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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑥思い出の学び舎編
188/322

【第八十九話(3)】Relive配信:船出 道音(後編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

世界に影響を及ぼすインフルエンサー。

他人を理解することを諦めない、希望の種。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染として、強い恋情を抱く。

秋狐の熱心なファンでもある。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

男性だった頃の記憶を胸に、女性として生きている。

完璧そうに見えて、結構ボロが多い。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心穏やかな少年。あまり目立たないが、様々な面から味方のサポートという役割を担っている。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。健気な部分を持ち、ひたむきに他人と向き合い続ける。

案外撫でられることに弱い。

・another

金色のカブトムシの中に男性の頃の一ノ瀬 有紀のデータがバックアップされた存在。

毅然とした性格で、他人に怖い印象を与えがち。

・ディル

役職:僧侶

瀬川 沙羅の情報をベースに、ホログラムの実体化実験によって生み出された作られた命。詭弁塗れの言葉の中に、どこに真実が紛れているのだろうか。

船出 道音(ふなで みちね)

Relive配信として勇者一行と敵対する四天王。魔災以前は何の変哲もない女子高生として生きていた。

鶴山 真水(つるやま まみず)

船出が生み出した世界の中で、バックアップされたデータから復元した存在。元は魔災によって命を奪われた身である。

 この世に、真っ当な人間なんて要る訳が無い。

 皆、何かしら下心を持っている。

 男なんて特にそうだ。


「女の子二人で大変だったでしょ。こっちへ」

 私達を値踏みしているような目。

「ほら、ここなら安全だよ」

 胸とか、脚とかに視線が言ってるの、バレてないと思ってるの?分かるんだよ、そう言うの。

 お前達の方が危険だ。

「ささ、早くこっちへ」

 肩を触るな。気持ち悪い。

「……なん……で……?」

 だから、私は紺ちゃんを護る為に。彼女にバレないように何度も人を殺した。


「……ねえ。道音ちゃん。私、知ってるんだよ?もう、止めようよ。めちゃくちゃだよ、道音ちゃんがやってること」

 ——もう、終わりだと思った。

「……へらへらと笑ってるだけのあなたに、何が分かるの!何が、何が何が何が……!!」

「……か、はっ……」

 一番護りたかったはずの紺ちゃんに気付かれてしまったから。

 紺ちゃんを殺して、私も死のう。

 そう思っていたのに。

「頸動脈は……こっち……」

 ゆっくりと、紺ちゃんは私が締め付ける手を、誘導した。

 顔面を見たことが無いくらいまで真っ赤にしながらも、紺ちゃんは絶え絶えの言葉を漏らす。

「み、ちねちゃん……は、いき……て……ね」

「——!!」

「だ……い、す…………」

 最後の最期まで、紺ちゃんは自分のことよりも、私が生き延びることを優先していた。

 ついに全身から力が抜け落ち、亡骸となってしまった彼女。

 私は、一時の感情に身を任せて何をしてしまったのか。

「あは……あはは……」

 もう二度と、動くことのない彼女。

 もう二度と、あの純粋無垢な笑顔を見せることのない彼女。

 全て、私が奪ってしまったから。

 私のせいで。全部。

「あは……死ねよ……私。死ねよ!!死ねっ!!死んでしまえ!!」

 紺ちゃんを殺した私は、後を追うように何度も人を殺めるのに使ったナイフで喉元を掻き切ろうとした。

 ……けど。


——道音ちゃんは、生きてね。

 脳裏を過ぎる、紺ちゃんの言葉。


「……っ。あ、あ……あああああ……っ……」

 死ぬことさえ許されない。

 沢山の人々を。大切な親友の命を奪ってしまった罪を背負って、私は生きることを強いられた。

 呪いだ。これは。

「……行かなきゃ。生きなきゃ。伝えなきゃ……紺ちゃんの分……まで」

 紺ちゃんは、ずっと希望を、歌っていた。

 少しでも誰かが立ち上がれるように。少しでも、未来を皆が描けるように。

 私が、彼女の意思を背負わないと……。

 そう思っていた時。

『くくっ、”伝える”……か。いいね。ただ、生身の身体では苦労するだろう。もっと、いい方法があるよ』

 謎の声が私の脳裏に響くと同時に。

 私の姿は、瞬く間にドローンの姿へと書き換えられた。


 ……それから、というものの。


 運営の力を使って、かつての塔出高校の姿を生み出した。少しでも、誰かの憩いの場所を作りたかったから。

 けど、誰ももう私の周りには居なかった。

 私が奪ってしまったから。私が滅茶苦茶にしてしまったから。

 自業自得だ。

 そんな中で生まれた、勇者セイレイ。彼はあろうことか、私の大切な先輩のゆきっちをも味方に引き入れていた。

「……許せない」

 護らなくちゃ。

 本能的に、そう思った。そうだ、セイレイがより傷つく方法で、とどめを刺そう。

 そんな理由もあって、セイレイ達からストーを奪った。

 結果として、セイレイを殺すことにも成功した。

 でも、セイレイは身勝手な私とは違って、周りに大切に想ってくれる人がいた。彼の死を嘆く人が居た。

 私には、もう大切に想ってくれる人はいない。

 

 ディルに空から投げ捨てられた時、「ついにこの時が来たか」とさえ思った。当然の報いだ。

 そう思っていたのに。

 この馬鹿は、自らの危険も投げうって、私を助けに来た。


 やめてよ。

 希望なんて見せないでよ!私にはそんな価値、もうないの!!

 惨めに死んでしまう四天王で良いの!だから、この手を放して……!!


「いや、助かる方法ならある……例え四天王だろうと、俺はお前を死なせはしない」

 ……馬鹿だ。正真正銘の馬鹿だ。

 でも、セイレイの言葉を聞いていると、自然と心が落ち着くんだ。

 本当に、大丈夫なんだ。

 そう思わせてくれる力がある。


 見せてよ。

 君の希望とやら。希望を失った、私に見せてよ——。


----


 ずっと疑問に思っていた。

 俺が、愛用しているスキルである”五秒間跳躍力倍加”。

 二倍なのか三倍なのか分からないが、俺はこのスキルを使うことにより高く跳躍できる。

 そう、それは自身の身長をゆうに超えた高さまで。

 本来ならば、着地した際に、足を痛めてもおかしくないはずなのに。

 自然と、着地した際のダメージは何一つ感じない。


 その記憶から、ある可能性が脳裏にスパークするように閃いていた。

 もちろん、試したことはない。

 失敗すれば、船出もろともミンチになるだろう。

 だが、賭けるしかない。


 俺の考えが正しければ。

 ——”五秒間跳躍力倍加”は……着地のダメージを、無効化できる!!


「スパチャブースト”青”っっっっ!!!!」

 瞬く間に、俺の両脚に青く、淡い光が纏い始めた。

 その両脚を地面へと向けて、衝撃に備える。

()()()()()掴まってろよ!!」

「うん……!!」

 次の瞬間。


 轟音が、俺の両足を中心として鳴り響く。

 衝撃波が俺と船出に襲い掛かる。痛みがあるのか、無いのか、もう自分でさえも分からない。

 舞い上がった瓦礫が、アスファルトの地面を叩きつける。

 俺は船出を離すまいと強く自身の身体に抱き寄せて、衝撃を耐え忍ぶ。

 土煙が、舞い上がる——。


「……あは、めちゃくちゃだよ……セイレイ……」

「……耐えた……?」

 アスファルトの地面に挟まってしまった自身の足元。

 大地にめり込んだ自身の姿が、まるで現実のそれとは思えなかった。

 少し時間がずれて、俺達の背後に大船の形へと変わった体育館がゆっくりと大地に降り立つ。

「セイレイ君っ!!無茶しすぎ……!!」

「わっ」

 呆然と立ち尽くす俺は、目のまえに駆け寄っていたホズミに気づかなかった。

 勢いよく抱き着かれた俺は、思わずバランスを崩し尻餅をつく。

 体育館から、クウリと有紀が慌てた様子で駆け寄る。

 船の上では、ディルが背を向けて立ち尽くしていた。こいつは一体、今何を考えているのだろうか。

「……希望……」

 船出は俺に抱き寄せられたまま、ぽつりとその言葉だけを呟いた。


To Be Continued…… 

総支援額:2000円

[スパチャブースト消費額]

 青:500円

 緑:3000円

 黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

 青:五秒間跳躍力倍加

 両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。また、着地時のダメージを無効化する。

 緑:自動回復

 全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

 黄:雷纏

 全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

②クウリ

 青:浮遊

 特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

 緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

 黄:風纏

クウリの全身を吹き荒ぶ風が纏う。そのまま敵を攻撃すると、大きく吹き飛ばすことが可能。

③noise

 青:影移動

 影に潜り込み、敵の背後に回り込むことが出来る。また、地中に隠れた敵への攻撃も可能。

 (”光纏”を使用中のみ)

  :光速

 自身を光の螺旋へと姿を変え、素早く敵の元へと駆け抜ける。

 緑:金色の盾

 左手に金色の盾を生み出す。その盾で直接攻撃を受け止めた際、光の蔦が相手をすかさず拘束する。

 黄:光纏

 noiseの全身を光の粒子が纏う。それと同時に、彼女の姿が魔災前の女子高生の姿へと変わる。

 受けるダメージを、光の粒子が肩代わりする。

④ディル

 青:呪縛

 指先から漆黒の鎖を放つ。鎖が直撃した相手の動きを拘束する。

 緑:闇の衣

 ディルを纏う形で、漆黒のマントが生み出される。受けるダメージを肩代わりする効果を持つ。

 黄:闇纏

 背中から漆黒の翼を生やす。飛翔能力を有し、翼から羽の弾丸を放つことが出来る。

ドローン操作:前園 穂澄

[サポートスキル一覧]

・支援射撃

 弾数:2

 クールタイム:15sec

 ホーミング機能あり。

・熱源探知

 隠れた敵を索敵する。

 一部敵に対しスタン効果付与。

[アカウント権限貸与]

・消費額20000円

・純水の障壁

・クラーケンによる触手攻撃

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