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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑦ターミナル・ステーション・ダンジョン編
209/322

【第百話(2)】人々の集う場所(中編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

世界に影響を及ぼすインフルエンサー。

他人を理解することを諦めない、希望の種。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染として、強い恋情を抱く。

秋狐の熱心なファンでもある。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

男性だった頃の記憶を胸に、女性として生きている。

完璧そうに見えて、結構ボロが多い。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心穏やかな少年。あまり目立たないが、様々な面から味方のサポートという役割を担っている。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。健気な部分を持ち、ひたむきに他人と向き合い続ける。

案外撫でられることに弱い。

・another

金色のカブトムシの中に男性の頃の一ノ瀬 有紀のデータがバックアップされた存在。

毅然とした性格で、他人に怖い印象を与えがち。

・ディル

役職:僧侶

瀬川 沙羅の情報をベースに、ホログラムの実体化実験によって生み出された作られた命。詭弁塗れの言葉の中に、どこに真実が紛れているのだろうか。

船出 道音(ふなで みちね)

元Relive配信を謳っていた少女。過去に執着していたが、セイレイに希望を見出したことにより味方となる。やや気が強い。

秋城(あきしろ) (こん)

配信名:秋狐

セイレイ達より前にLive配信を歌っていた少女。運営権限を持ち、世界の真相に近い存在でもあるようだ。

須藤(すとう) 來夢(らいむ)

配信名:ストー

船出 道音より運営権限を引き継いだ、漆黒のパワードスーツに身を包む青年。今回の配信相手でもある。

 振るう剣の軌跡が描く未来。

 魔災によって何もかもを奪われた世界を取り返すべく、俺は今日も魔物を打ち倒す。

「はああああああっ!!」

「グギャッ……!!」

 鋭く横に薙いだファルシオンの軌跡が、インプに重なる。

 胴を切り裂かれたインプは瞬く間にその肉体を灰燼へと変えていく。

『標的18!強化個体2!!』

「分かった!」

 ドローンのスピーカーから配信ナビゲーターを務めるホズミの声が響く。

 戦況を優位に進める為にも、早めに敵の攻撃パターンを把握しておきたいところだ。

 noiseも同じ考えだったのだろう。

「任せろ!」

 彼女はインプの注目を一同に受けながら、群れの周りを迂回するように駆け出した。

 横倒しになった商品棚の上を軽々と乗り越え、栗色の髪を残像としてインプを翻弄する。

「ギギッ!」

 すると、突然紫色の皮膚をしたインプはnoiseに向けて右手の人差し指を向けた。

「noiseっ!」

「分かってる!」

 不穏な予感を瞬時に察知したnoiseは、インプの視界から隠れるように商品棚の後ろに着地。

 次の瞬間、インプの人差し指が大きく光に煌めいた。


 放たれたのは、鋭く、細い熱光線。

 高熱の衝撃波が、周囲を赤く照らす。

「っ!?」

 noiseは驚愕しつつも、ひらりと身を翻してそれを回避。だが、一撃では終わらなかった。

 二発、三発、と無数に放たれる熱光線が、一同にnoiseに襲い掛かる。

「狙いが正確なのなら、避けるのも簡単だっ!!」

 貫かれた商品棚が熱によって溶け出す。撃ち抜かれた蛍光灯がひび割れ、ガラス片が降り注ぐ。

 だが、noiseは臆することなく、襲い掛かる熱光線の隙間を縫うように移動。結果として、全てを容易く回避して見せた。こんな芸当が出来るのはnoiseくらいのものだろう。

 そして、一同の注意がnoiseに向いていることは、俺達にとって大きなチャンスだった。

「僕に任せてっ!スパチャブースト”緑”!!」

[クウリ:衝風]

 インプの群れの中へと躍りかかったクウリは、素早く宣告(コール)。彼を中心として、強風が巻き起こる。

 noiseに注意が向いていたインプ達は、”衝風”に吹き飛ばされる瞬間まで彼に気付くことはなかった。

「こんなとこでも影の薄さ発揮しなくていいからっ!!」

 どこか切実な思いの籠った言葉を吐きながら、体勢の崩したインプへと大鎌を振り下ろす。

 身体を真っ二つにされたインプの身体が一瞬にして灰燼と化す。

「っ、おいクウリ!避けろっ!!」

「っ、え!?」

 そんな彼の隙を狙って、一匹のインプがクウリ目掛けて指差していた。その指先に光が収束していく——。


「ボクのスキルのパクリじゃん。”浄化の光”の物まね?あはっ」

 インプの物まねをするように、ディルは右手の人差し指を差す。その指が示す先は、クウリを狙っているインプだ。

「スパチャブースト”青”っ、ばーん!!」

[ディル:呪縛]

 その宣告(コール)に伴って、ディルの指先から伸びる漆黒の鎖。大気を切り裂くように素早く伸びた鎖が、瞬く間にインプを縛り上げる。

「ギッ!?」

 身体を縛られ、身動きの取れなくなったインプ。苦悶の声を漏らし、身を捩らせるが鎖に絡まれた身体ではびくとも鎖を解くことなど出来なかった。

「さすがディル君っ、頼りにしてるよ」

「たまには自分で解決する方法も見つけなよ。ボクだって本当はこんな役回り、柄じゃないんだからさ」

 どこか不満を漏らしながら、ディルは身動きの取れなくなったインプ目掛けてチャクラムを投擲する。

 拘束されていたインプの喉元を切り裂くチャクラムは、灰燼を巻き上げながら虚空へと溶けて消えた。

 再びディルが右手にチャクラムを顕現させると共に、インプの姿は灰燼と化す。

「はいっ、あと16体。分かってると思うけど、お金の無駄遣いは避けていこうね」

 ディルはくすくすと、茶化すように語り掛けた。余裕ぶった表情で、チャクラムを人差し指に引っ掛けてくるくると回して遊んでいる。

「当たり前だろっ!!」

 そんなディルの言葉を聞きながら、俺は未だ体勢を崩したままのインプを一体ずつ確実に倒していく。


 俺達が、各々の武器を振るうのに連なって、確実にその頭数は減っていった。


[これを使え。あのビームは絶対当たったらやばい! 10000円]

[撃破数12体。残り7体]

[あの強化個体が一体どんなの能力を持っているか、だな]

[多分ビームが強化されるとかそんなんじゃないか?攻撃範囲が広くなるとか]

[うっわ怖いなそれ……どう対処するか 10000円]

[俺ももう送っとくわ。頑張れ 10000円]

[すまん貯金が怪しい。これしか送れん 3000円]

[送ってくれるだけで嬉しいよ。ありがとう]

[そうですっ。応援する気持ちはみんな同じなんですっ!!負けないでセイレイ君達っ!おーっ!!]

[ありがとう。そう言ってもらえると少し気が楽になるよ]


『総支援額65500円!!残り7、そのうち強化個体2!!強化個体への動きを警戒して!!』

「了解!!皆、強化個体が動くまでスキル使用は極力避けろ!!」

 強化個体が動き出すまで、なるべく支援額は維持しておきたい。その為、俺はそう指示を回した。

 そんな俺に並ぶように空を泳ぐドローン。スピーカーからは、ホズミがタイピングする音が響く。

『私が隙を作ります!サポートスキル”熱源探知”!!』

 次の瞬間、配信画面に映し出されたインプの群れにターゲットマークが重なる。それと同時に、付随効果に伴ってインプの動きが瞬く間にスタンした。

 それを確認したホズミは、更に宣告(コール)を重ねる。

『次!!サポートスキル”支援射撃”!!』

 ホズミがそう叫ぶのに連なって、ドローンから伸びる銃口。そのレティクルは既にインプに向けて重ねられていた。

『行けっ!』

 伸びた銃口が火を噴く。瞬く間に銃弾がインプの眉間を貫き、ゆっくりと浮いた身体が地面に崩れ落ちる。

 瞬時に素早くドローンを操作するホズミ。流れるようなタイピングの音に連なって、他の、驚いた様子を見せているインプへと銃口を向けた。

『次っ!』

 再び火を噴く銃口に連なって、再び別のインプの身体が崩れ落ちる。

 未だにスタン状態から脱することの出来ないインプの群れに向けて、俺達は幾度となく各々の武器を振るう。

 舞い上がる灰燼の中、ついに強化個体を覗いて全滅させることに成功した。


「——さて、あとは強化個体のみだ」

 残すは、漆黒の外皮を持ったインプのみ。そいつらは悠然と空を泳ぎながら、余裕ぶった様子で俺達を見下ろしている。

 そのうちの一体が、ゆっくりとその人差し指を俺へと向けた。瞬時に身の危険を察知した俺は、仲間達から遠ざかるように駆け出す。

「ギギッ!!」

 過ぎった予感は見事に的中。

 漆黒のインプが放った熱光線が、細く、鋭く俺に向かって一直線に伸びていく。

(……他のやつが放ったビームと同じじゃねえか)

 想定していた脅威ほどではないことに肩透かしを食らいつつも、俺は余裕をもってそれを回避。

 俺がいた空間を熱光線が貫く——と思っていたが。

「セイレイっ!!まだだっ、逃げろ!!」

「……!?」

 それは地面に着弾する寸前で大きく軌道を曲げ、再度俺目掛けて襲い掛かる。

 ——油断していた。

「ぐっ!!」

 突如として、左足に想像を絶する痛みが迸る。

 例えるなら、熱した鉄をそのまま押し付けられたような、逃れることの出来ない激痛だ。

 左足を熱光線によって貫かれ、体勢を維持することが出来なくなる。そのまま俺は崩れるようにして地面に倒れ込んだ。

『セイレイ君っ!!』

「——っ」

 何度も体を起こそうとするが、既に漆黒のインプは再び俺の方を指差している。

(……これは避けられない……)

 想像したのは、熱光線によって瞬く間に心臓を貫かれた自身の光景。考えたくもないが、今の俺には対抗手段は持ち合わせていない。

 ——なら、スパチャブースト”緑”しか——。


 最悪の末路を避ける為の唯一の手段が脳裏を過ぎった瞬間だった。

「セイレイ君っ、ボクに任せなよ。スパチャブースト”黄”」

[ディル:闇纏]

 俺の頭上で、ディルの緊張感一つさえ感じない宣告(コール)の声が響く。

 降り注ぐのは、漆黒の羽。

「言っただろ。もうセイレイ君を死なせやしないって、ボクが守るんだよ。キミ達がLive配信を謳うからこそ、対の存在としてDead配信のボクが必要だった。絶望があるからこそ、希望は生まれるのさ。改めて見せてあげるよ、ボクのチカラ」

 見上げれば、漆黒の翼を大きく伸ばしたディルが空を舞う。

 悠然と空を舞うその姿は、まるで開放的にさえ思えた。

「さ。見せてあげようじゃん、天才ディル君の、ボクなりの配信をね」

「ギィッ!!」

「あはっ、おいで」

 インプは突如現れた乱入者であるディルに対し、苛立った声を上げる。

 そして、そのままターゲットをディルに変更して熱光線を放つ。

「おいっ、ディル——」

「安心しなって」

 ディルは翼を畳み、熱光線に備えて身体を小さく縮こまらせる。その熱光線が、翼を貫く光景が想像され、俺は思わず目を背けた。

 ——だが。

「あはっ、その程度かあ」

 再び大きく広げた両翼が、容易くインプが放った熱光線を弾き飛ばす。威力が減衰し、勢いを失った熱光線は虚空へと溶けて消えた。


 にたりと、挑発するように歪んだ笑みを浮かべるディル。

「ほら、その程度?来なよ、空中戦なら相手するよ」

 ディルはチャクラムを何度も宙に投げてはキャッチ、を繰り返しながらそう語り掛ける。


「ギィィィッ!!」

「あはっ、こーんな挑発に乗っちゃうの情けないね」

 襲い掛かるインプに向けて、更にディルは嘲るように笑う。

 それから、更に大きく翼をはためかせてインプの元へと飛翔。

 漆黒が、衝突する。


To Be Continued……

総支援額:45500円

[スパチャブースト消費額]

 青:500円

 緑:3000円

 黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

 青:五秒間跳躍力倍加

 両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。また、着地時のダメージを無効化する。

 緑:自動回復

 全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

 黄:雷纏

 全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

②クウリ

 青:浮遊

 特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

 緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

 黄:風纏

クウリの全身を吹き荒ぶ風が纏う。そのまま敵を攻撃すると、大きく吹き飛ばすことが可能。

③noise

 青:影移動

 影に潜り込み、敵の背後に回り込むことが出来る。また、地中に隠れた敵への攻撃も可能。

 (”光纏”を使用中のみ)

  :光速

 自身を光の螺旋へと姿を変え、素早く敵の元へと駆け抜ける。

 緑:金色の盾

 左手に金色の盾を生み出す。その盾で直接攻撃を受け止めた際、光の蔦が相手をすかさず拘束する。

 黄:光纏

 noiseの全身を光の粒子が纏う。それと同時に、彼女の姿が魔災前の女子高生の姿へと変わる。

 受けるダメージを、光の粒子が肩代わりする。

④ディル

 青:呪縛

 指先から漆黒の鎖を放つ。鎖が直撃した相手の動きを拘束する。

 緑:闇の衣

 ディルを纏う形で、漆黒のマントが生み出される。受けるダメージを肩代わりする効果を持つ。

 黄:闇纏

 背中から漆黒の翼を生やす。飛翔能力を有し、翼から羽の弾丸を放つことが出来る。

ドローン操作:前園 穂澄

[サポートスキル一覧]

・支援射撃

 弾数:2

 クールタイム:15sec

 ホーミング機能あり。

・熱源探知

 隠れた敵を索敵する。

 一部敵に対しスタン効果付与。

[アカウント権限貸与]

①雨天 水萌

・消費額:20000円

・純水の障壁

・クラーケンによる触手攻撃

②船出︎︎ 道音

 ・消費額:20000円

 ・ワイヤーフックを駆使した立体的な軌道から繰り広げられる斬撃

 ・ノアの箱舟

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