうと、ホズミは何の警戒もせずに歩みを近づける。

「……っ!駄目だ、ホズミ!」

 俺は彼女を止めようと、必死に彼女の手を引く。そして、嫌な予感を感じ取り、瞬時に自身へと身体を抱き寄せる。


「……!!」

 スケルトンが隠し持っていた片手剣が、先ほどまでホズミが立っていた空間を切り裂いた。

 その後方では、成人女性ほどの背丈のスケルトンが杖を構えて——。

[スケルトン:氷弾]

「っく!?スパチャブースト”青”!」

[セイレイ:五秒間跳躍力倍加]

 ホズミを抱えて、俺は迷うことなく宣告(コール)。淡く、青い光を纏った両脚に力を入れて横っ飛びに回避する。

 先ほどまで俺が立っていた空間を、瞬く間に氷漬けにしていく。

「なんで、なんで……」

 茫然とした表情を浮かべ、ホズミは俺とスケルトンを交互に見やる。

 床に散乱する本が作り出す道の中、スケルトンは軽い足音を立てながら俺達へと歩み寄る。

「セーちゃんっ!スパチャブースト”青”!」

[クウリ:浮遊]

 俺の後衛で、クウリは手を高く掲げて宣告(コール)した。瞬く間に散らばっていた本が舞い上がり、フローリングが姿を現す。

 そのまま脇の棚に寄せるように、雑に本を重ねた後クウリは大鎌を構え直す。

「冷静になって、二人とも!」

「クウリ……」

「ホズちゃんの態度を見ていたら否が応でも分かるよ!あのスケルトン、ホズちゃんのお父さんとお母さんなんだよね?」

「……恐らく、な」

 俺がそう答えると共に、クウリは静かに怒りを滲ませる。

「……どれだけ人の心を、弄べば済むんだ」

 怒りに満ちた表情を隠すように、クウリの揺れる髪が目元を隠す。冷え切った氷のような声音が響く。

「許せない。許すことなんて出来ないよ。終わらせなきゃ、こんな最悪を作るホログラムなんて」

「……ああ」

 俺の返事を聞いたクウリは、それからホズミへと語り掛ける。

「ねえ、ホズちゃん。一度、赤と青の杖。両方を合わせてみて欲しい。僕の予想が確かなら……」

[だから、それは出来ちゃまずいって話ですっ……あー……でも……]

 雨天の、止めるべきか迷っているコメントが流れる。ホズミは、クウリの提案が理解できないようで未だ呆けた表情を向けていた。

「魔災前に読んだ漫画で見たことあるんだ。炎のエネルギーと、氷のエネルギー。相反する2つのエネルギーをぶつけ合うことでスパークして、強力な一撃を生むことが出来るって」

[だ、だからそれ漫画の話で、現実じゃ無理……]

「何事もやってみないと分からない、でしょ」

[あーっ!もう!私は止めましたからね!?]

 そう不貞腐れたようなコメントが流れると共に、雨天からのコメントは止まった。

 ホズミは相変わらず意味が分からないといった様子を見せていたが、クウリの言う通りに赤と青の2本の杖を同時に顕現させる。

「……こう……?」

 たどたどしくも、2本の杖を重ね合わせるホズミ。

 次の瞬間だった。


「……きゃっ!?」

 瞬く間に、2本の杖に備え付けられた宝玉が光り輝く。

 徐々に光の粒子を纏い始めた杖が、そのシルエットを歪ませる。光を纏ったまま、杖から弓の形へと生まれ変わった。

 それと同時に、ドローンのホログラムが映し出す”総支援額”から一気に50000円が消費された。


[ホズミ:極大消滅魔法]

 光を纏う弓がホズミの手に形成されると同時に、システムメッセージが流れる。

「……これは……弓?」

 きょとんとした表情で、ホズミは訳も分からずに弓を構える。

 照準をスケルトンに合わせると同時に。

 徐々に、呆けた表情から、真剣な表情へと変わっていく。

「うん、なんとなく分かったかも……皆、スケルトンの注意を引いてくれないかな?」

「……いいけど、どうしたんだ?」

 その表情の変化が変わらず、俺は弓を構えたままのホズミへと問いかける。

 だがホズミは俺の方を見ることなく、言葉を続けた。

「生と死、希望と絶望……同じだよ。相反する2つがぶつかり合うことで、より大きな力が生み出されるの」

 そう伝えると同時に、ホズミは本棚の隙間を縫うように移動する。スケルトンの死角になるように、慎重に彼女は狙撃ポイントを探しているようだ。

 おおよそどのような力を持つのか検討すらつかないが、俺達はもうホズミの想いに応えるしかない。

「……あはっ、いいね。もうとっくに50000円も使ってるんだ、どうせならロマン砲ぶっ放さないとね?」

「ああ。何とかして2体のスケルトンにホズミの魔法を当てよう」

 俺は、それからドローンへと視線を送る。

 正確には、ドローンを介して配信を観ている視聴者へと。

「頼りにしてるぜ」


「……!」

 成人男性ほどの体格のスケルトンは、俺を見据える。右手に持った片手剣を後方へと引き、突撃の構えをとった。

 そんなスケルトンへ向けて、俺は茶化すように言葉を掛ける。

「ははっ、お父さん、お母さん。娘さんを私にください……ってな。じゃあ、行くぜ」

「……んぐっ」

 本棚に隠れているホズミがむせ込む声が聞こえたが、あえて聞こえないふりをした。


To Be Continued……

どう見てもメド▢ーアです本当に(ry


https://www.nicovideo.jp/watch/sm44723981?ref=garage_share_other

棒人間バトル新作です。見てね。バッドエンドだけど(ネタバレ)


総支援額:11000円

[スパチャブースト消費額]

 青:500円

 緑:3000円

 黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

 青:五秒間跳躍力倍加

 両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。

 緑:自動回復

 全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

 黄:雷纏

 全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

 また、思考能力が加速する。

②クウリ

 青:浮遊

 特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

 緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

 黄:風纏

クウリの全身を吹き荒ぶ風が纏う。そのまま敵を攻撃すると、大きく吹き飛ばすことが可能。

③ディル

 青:呪縛

 指先から漆黒の鎖を放つ。鎖が直撃した相手の動きを拘束する。

 緑:闇の衣

 ディルを纏う形で、漆黒のマントが生み出される。受けるダメージを肩代わりする効果を持つ。

 黄:闇纏

 背中から漆黒の翼を生やす。飛翔能力を有し、翼から羽の弾丸を放つことが出来る。

 漆黒の羽には治癒能力が備わっている。

④ホズミ

 青:煙幕

 ホズミを中心に、灰色の煙幕を張る。相手の視界を奪うことが出来るが、味方の視界をも奪うというデメリットを持つ。

 緑:障壁展開

 ホズミを中心に、緑色の障壁を張る。強固なバリアであるが、近くに味方がいる時にしか恩恵にあやかることが出来ない為、使用には注意が必要。

 黄:身体能力強化

 一時的にホズミの身体能力が強化される。攻撃力・移動能力・防御力が大幅に上昇する他、魔法も変化する。

魔法

 :炎弾

 ホズミの持つ両手杖から鋭い矢の如き炎を打ち出す。

 一度の炎弾で3000円と魔石一つを使用する。火力は高いが、無駄遣いは出来ない。

 :マグマの杖(身体能力強化時のみ使用可)

 地面に突き立てた杖から、マグマの奔流が襲いかかる。ホズミの意思で操作可能。

 一度の使用で10000円と魔石一つを使用する。高火力であるが、スパチャブーストの使用が前提であり、コストが高い。

 :氷弾

 青色の杖に持ち替えた際に使用可能。氷の礫を射出し、直撃した部分から相手を凍らせることが出来る。

 炎弾と同様に、3000円と魔石一つを使用。

 :氷壁

 氷塊を射出し、直撃した部分に巨大な氷の壁を生み出す。死角を作り出す効果がある他、地面を凍らせることにより足場を奪うことも出来る。

 魔石(大)一つと、10000円を消費する。

 :極大消滅魔法

 2つの杖を組み合わせることにより、光を纏った弓が生み出される。

 詳細不明。

ドローン操作:一ノ瀬 有紀

[サポートスキル一覧]

・斬撃

・影縫い

・光源解放

[アカウント権限貸与]

①雨天︎︎ 水萌

 ・消費額;20000円

 ・純水の障壁

 ・クラーケンによる触手攻撃

②船出︎︎ 道音

 ・消費額:20000円

 ・ワイヤーフックを駆使した立体的な軌道から繰り広げられる斬撃

 ・ノアの箱舟

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