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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
④水族館ダンジョン編
130/322

【第六十三話(2)】風(後編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

勇者としての自覚を胸に、日々困難と立ち向かう少年。

責任感が強く、皆を導く役割を担う。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染。かつて瀬川に命を救われたことから、強く恋情を抱いている。

気弱だった彼女も、いつしか芯のある女性へと成長していた。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

元男性であり、魔災以降は孤独に生きてきた過去を持つことから色々と拗らせた性格をしている。本音を取り繕うとすることが多く、その度にトラブルを引き起こす。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心優しき少年。魔災以降、直近までの記憶が無く自分がどのように生き抜いてきたのかを覚えていない。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。寂しがりであり、よく瀬川に引っ付いている。

山を下り、公道脇に並んで建つ店舗の前を通り過ぎていく。

崩壊した施設が並び、もはや元の店舗名など分からなくなった瓦礫道の先にホームセンターはあった。

「……着いたな」

瀬川は、その施設を前にぽつりと呟いた。

「……っ」

青菜は、思わず生唾を飲み込む。

決して、決意が緩んだわけではない。しかし、それでも。

幾度となく生活の為に利用してきたため、どこか愛着のあったホームセンター。

それを自らの手で終わらせるのだという事実が青菜に重くのしかかる。

「……そっか。僕が終わらせるんだね」

「終わらせる、じゃないよ」

一ノ瀬が、じっと青菜の顔を見ながら言葉を返す。

次に、その視線を次にホームセンターの入り口前に映るホログラムへと向けた。追憶のホログラムが映し出すのは、人々がホームセンター前で商品を手に取って悩んでいる光景だ。

「私達がこれからの未来を生きる為。これはその一歩だよ」

「未来……うん。そっか」

一ノ瀬がそう語る傍らで、前園は背負ったリュックサックからパソコンとドローンを取り出していた。

雨天は前園の隣に座り、じっとドローンを大切そうに持ち上げる。

「配信が始まったら、私がドローンに取り込まれるはず、ですよねっ」

念のためと言ったところだろう。雨天はドローンに視線を落としながら問いかける。

「うん、そうなると思う。アカウント貸与がどんな機能を持っているか分からないけど、おおよそ見当は付く。一応、動けるように覚悟はしといてね」

「あ、はいっ……緊張するなあーっ、たはは」

雨天はおどけたように笑うが、その瞳は全く笑っていなかった。真ん丸と大きな瞳が動揺に揺れる。

実際、誰かの為に自らの力を使うという経験は初めてなのだろう。幾度となく深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせる。

そんな彼女の様子に、前園は思わず笑いを零した。

「……あはっ、大丈夫だよ。雨天ちゃん、そんな緊張しなくても」

「しっ、してませんもんっ!?」

図星を突かれた雨天はむきになって反論する。だが、前園は穏やかな表情を崩すことなく、雨天の頭を撫でた。

「撫でないでくださいっ」

「いつもいい反応くれるから、つい……」

前園は思わず照れ笑いを隠すように雨天から視線を逸らす。そんな彼女の仕草に雨天は「むぅー」と小さくむくれた。

それから、真面目な顔を作って前園は言葉を続ける。

「でも、本当に大丈夫だからね?皆でちゃんとフォローするから、雨天ちゃんだけに責任を背負わせないよ」

仲間がフォローしてくれる、その言葉に強張っていた雨天の表情が少しだけほぐれた。

「……ありがとう、ございますっ。もし、私がドジ踏んだらフォローしてくださいね?」

「もちろん。雨天ちゃんは天然だから何かしらやらかすと思ってるし」

「ちょっとくらい信用して欲しいですぅー……」


「……さて。皆、準備は良いな?」

瀬川は、仲間たちの方へと視線を向けて語りかける。

頷いた一同の姿を見て、瀬川は話を続けた。

「恐らくだが。ホブゴブリンがダンジョンボスとしてではなく、その辺りの敵として現れたところを見ると……ボスは、より一層強敵になると思う。その前に確認しておきたいことはあるか?」

瀬川の問いかけに、前園は手を上げる。

「ねっ、気になってたんだけどね。船出さんは”無いと困る施設ほど強力な魔物が生まれる”って言ってたでしょ」

「確かに言ってたな。それがどうかしたか?」

「いやさ、私達……空莉君と雨天ちゃんはアーカイブでしか知らないかもだけど。最初に入った家電量販店ダンジョンのボスがホブゴブリンだったの。どっちも重要な施設なはずなのに、何でこうも違うのかなーって……」

「……うーん」

前園の問いかけに答えることが出来ず、瀬川は首を傾げた。その様子を見た前園は慌てて首を横に振る。

「あ、わわ、ごめん!配信前にこんな疑問ぶつけちゃって。でも、一応考えておいた方が後々の役に立つかな、って……」

「……この答えが絶対、って訳じゃないけど。一応考えられる答えは出せるかも」

そう意見を出したのは、一ノ瀬だった。

一同の視線が一ノ瀬に集まる中、彼女は言葉を続ける。

「セイレイ、初めて会った時さ。”近辺の情報収集は探索の基本”って言ったのを覚えてる?私が一人でダンジョン攻略してた時の」

「あー、あー……覚え……」

一ノ瀬の質問に、瀬川は歯切れ悪く言葉を濁す。その反応があまりにも分かりやすかったのか、一ノ瀬は困ったような笑みを浮かべた。

「ご、ごめんっ。さらっと触れた程度だったもんね、覚えてなくても仕方ないよ」

「すまん……」

「ううん、気にしないで……えっとね。家電量販店ダンジョン、という部分だけじゃなくて、近くに海の家があったということも交えて考えてみようか」

一ノ瀬の言葉に、前園は「どういうこと?」と答えを促す。

「多分ね。あの地域は友達と海で泳ぐとか、デートとか。どっちかと言うと遊び目的の需要が高かったんじゃないかな。逆に、そこで家電量販店を利用する人と言えば、近くに家を構えている人達が主体になるかな、と思うんだ」

その言葉がヒントとなったのだろう。ハッとした前園は顎に手を当てた。

「ということは、このホームセンターは公道沿いにあるから……」

「そう。住宅街が近いのもあるかな。施設的な需要で言えばこっちの方があると思うんだ。ついでに言えば、凄く大きな総合病院のボスも弱点は簡単に見つからないし、手ごわかったでしょ。で、逆に寂れてた商店街の方はスライムとか、小柄な魔物がメインだった」

「確かに、筋は通ってると思う。てことはさ、都心部とか……ここよりも大変なことになってるんじゃないかな」

前園が返した返事に、一ノ瀬は困ったような苦笑いを浮かべた。

「まあ。いつかは行くことになるかも、だよね。でも今はこっちの方に集中しよっか」

「あっ。ごめん」

ある程度の疑問が解消されたのか、前園はそれ以上何も言わなかった。


静かになった中、青菜は深々と頭を下げる。

「皆。僕のわがままに付き合ってくれて本当にありがとう」

「別にお前の為だけじゃねえよ。お前が成長するってことは、勇者一行の力にもなるってことだからな」

瀬川はあっけらかんと笑いながら、そう言葉を返す。

そっけない返事のようで、どこか彼なりに気を遣ってくれているのだと感じる態度に青菜はくすりと笑った。

「あははっ、それもそうだね。じゃあ、成長の為の第一歩、始めよっか」

青菜はそれからホームセンター前のガラスドアに手を掛ける。

そのまま二度と稼働することのない自動ドアを、勢いよくこじ開けた。

じめじめとした陰鬱な風が、勇者一行に襲い掛かる。

完全に入り口が開いたことを確認した前園が、パソコンのキーボードを叩き、配信を開始した。

「雨天ちゃん、頼んだよ」

「……分かりましたっ」

雨天がコクリと頷くと共に、彼女の姿が光の粒子となり世界から掻き消える。

彼女だった光の粒子が、やがて雨天が抱きかかえていたドローンに集められていく。続いて、そのドローンはひとりでにふわりと浮かび上がった。


それを確認した瀬川は、もう一度ドローンのカメラに向けて開幕の挨拶を告げる。

「行こう、皆。Live配信の時間だ」


[information

サポートスキルは使用できません]

[information

Dive配信のアカウント権限の貸与が可能です。必要額:20000円]

その言葉と共に、度重なるシステムメッセージが通知として流れた。


To Be Continued……

総支援額:8000円

[スパチャブースト消費額]

 青:500円

 緑:3000円

 黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

 青:五秒間跳躍力倍加

 両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。

 緑:自動回復

 全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

 黄:雷纏

 全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

②クウリ

 青:浮遊

 特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

 緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

③ホズミ

 青:煙幕

 ホズミを中心に、灰色の煙幕を張る。相手の視界を奪うことが出来るが、味方の視界をも奪うというデメリットを持つ。

 緑:障壁展開

 ホズミを中心に、緑色の障壁を張る。強固なバリアであるが、近くに味方がいる時にしか恩恵にあやかることが出来ない為、使用には注意が必要。

 黄:身体能力強化

 一時的にホズミの身体能力が強化される。攻撃力・移動能力・防御力が大幅に上昇する他、魔法も変化する。

魔法

 :炎弾

 ホズミの持つ両手杖から鋭い矢の如き炎を打ち出す。

 一度の炎弾で3000円と魔石一つを使用する。火力は高いが、無駄遣いは出来ない。

 :マグマの杖(身体能力強化時のみ使用可)

 地面に突き立てた杖から、マグマの奔流が襲いかかる。ホズミの意思で操作可能。

 一度の使用で10000円と魔石一つを使用する。高火力であるが、スパチャブーストの使用が前提であり、コストが高い。

④noise

 青:影移動

 影に潜り込み、敵の背後に回り込むことが出来る。また、地中に隠れた敵への攻撃も可能。

 緑:金色の盾

 左手に金色の盾を生み出す。その盾で直接攻撃を受け止めた際、光の蔦が相手をすかさず拘束する。


ドローン操作:雨天 水萌

[サポートスキル一覧]

 ・なし

[アカウント権限貸与]

 ・消費額:20000円

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