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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑤高級住宅街ダンジョン編
162/322

【第七十九話(1)】天明(前編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

勇者としての自覚を胸に、日々困難と立ち向かう少年。

責任感が強く、皆を導く役割を担う。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染。かつて瀬川に命を救われたことから、強く恋情を抱いている。

気弱だった彼女も、いつしか芯のある女性へと成長していた。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

元男性としての過去を持つ女性。卓越した洞察力と、経験から勇者一行をサポートする。

今日も彼女は仲間の為にその刃と技術を存分に振るう。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心優しき少年。魔災以降、直近までの記憶が無く自分がどのように生き抜いてきたのかを覚えていない。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。寂しがりであり、よく瀬川に引っ付いている。

・another

金色のカブトムシの中に、一ノ瀬が男性だった頃の意思を宿された少年。本来であれば、一ノ瀬は彼の姿で生きていたはずだった。

「Tenmei……私は初めて聞いたけど、ホズミちゃんはともかくとして、雨天ちゃんは知ってる?」

 一ノ瀬はドローンへと視線を向けて質問を投げかける。だが、ドローンのカメラはゆっくりと下を向き、申し訳なさをアピールするかのような動作をした。

[ごめんなさい、わかりません……]

「そっか……」

 遂に辿り着いた、一ノ瀬の父親が働いていた企業の名前。だが、それ以上の情報を現段階では得る手段はなく、一ノ瀬は悩ましげに頭を抱えていた。

 しかし、そんな状況を打開したのは、名も知らぬ者だった。

[Tenmeiだろ?俺企業説明会行ったぞ]

 突然、そんなコメント欄が流れ、一ノ瀬とホズミの視線はそこに集まる。

「ほんとっ!?もう少し詳しく聞いてもいい!?」

 まさかコメント欄から有益な情報が得られるとは思わず、彼女たちの期待は高まっていく。

 そして、期待に応えるように再びコメント欄が更新された。

[俺もそんな記憶してないからな??正直元から知ってたわけじゃないんだけどさ、たまたまブースに席空いてたから行ったんだよ。仕事内容はまあ、新しいシステムを生み出すとか、システム維持の為の管理とか、その辺りの話をしてた気がする。特に覚えてるのは、キャッチコピーかな。確か、『世界に、夜明けを。』とか書いてたはず。天明の意味もそんな感じだったよな]

「世界に、夜明けを……」

 ホズミはそのコメントに刻まれたキャッチコピーを復唱する。それから、改めてホログラムに映し出された名刺に視線を送った。

 スタイリッシュなデザインと共に、青色で全体的にまとめられたその名刺には全体的に爽やかな印象を受ける。

 名刺自体にはキャッチコピーは刻まれていなかったが、改めて見れば”夜明け”を彷彿とさせるデザインに見えないこともない。

 ホズミの視線に誘導されるように、一ノ瀬も改めて名刺に刻まれた住所を確認する。

「住所で言えば、隣の県か……そんなに遠くはないね」

「でも、それは電車を使った時の話でしょ。私達の移動手段は徒歩なんだし、かなり時間が掛かるよ」

「それもそっかあ……」

 魔災の真相を知る為には、行かなくてはならない場所ではある。だが、現状勇者一行の移動手段は徒歩のみであり、長距離の移動は避けられない。

 そして、もっともそれを妨げる要因となるのが一人。

「……」

「……」

[なんで私の方を見るんですか]

 一ノ瀬とホズミは、同時に体力に乏しい雨天が操作するドローンの方を見た。

 視線の意図に気づきながらも、雨天は不貞腐れたようなコメントを送る。

[うー、分かってますよぅ……。私の体力じゃ一日に歩ける距離は限られてるですもんね……]

「セイレイ君におんぶしてもらうのはもう無しだからね」

[鬼、鬼がいますっ]

「まあまあ、二人とも……その話は後にしようよ。とりあえず企業名が分かっただけでも進歩だよ、それに」

 二人を(たしな)めつつ、一ノ瀬は改めて追憶のホログラムが映し出す自身の父親の姿に視線を送る。

 正直、ただの偶然であって欲しかった。

 たまたま、人工知能について同じく研究をしているだけで、魔災の要因には一切関係のない一個人であってほしかった。

 だが、眼前に映し出されるホログラムが描く、一ノ瀬の父親が呟く内容が、その微かな希望を容易く打ち破る。


『ホログラムの実体化は、実用的ではないだろ。気づかないのか、皆……』

 配信を介して幾度となく繰り返された”ホログラム”という言葉を繰り返す自身の父親。

 遂に、一ノ瀬は自身の身内が魔災の要因に関わっていることを認めざるを得なくなった。

 ループ再生のように延々と”ホログラムの実体化”について語り続ける自身の父親の姿に、思わず彼女は頭を抱えた。

「……正直、認めたくなかったなあ……私も、関係者の身内、かあ……」

「ただ、有紀さんのお父さんはホログラムの実体化には反対してるように見えるね。じゃあ、他にこの研究に賛成して、率先して進めた人が居るんじゃないかな」

 ホズミの指摘に、一ノ瀬は「うーん」と腕を組んで唸り声を上げた。

 確かに、ホズミの言葉は一理ある。そして、最も率先して進めた可能性が高い人物にも思い当たりはあった。

「セイレイの、お父さん……か」

「……うん。商店街ダンジョンで見た映像、覚えてるよね」

「まあ、ね」

 商店街ダンジョンで、魔王セージこと千戸 誠司が見せた追憶のホログラムに描かれた光景。

 それは、『生み出した人工知能を、ホログラムとして現実世界に生み出す実験』についての話をしていたことだ。魔災が、”人類史における史上最悪のヒューマンエラー”だと言うこともその時に初めて聞かされた。

 起きてしまったことはどうしようもなく、今更犯人探しをして責任を追及したところでどうにかなるものではない。

 ——だが。

「元々、この配信サイト……Sympassの創始者がいる企業でもあるんだ。どっちにせよ、行かないといけないのは確かだね」

「それもそうね……千戸先生がどうして、こんな世界を滅茶苦茶にしたのか。その理由も探るヒントになるかもしれないし」

「……センセー……っ」

 ”千戸先生”と言う言葉に反応したホズミは、悔しそうな表情で唇をかみしめて俯いた。

 それもそのはず、魔災後から長い年月を共に生きてきた彼女にとって。

 どれだけ世界を破壊しつくした魔王という諸悪の根源であっても、大事に育ててくれた育ての親には違いなかった。

 それが、例えセイレイを勇者に仕立て上げる為の教育であったとしても。

[しかし、分からないですよね。魔王としてただ世界を壊すだけなら、勇者を作る必要ないですよね。明らかに自分に不都合です]

 話の主題が魔王へと移ったことで、雨天は魔王に対する自分の見解を話す。

 至極もっともな意見に、一ノ瀬もホズミも頷く。

「雨天ちゃんの言うとおりだ……世界を壊すとか、支配するだけならわざわざ私達を育てる理由なんてないよね。でも、現にセイレイ君は”希望の種”として育てられた……」

「そもそも、セイレイが”希望の種”の理由もまだ分からない……」

 その疑問に答えることの出来る判断材料は持ち合わせておらず、お互いに顔を合わせて首を傾げることしかできなかった。

 一ノ瀬は思考を切り替え、再びドアに手を掛ける。

「とりあえず、企業名が分かっただけでも進歩ね。他に有益な情報が無いか探ってから、セイレイ達と合流しよっか」

「そうだね。他に気になるのは……秋城ちゃん?の情報かな」

「うん、といってもそれほど得られる情報は少なそうだけど……」

 そう会話を交わしながら、女性陣は一ノ瀬の父——一ノ瀬 和義の部屋を後にした。


To Be Continued……


 

【開放スキル一覧】

・セイレイ:

 青:五秒間跳躍力倍加

 緑:自動回復

 黄:雷纏

・ホズミ

 青:煙幕

 緑:障壁展開

 黄:身体能力強化

・noise

 青:影移動

 緑:金色の盾

 黄:光纏

・クウリ

 青:浮遊

 緑:衝風

 黄:風纏

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