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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
④水族館ダンジョン編
131/322

【第六十四話(1)】勇者配信の開幕(前編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

勇者としての自覚を胸に、日々困難と立ち向かう少年。

責任感が強く、皆を導く役割を担う。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染。かつて瀬川に命を救われたことから、強く恋情を抱いている。

気弱だった彼女も、いつしか芯のある女性へと成長していた。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

元男性であり、魔災以降は孤独に生きてきた過去を持つことから色々と拗らせた性格をしている。本音を取り繕うとすることが多く、その度にトラブルを引き起こしている。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心優しき少年。魔災以降、直近までの記憶が無く自分がどのように生き抜いてきたのかを覚えていない。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。寂しがりであり、よく瀬川に引っ付いている。

[皆さーんっ。こんにちは!雨天ですー]

[こんちゃ。雨天ちゃん、元気にしてた?]

[はいっ。皆優しくしてくれたので、とても充実してます。楽しいです]

[こんにちは、よろしくお願いします。皆が同時に配信に参加するのを見るのは初めてですね]

[ドローンを触るのに一人は抜けないと駄目だったからな。でも、サポートスキルが使えないのは手痛くないか?]

[あっ。それなら大丈夫だと思いますよ?倒された私だからこその意見ですけど、セイレイ君達すごく強くなってますし]

[最初から見てますし、確かにそれは認めますけど……]

[あっ、ホズミちゃん。ゴブリン!ゴブリンいる!!]

ドローンのホログラムが映し出す、流れるコメントログにちらりとホズミは視線を送る。

それから、先行するセイレイに小走りで駆け寄り、軽く肩を叩いた。

「セイレイ君」

「分かってる」

ホズミの小走りで既に何を伝えたいか察知していたのだろう。低く身をかがめ、横倒しになった商品棚の隙間から奥を伺う。

薄暗く、かつての姿を失ったホームセンター。崩落した天井が瓦礫の山を築き上げ、天井からは鋭い日差しが差し込む。

その差し込んだ日差しの中に、ゴブリン達が闊歩しているのが見えた。

緑色のゴブリンも居れば、上位個体である赤色の者もそこには佇んでいる。しかし、ゴブリン達はまるで警戒する様子もなく各々に時間を潰しているように見えた。

「数は?」

[大体20体。弓を持っているのが5体。赤は3体だと思う]

セイレイの問いかけに、コメントから返事が返ってきた。「助かる」と感謝の言葉を告げてから、右手に力を籠める。

瞬く間に右手に光の粒子が集い始め、それは徐々にファルシオンの形を生み出した。

セイレイが戦闘態勢を取るのに見習い、クウリ、ホズミ、noiseも各々武器を構える。

[もう何度も戦った相手だから大丈夫だとは思うが、油断するなよ 3000円]

[上位個体が三体もいることを考えると、各個撃破を狙うべきだと思います 3000円]

[とりあえずセイレイかホズミちゃんは黄を使えるようにしておきたい 3000円]

[じゃあこれで20000円になるな 3000円]

[皆さん、本当に助かりますっ。スパチャブースト”黄”か、私のアカウント権限の貸与が使えるようになりましたね]

流れるコメント欄を見たセイレイが、ドローンに語り掛ける。

正確には、ドローンを操作する雨天へと。

「なあ。雨天。多分俺達なら大丈夫だからさ、一回お前の力を試してみるか?」

[えっ?良いんですか?特にホズミちゃん……]

ドローンのカメラは続いてホズミの方を向いた。彼女も、一瞬セイレイの方へと視線を向けた後、困ったように苦笑いを零す。

「まあ、遅かれ早かれ雨天ちゃんの使いどころは知っておいた方が良いからね」

[それもそうですが……]

[俺らがスパチャで支援するよ。気にすんな 3000円]

[あっ。ありがとうございます]

コメント欄からの後押しを得た雨天は、躊躇するようにドローンのカメラを下へと向けた。

それから、コメント欄が更新される。

[……はぁ。私が出るタイミングをセイレイ君が指示してください。私、そういうの苦手なので……]

「分かったよ。俺が先行して弓使いを倒すから、姉ちゃんはその他のゴブリンの対処。クウリは皆を庇う形で立ち回ってくれ」

セイレイが、各々に立ち回りの指示を送る。


「任せろ」

noiseは短剣を構え、しっかりと頷いた。

「ホズちゃんは後ろに隠れてて。万が一の時は僕が対応するよ」

「うん。ごめんね。ただ、雨天ちゃんのスキルを使うことに拘らずに行こうね」

ホズミは念のためと言った形で、仲間達に忠告を送った。

クウリは「わかった」と強く頷き、大鎌をしっかりと両手で支える。


仲間達の戦闘態勢が整ったことを確認したセイレイは、すかさず地面を蹴り上げて真っ先に躍り出る。

「行くぞ!スパチャブースト”青”!!」

[セイレイ:五秒間跳躍力倍加]

セイレイの宣告(コール)に伴い、彼の両脚を青く、淡い光が纏う。

ゴブリン達は驚愕に目を見開き、彼らの奇襲に対応することが出来ない。その隙を縫うように、セイレイは真っ先に弓を持っているゴブリンに向けて飛び掛かり、ファルシオンを薙ぐ。

「まずは、一体っ!!」

その横薙ぎに伴い、ゴブリンの首が斬り飛ばされる。灰燼をまき散らしながら、首から上を失ったゴブリンの体がずるりと崩れ落ちていく。

ゴブリンの視線がセイレイに集まり、警戒がおろそかになったのを確認したnoiseとクウリは、ほぼ同時に躍り出た。

「よそ見をするな」

「セーちゃんだけじゃ、ないよっ」

noiseとクウリも自らゴブリンの群れの中へと飛び込み、次から次に襲い掛かるゴブリンの攻撃を掻い潜りながら一撃を叩き込む。


「相変わらず、単調な攻撃だな」

noiseは全ての攻撃をまるで予定調和かのように、余裕をもってゴブリンの剣戟を掻いくぐる。

それから、素早く逆手に持った短剣を深々とゴブリンの喉元へと突き刺した。

「グガァ」

情けない悲鳴を上げながら、瞬く間にゴブリンの肉体は灰燼と化す。

そのnoiseの背後に襲い掛かる一体のゴブリン。

クウリはnoiseを庇う形で躍り出た。その勢いのままにゴブリンに向けて大鎌を振るう。

「僕が皆を守るっ!」

大きく振り抜かれた一閃に伴い、ゴブリンの体は大きくはじけ飛ぶ。コンクリートに勢い良く叩きつけられ、土煙が大きく舞い上がる。そして、その土煙が消えた頃には、そこには灰燼しか残っていなかった。


[なんか……また連携取れるようになってない? 3000円]

[クウリが戦っているところ、初めて見ましたけど、すごいですね]

[弓持ちはセイレイが全滅させたみたい。あとは、上位個体とその他の緑ゴブリンが5体ほど]

[上位個体のゴブリンって、確かnoiseさんと戦闘技術で渡り合った相手だろ。相当強敵だぞ]

[そろそろ、私も準備しますねっ]


最後の弓持ちのゴブリンを倒したところで、セイレイは後方で控えているホズミの方へと視線を向けた。

「ホズミ!雨天!頼む!」

その視線の意図をくみ取ったホズミは、すかさず宣告(コール)を発する。

「——スパチャブースト”青”!!雨天ちゃん、今だっ!!」

[ホズミ:煙幕]

瞬く間に、ホズミを中心として煙幕が彼らを、ゴブリン達を包み込む。

「ギッ!?」

「グガッ!?」

ゴブリン達の困惑の声が響く中、雨天は声を発する。ドローンから抜け出たのか、彼女の鮮明になった声がダンジョン内に響いた。

「……ここから先は、私の、時間ですっ!!」

雨天の声と共に、ホズミの放った煙幕が晴れていく。

そこには、白のドローンはどこにも無かった。

代わりに存在したのは、水色の光の粒子を纏いながら姿を現した雨天 水萌だ。

レインコートを身に纏い、真っすぐな瞳で残ったゴブリン達を見据える。


突如として現れた少女に、ゴブリンの警戒の色が強まった。

その敵意の視線を一同に受けながら、雨天は大声で叫ぶ。

「セイレイ君達は下がっててくださいっ!!ここから先は、Dive配信の雨天がお送りしますっ!!」


[information

Dive配信にアカウント権限が貸与されました。スパチャブーストは使用できません]

雨天の瞳の先に表示されたホログラムにシステムメッセージが流れる。

それと同時に、彼女の背後に無数の巨大な触手が伸びていく。


To Be Continued……

総支援額:5000円

[スパチャブースト消費額]

 青:500円

 緑:3000円

 黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

 青:五秒間跳躍力倍加

 両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。

 緑:自動回復

 全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

 黄:雷纏

 全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

②クウリ

 青:浮遊

 特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

 緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

③ホズミ

 青:煙幕

 ホズミを中心に、灰色の煙幕を張る。相手の視界を奪うことが出来るが、味方の視界をも奪うというデメリットを持つ。

 緑:障壁展開

 ホズミを中心に、緑色の障壁を張る。強固なバリアであるが、近くに味方がいる時にしか恩恵にあやかることが出来ない為、使用には注意が必要。

 黄:身体能力強化

 一時的にホズミの身体能力が強化される。攻撃力・移動能力・防御力が大幅に上昇する他、魔法も変化する。

魔法

 :炎弾

 ホズミの持つ両手杖から鋭い矢の如き炎を打ち出す。

 一度の炎弾で3000円と魔石一つを使用する。火力は高いが、無駄遣いは出来ない。

 :マグマの杖(身体能力強化時のみ使用可)

 地面に突き立てた杖から、マグマの奔流が襲いかかる。ホズミの意思で操作可能。

 一度の使用で10000円と魔石一つを使用する。高火力であるが、スパチャブーストの使用が前提であり、コストが高い。

④noise

 青:影移動

 影に潜り込み、敵の背後に回り込むことが出来る。また、地中に隠れた敵への攻撃も可能。

 緑:金色の盾

 左手に金色の盾を生み出す。その盾で直接攻撃を受け止めた際、光の蔦が相手をすかさず拘束する。


ドローン操作:雨天 水萌

[サポートスキル一覧]

・なし

[アカウント権限貸与]

・(詳細不明)

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