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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑦ターミナル・ステーション・ダンジョン編
198/322

【第九十四話(1)】隠し仕様(前編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

世界に影響を及ぼすインフルエンサー。

他人を理解することを諦めない、希望の種。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染として、強い恋情を抱く。

秋狐の熱心なファンでもある。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

男性だった頃の記憶を胸に、女性として生きている。

完璧そうに見えて、結構ボロが多い。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心穏やかな少年。あまり目立たないが、様々な面から味方のサポートという役割を担っている。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。健気な部分を持ち、ひたむきに他人と向き合い続ける。

案外撫でられることに弱い。

・another

金色のカブトムシの中に男性の頃の一ノ瀬 有紀のデータがバックアップされた存在。

毅然とした性格で、他人に怖い印象を与えがち。

・ディル

役職:僧侶

瀬川 沙羅の情報をベースに、ホログラムの実体化実験によって生み出された作られた命。詭弁塗れの言葉の中に、どこに真実が紛れているのだろうか。

船出 道音(ふなで みちね)

元Relive配信を謳っていた少女。過去に執着していたが、セイレイに希望を見出したことにより味方となる。やや気が強い。

・秋城 紺

配信名:秋狐

セイレイ達より前にLive配信を歌っていた少女。運営権限を持ち、世界の真相に近い存在でもあるようだ。

【勇者パーティのコミュニティ】

[こんにちは、魔法使い兼配信ナビゲーターのホズミです]

[こんにちはー]

[いつも楽しみにしてます]

[またダンジョン配信の告知?]

[それもありますが、今回は少し皆さんの知恵や気付きをお借り出来たらと思いまして]

[どうしたの?]

[近々、私達勇者パーティはかつての武闘家、現Relive配信後任のストーとの決戦を予定しています]

[ストー……誰だっけ]

[最初に総合病院で船出と一緒に敵として現れたやつだよ。ほら、あの機械の身体の]

[ああ、雨天との戦いの後にも出てきたやつか。え、勝てんの?]

[クウリが情報整理を手伝ってくれていますが……正直、打開策は見えません。その為、視聴者としての視点から何か意見を貰えたら、と思いまして]

[なるほどです]

[俺達も力になりたいよ。けど、唯一戦えるお前らが考えても意見が出ないっていうのに、良い意見出せる自信ないぞ]

[何でも大丈夫です。要約、考察は私達の仕事ですから]

[さすが]

[って言っても、厳しい。ログ追いながら総合病院の配信アーカイブ見てたけど無理じゃね?]

[あの千紫万紅か?無数のビームを受けたらひとたまりも無いだろ。勇者パーティはスパチャブースト赤を使える人が居ないんだから、対抗策がない]

[noiseさんが唯一、赤が使える為の鍵?を持ってるんだよな]

[それが都合よく開花したら、の話な。ホズミちゃんは少しでも確実性のある情報が欲しいんだよ]

[なるほど]

[仰る通りです。奇跡的にスパチャブーストの開花に伴った打開に頼ってきたのは事実です。ですが、私達全員が既に”黄”を開花した状態ではそれを望むことは出来ません。勇者の五秒間跳躍力倍加のように、新たな仕様を発見出来れば良いのですが……]

[そっか。あれ初回無料だもんな]

[ガチャみたい]

[あ。ひとつ気になってたんだけどさ、セイレイの雷纏?だっけか。あれだけ能力微妙じゃない?]

[おうなんだ勇者ディスか]

[草]

[いやちょっと話聞いてくれwだってさ、セイレイ以外の纏系スキル思い返してみろよ。クウリ君は吹き飛ばし能力。ホズミちゃんは魔法スキルの強化効果付き。noise姉さんは特例過ぎるけど、ダメージの身代わり効果。メンヘラホモは飛翔能力。セイレイだけ効果が地味だろ]

[もうディルのその呼び名定着したんだな]

[秋狐さんに今度お稲荷捧げてくるわ。思ってたこと言ってくれた]

[でも、確かに指摘の通りですね。セイレイ君のスキルは強力ですけど、本人の身体能力によるところが大きい。追加効果は無くても問題はないですけど……]

[一応考えて見ても良いんじゃないかな]

[ん?なあ、ストーって最初、セイレイを殺そうとしてたんだよな]

[そうだと思うけど]

[話の意図がつかめん。どうかした?]

[いや、ストーと戦った時のアーカイブを見てて疑問に思ったんだけどさ——]


[——]

[——]

[なるほど、一考の余地はありそうですね]

[ただもし外れてたら罪悪感やばいから、あくまでも可能性な!?保険掛けさせろ]

[必死じゃねえか]

[いやまあコメントに従って大惨事になったら、明らかにお前のせいだもんな]

[だからだよ!?俺のせいで世界から希望が消えたとか嫌だわ]

[もちろん私達で対処法も練りますので安心してください笑]


★★★☆


「……」

 穂澄はダイニングテーブルに腰掛けてパソコンのモニターとにらめっこするように画面を睨んでいた。ある時は苦笑を漏らし、ある時は感嘆の表情を浮かべ、時々忙しなくメモ帳にペンを走らせる。

 恐らく、次の配信の方針について考えているのだとは思う。最も視聴者との交流が盛んな穂澄だからこそ、任せられることだ。

「ホズちゃんのこと、気になる?」

 じっと向かいに座る穂澄のことを見ているのが気になったのだろう。空莉は少しいたずら染みた笑みを浮かべながら俺の隣へと座った。

「そりゃ気になるだろ。穂澄が色々とやってくれてんだし」

「ふふ、そうだよねー?皆と一生懸命に関わってくれるホズちゃんだもん。視聴者にもファンはいるみたいだし」

「……なんだよ、空莉。何が言いたいんだよ?」

 明らかに話を誘導しようとしている雰囲気を感じ取った俺は、思わず低い声でそう問いかける。

 対して、空莉はにこにこと穏やかな笑顔を崩さず——けれども、どこか真剣な雰囲気を纏わせて言葉を返す。

「ホズちゃんがあれだけなりふり構わず頑張ってるのは、セーちゃんの為なんだよ」

「俺の……?」

「セーちゃんがずっと未来の為に頑張ってるの、分かるからさ。ホズちゃんはそんなセーちゃんの足枷になりたくないんだよ」

 空莉が言いたいことは分かる。でも、どうして唐突にそんなことを振ったのかは分からなかった。

 呆けた顔をしているのがバレたのだろう。ついに空莉は真剣な表情を作って問いかける。

「……ホズちゃんの頑張りをさ、労ったことある?」

「……」

 それに、『はい』と即答することが出来なかった。

 俺の沈黙を否定と取ったのだろう。空莉は苦笑を漏らす。その笑みには、どこか俺に対する非難が籠っている気がした。

「だよね。僕達の配信の中核はホズちゃんありきなの、忘れないでよ?」

「……それは、そうだな」

 ありきたりで、無難な返事しか返すことが出来なかった。

 確かに、ドローンの操作も、コミュニティを通した意思伝達も、穂澄が居なければ成立しないことだ。

 そのことに、改めて気づかされる。

「こういう落ち着いた時間の時にしか言えないことってあるんだからさ」

「空莉が言うと説得力あるよ」

「あははっ」

 山奥の集落で過ごしていた時に、彼が特に懇意にしていた男性のことを思い出す。別れの際に、最後に本心をぶつけ合った二人のことを。

 ……俺が、最後に穂澄に本心で言葉をぶつけたのはいつだろうか。

 気づけば俺は、穂澄の隣に移動していた。俺の存在に気づいた穂澄が、きょとんとした表情で俺の方を見る。

「……ん?どうしたの、セイレイ君」

「あっ、あー……」

 久々に、真っすぐ彼女の顔を見た気がしてどこか気まずい気持ちになる。前までこんなに穂澄と話すことに緊張を覚えたのだろうか。

 だが、穂澄は俺の続く言葉を急かすことなくじっと俺の目を見ていた。

「……や。その、な、いつも……ありがとうな」

 口から出たのは、そんな拙い言葉だった。俺の様子を見守っていた空莉の失笑するのが聞こえる。笑うな。

 対して、俺の言葉を聞いた穂澄は意図が伝わっていないかのように首を傾げた。

「……なんか、悪いもの食べた?」

「食べてねえよ!?や、なんだ。色々やってくれてるのに、感謝の言葉とか、何も言えてなかったなと思ってさ」

「……えへへ。言わなくても伝わってるよ」

 そう言って、穂澄はマウスから手を放し、右手を俺の頭へと置いた。

 彼女が撫でる手は温かく、そしてどこかくすぐったい。

「何だよ、子供じゃねえんだぞ」

「私からしたらセイレイ君はずっと無邪気な子供だよ?」

「成長してると思うけどな……」

 どこか穂澄の言葉に釈然とせず、けれども彼女の手をどける気にもなれなかった。

 穂澄は穏やかな笑みを絶やさずに言葉を続ける。

「分からなくていいよ。私は、そんなセイレイ君が好きなんだもん」

「面と言われると照れくさいんだけどさ」

「照れさせてるもん」

 あっけらかんとそう言い放つ穂澄。

 彼女の手を振り払うことも出来たが、その彼女の手が心地良くて俺はされるがままとなっていた。

 だが、穂澄は途端に真剣な表情を作る。思案するように顎に手を当てて、それからふと思い立ったように言葉を投げかけた。

「あのね、また皆を集めて会議しよう」

「……ん?いきなりどうした?」

 突然そう言い放つ穂澄の思惑が掴むことが出来ない。穂澄は俺の頭に乗せていた手をどけて、パソコンのマウスに再び自身の手を重ねる。

 コミュニティのログを遡るように操作した後、しばらくしてからパソコンを畳んだ。

「ストーさんのスキルに、明確な弱点……あるかもしれない。もしかすると、思ったよりも攻略、難しくないと思うよ」

「……なんだって?」

 高火力、かつ馬鹿げた範囲攻撃を持つストー兄ちゃんのスキルが……簡単に攻略できる?

 一体、穂澄は何に気づいたのか。


「ストーさんのスキル。あれは見せかけの技でしかない」

To Be Continued……

discordで好奇心で「ぼく9.1ちゃい」とか言ってたら垢BANされました。

好奇心の代償は重い。

【開放スキル一覧】

・セイレイ:

 青:五秒間跳躍力倍加

 緑:自動回復

 黄:雷纏

・ホズミ

 青:煙幕

 緑:障壁展開

 黄:身体能力強化

・noise

 青:影移動

 緑:金色の盾

 黄:光纏

 赤:????

・クウリ

 青:浮遊

 緑:衝風

 黄:風纏

・ディル

 青:呪縛

 緑:闇の衣

 黄:闇纏

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