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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑤高級住宅街ダンジョン編
152/322

【第七十四話(3)】覚悟の光から始まるLive配信(後編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

勇者としての自覚を胸に、日々困難と立ち向かう少年。

責任感が強く、皆を導く役割を担う。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染。かつて瀬川に命を救われたことから、強く恋情を抱いている。

気弱だった彼女も、いつしか芯のある女性へと成長していた。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

元男性としての過去を持つ女性。卓越した洞察力と、経験から勇者一行をサポートする。

どこか他人に対して負い目を感じることが多いのか、よく他人と距離を取ろうとする。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心優しき少年。魔災以降、直近までの記憶が無く自分がどのように生き抜いてきたのかを覚えていない。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。寂しがりであり、よく瀬川に引っ付いている。

「——っ!スパチャブースト”青”!!」

[セイレイ:五秒間跳躍力倍加]

 それは、咄嗟の判断だった。

 セイレイはほぼ反射的に宣告(コール)するとともに、高く跳躍。両脚に纏う青い光が大気中に縦一文字を刻む。

 間一髪のところで、セイレイは衝撃波に巻き込まれるのを回避。すたりと着地したところで、瞬時に屈強な肉体のガードマンへと攻撃を仕掛ける。

「こいつら、周りの奴らが倒れなきゃ動かねーんじゃなかったのかよっ!!」

 これまで、強化個体の魔物達は、それ以外の魔物を全滅させないと動かなかった。そのことから、セイレイ達はそれが鉄則なのだと思っていたのだ。

 だが、ここに来て不動だったはずの鉄則は一気にひっくり返る。

「俺が強化個体を相手にする!クウリとnoiseは雑魚の殲滅を頼んだ!!」

「分かった!」

「……」

 セイレイはすかさずそう指示を送る。クウリの返事は帰って来たものの、noiseからは何も言葉が返ってこなかった。

(——集中しているのか)

 一瞬疑問が過ぎるが、自分の中で納得の行く理由付けをし、すぐに思考を切り替える。それから、自身の体格をゆうに上回るガードマンと対峙した。

『侵入者発見。侵入者発見』

「はっ、もうご対面してるっての」

 定型的な言葉しか返さないガードマンの言葉に、冷や汗を垂らしながらもセイレイは鼻で嗤う。

『——迎撃態勢に、移行』

 目の前に現れた侵入者に対し、ガードマンは機械的な動きでその巨大な右腕を振り上げる。あまりにも明確な攻撃態勢を認識したセイレイはすかさずバックステップで距離を取った。

 しかし。

「セイレイ君っ、下がっちゃだめだ!!」

「え?」

 ホズミの咄嗟の声に呆気に取られたのも束の間。

次の瞬間、再びセイレイへと衝撃波が襲い掛かっていた。

「がっ!?」

 今度は避けることが出来ず、瞬く間に穿つアスファルトの瓦礫がセイレイに直撃。それはショットガンの如く、セイレイの全身を傷つけていく。

 辛うじて顔面は両手で覆い、致命傷は避けることが出来た。それでも、全身に負ったダメージはかなりのものだった。

「——っ、あ……ぐ」

「セイレイ君っ!!体力が7割削られた!!逃げて!!」

 ホズミは悲痛の叫びと共に、報告を送る。

 苦悶の声を漏らしながらも、セイレイは懸命にその優れた観察眼で敵の動きを見据える。

 どうやら、二度もセイレイに襲い掛かった衝撃波は強化個体のガードマンが生み出したもののようだ。

『——迎撃態勢に、移行』

 しかも、待ったなしと来た。

 再び、セイレイに対峙するガードマンはその右腕を大きく振り上げる。


 ——どのスパチャブーストなら、現状を打開できる?青?黄?いや、俺のスキルでは今この状況を打破することは厳しい。しかも、そんな化け物が二体も?どうすりゃいいんだよ。

 本当に、どうすれば——。


「——ごめん、自分の役割を放棄するっ!!スパチャブース——」

「スパチャブースト”青”っ!!」

 やむを得ず、ホズミが宣告(コール)しようとしたその時、noiseの宣告(コール)が重なる。

[noise:影移動]

 次の瞬間、素早く影を介して地中から現れたnoise。彼女は、セイレイの傍らに立ち——。

 ——セイレイの身体を突き飛ばし、自らが庇う形で踊り出す。

「え?」

 唐突に起きた状況に、セイレイは目を丸くする。

 再び、ガードマンが放つ一撃に伴い、舞い上がった衝撃波と共にアスファルトの弾丸が襲い掛かった。

 飛び出した体勢のままのnoiseには、それを防ぐことは出来ない。


「——待ってる」

 noiseは、ただ一言。それだけを伝えると共に。

 瞬く間に、その細身の身体がアスファルトの弾丸に貫かれた。


 真っ白な、カッターシャツが土埃と暗赤色の血液に汚れていく。

 彼女の、細身で小柄な体格が激しく吹き飛ばされ、レンガの地面に幾度となく打ち付けられる。

 その、人形のように転がる彼女の姿を、セイレイは現実のものとして受け入れられなかった。

「……有紀姉?」

「あ、あ……」

 クウリも、セイレイも、茫然とした声を零す。

 誰の声にも応えることなく。土煙の中にピクリとして、動かなくなったnoise。

 それは、現実として受け入れられない状況だった。

 しかし、残酷にも、コメント欄を介してその現実は付きつけられる。


[え]

[嘘だろ]

[あ、あ……そんな。あり得ません。え。嘘、ですよね]

[noiseの体力が]

「……っ。セイレイ君。落ち着いて、聞いて。noiseさんの体力が……


……全損した」


 その言葉に、セイレイの鼓動が大きく跳ね上がるのを感じた。

 頭がぐちゃぐちゃになる。喉の奥が気持ち悪く、何かを吐き出したいような思いに駆られる。

「う、嘘だ……嘘だ、有り得ない、有り得ないっ……」

「——スパチャブースト”黄”っっっ!!」

[クウリ:風纏]

 しかし、クウリは現状を打開することを優先。宣告(コール)すると共に、彼を中心として大きく風が吹き荒ぶ。

「セーちゃんっっ!!現実に戻って来て!!」

「——クウリ……」

「有紀姉が命を張って、何をしたと思うのっ!!僕達は有紀姉に、何を報いることが出来ると思うのっ!?」

 クウリ自身も、本心は感情がぐちゃぐちゃだっただろう。だが、壊れそうな想いを懸命に繋ぎ止め、必死にセイレイとホズミに語り掛ける。

「僕は諦めないっ!!現実から目を逸らさないっ!!」

「……クウリ、君……」

 風を纏う一撃に伴い、彼を囲うガードマンを何度も吹き飛ばしながら叫ぶ。

「視聴者の皆も、力を与えてほしいっ!!お願いっ!!」

 その想いは、徐々に視聴者に伝搬していく。彼の言葉に気づかされたのか、徐々にコメントに色が付き始めた。

[ごめん 3000円]

[遅いのは分かってる。でも、こんなこと、言わせちゃダメだったよな 3000円]

[俺達も、しっかりしないと駄目だったんだ 3000円]

[誰一人、この世界には部外者がいない……です……noiseさん、noiseさん……]

[いや、セイレイ。諦めるのはまだ早いかもしれない]


「……どういうこと?」

 さらりとコメント欄に流れたその希望の一言にホズミは着目した。

 彼女の反応を待っていたのか、続いてコメントは流れていく。

[自動回復だよ。セイレイが最初に使った時さ、死んだ状態から蘇ったろ]

「——あっ!!」

[さっさと伝えてやれ。noiseは俺らにとってもさ。最初から希望の光だったよ 3000円]

[確かに。一番最初の配信で、最も輝いて見えたのはnoiseだったな……]

[頑張れ。負けるな]

[頼んだ、皆。こんなことで希望を絶やさないでください 3000円]

 コメント欄に満ちていく暖かな言葉。流れる一つ一つの言葉に、ホズミの頬に思わず涙が伝う。

 懸命に現状を打開するべくファルシオンを振るい続けるセイレイに向けて、彼女は叫んだ。

「セイレイ君っ!!自動回復だよ!!自動回復を使えば、noiseさんが生き返る!!」

「何を言って……そうか!!それがあった!!」

「まだLive配信は終わっちゃいない!!生きるんだ、生きて、配信を続けるんだ!!」

 ホズミの言葉を受け取ると共に、セイレイは横たわったままピクリとも動かないnoiseの亡骸へと駆け寄る。

「……有紀。来たぞ……スパチャブースト”緑”」

 優しくセイレイが語り掛けると共に、彼の全身に緑色の光が纏い始めた。

 自らもボロボロであるにも関わらず、セイレイはその傷ついた手のひらでnoiseの身体に触れる。

 心臓の鼓動が止まり、冷え切ってしまった彼女の身体に、セイレイを介して緑色の光が纏い始めた。


 それを確認したセイレイは、すくりと立ち上がる。

 noiseの亡骸を庇うように、セイレイはファルシオンを構えてガードマンと対峙する。

「——まだ。終わっちゃいない。来いよ、俺がいる限り、世界から希望は消えはしないっ!!!!」

 救えなかった人々がいた。

 守れなかった人々がいた。

 救う力を持ち合わせてはいなかった。

 いくつもの後悔を重ねて、それでも勇者は立ち上がる。


 全ての希望は、noiseから始まった。

「一番最初に、世界に希望を見せてくれた有紀の命を……このまま終わらせるものか!!スパチャブースト”黄”!!」

[セイレイ:雷纏]

 そのシステムメッセージが流れると共に、セイレイの全身に青白い稲妻が迸る。


To Be Continued……

総支援額:14000円

[スパチャブースト消費額]

 青:500円

 緑:3000円

 黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

 青:五秒間跳躍力倍加

 両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。

 緑:自動回復

 全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

 黄:雷纏

 全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

②クウリ

 青:浮遊

 特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

 緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

 黄:風纏

クウリの全身を吹き荒ぶ風が纏う。そのまま敵を攻撃すると、大きく吹き飛ばすことが可能。

③ホズミ

 青:煙幕

 ホズミを中心に、灰色の煙幕を張る。相手の視界を奪うことが出来るが、味方の視界をも奪うというデメリットを持つ。

 緑:障壁展開

 ホズミを中心に、緑色の障壁を張る。強固なバリアであるが、近くに味方がいる時にしか恩恵にあやかることが出来ない為、使用には注意が必要。

 黄:身体能力強化

 一時的にホズミの身体能力が強化される。攻撃力・移動能力・防御力が大幅に上昇する他、魔法も変化する。

魔法

 :炎弾

 ホズミの持つ両手杖から鋭い矢の如き炎を打ち出す。

 一度の炎弾で3000円と魔石一つを使用する。火力は高いが、無駄遣いは出来ない。

 :マグマの杖(身体能力強化時のみ使用可)

 地面に突き立てた杖から、マグマの奔流が襲いかかる。ホズミの意思で操作可能。

 一度の使用で10000円と魔石一つを使用する。高火力であるが、スパチャブーストの使用が前提であり、コストが高い。

 :氷弾

 青色の杖に持ち替えた際に使用可能。氷の礫を射出し、直撃した部分から相手を凍らせることが出来る。

 炎弾と同様に、3000円と魔石一つを使用。

④noise

-no data-


ドローン操作:雨天 水萌

[サポートスキル一覧]

・なし

[アカウント権限貸与]

・消費額20000円

・純水の障壁

・クラーケンによる触手攻撃

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