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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
④水族館ダンジョン編
121/322

【第五十八話(3)】蒼のドローン:雨天 水萌(後編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

花開いた希望の種。魔災以前の記憶が無く、青菜のことを知らない。

どうやら魔災よりも少し前に交通事故に巻き込まれたようだ。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

幼馴染、瀬川 怜輝のことを案じ続ける少女。機械関係に強く、集落に訪れてからはスマホ教室を開き、人々にスマホの使い方を教えている。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

元医者志望の女性。独学ではあるが、ある程度知識には自信があり集落に住まう人々の健康管理の手助けをする。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

山奥の集落に住まう一人の少年。

勇者一行の言葉に突き動かされ、彼は現実と向き合い始めた。

雨天 水萌(うてん みなも)

四天王:Dive配信を名乗る、蒼のドローン。

どこか抜けているところがあり、ひょんなことから爆弾発言を放つ少女。

『セイレイ君。君が羨ましいです。自分の話を聞いてもらえて、自分の想いを受け止めてくれる人が居て、自分を想ってくれる人が居て』

雨天は心底恨めしそうな声音で語る。その一つ一つの言葉に重なり、徐々にその水滴の盾は大きくなっていく。

セイレイは全身に迸る稲妻をその巨大な水滴に向けて更に押し込むが、全く電気が伝わる様子はない。

「なん、っで……!?電気が通らないんだ!?」

『下がれ、セイレイ!嫌な予感がする……!』

noiseはセイレイへ撤退を指示。やむを得ないと判断したセイレイはファルシオンを光の粒子と変え、大きく後退する。

その間にも、雨天は何やら恨み言を呟き続けていた。

『私はそうじゃありません。だから、自分から発信しないといけないんです。そう、配信しないと……』

やがて、電気を一点に受け止めた水滴の盾を、雨天はゆっくりと持ち上げる。

一点に凝縮された、セイレイが放つ稲妻を受け止めた水滴を。

『セイレイ君から受け取った想い。私が、返します』

その言葉と共に、クラーケンの触手の先に集った水滴が大きくはじけた。

稲妻を包み込んだ水滴が、クウリとホズミが固まった方向に向かって襲い掛かる。

「ホズちゃん、下がって……!スパ——」

クウリが宣告(コール)するよりも先に、ホズミは素早く両手杖を持った手を襲い掛かる水滴に向かって掲げた。

「スパチャブースト”緑”!!」

[ホズミ:障壁展開]

そのシステムメッセージと共に、ホズミを中心としてドーム状に展開された緑色の障壁が二人を包み込む。

激しく水滴が障壁に衝突し、水飛沫を舞い上げる。

ドーム状の障壁を這うように、稲妻が駆け巡った。

だが——。

『忘れないで。ここは、私の世界ですっ』

雨天のその言葉と共に、徐々に勇者一行が立つ砂利から、水が染み出していく。

それと同時に、濡れた地面を介して染み渡った稲妻が勇者一行を襲う。

ホズミの放つ障壁の中に、迸る稲妻が這い巡る。それは、瞬く間に二人の全身を貫く。

「きゃあっ!?」

「うわあああっ!!」

『ホズミ!!クウリ!!』

すると、悲鳴にも似た二人の叫び声が、空間の中に響いた。

セイレイが放った雷纏を介して、クウリとホズミの体力が大きく削れる。

『まずい、二人とも体力が半分削れた!体勢を立て直せっ!!』

noiseは大声でホズミとクウリの状況を報告。

「——っ、解除!」

慌てて放つ宣告(コール)に伴い、セイレイが纏う雷は瞬く間に大気に掻き消えていく。続いて大きくダメージを受けて片膝をついたクウリとホズミの元へと駆け出しながら、再度宣告(コール)を重ねる。

「二人とも、大丈夫か!?スパチャブースト”緑”!!」

[セイレイ:自動回復]

そのシステムメッセージと共に、セイレイの全身に淡い緑色の光が纏い始めた。

まるで鬼ごっこの要領で、セイレイは素早くクウリとホズミの身体に触れる。

すると、緑色の光は二人に伝搬し始めた。それから、徐々に体力の回復したホズミとクウリはゆっくりと身体を起こす。

「まだ体がビリビリして気持ち悪い……」

「悪い、クウリ、ホズミ……迂闊(うかつ)に使うべきじゃなかったな」

「セイレイ君。自分を責めるのは悪い癖だよ。私なら大丈夫だから……にしても、電気を通さない水かぁ」

勇者一行は、ゆらゆらと触手を動かすクラーケンに視線を送る。

その動きからは、明らかな余裕を感じ取ることが出来た。

『ふふん。すごいでしょー?漫画とかで見たことないです?綺麗な水は、電気を通さないんだってー』

「悪い。俺らあんまり漫画を読んだことねーんだ」

『あー……ごめんなさいっ。それもそうですよねー……。でも、あんまり雷纏は使わない方が良いと思いますよ、この水のバリアはいつでも出せますので……』

「余計なお節介、どうも」

『あっ、言わない方が良かったのかなこれ……うーん……』

またもや自らの能力の詳細について口を滑らせる雨天。そんな彼女の話を聞きながら、セイレイは再びファルシオンを顕現させて身構える。

「しかし、雷が通らない水、か。どう打開したものかな……っと!」

セイレイは再び思考を始めながら、クラーケンの注意を引くべく駆け巡り始めた。

その隙にホズミはセイレイと逆方向に回り込み、両手杖を構えて宣告(コール)する。

「せぇのっ……これなら、どうだっ!」

[ホズミ:炎弾]

次の瞬間、ホズミの持つ両手杖の宝玉の先から鋭い矢の如き炎が放たれた。それは瞬く間にクラーケンの背後に直撃し、激しい爆炎を生み出す。

『あっつぅ!?』

雨天の悲鳴が響くが、クラーケン自体は小さく身体を捩らせたのみだった。

クラーケンを纏う海藻の一部が焼け焦げて、はらりと零れ落ちる。

「効果は浅い、か……セイレイ君の雷纏が確実なんだろうね。でも、あの水のバリアがある限りそれは難しい……」

その様子に、ホズミは顎に手を当てる。それから再びクラーケンの視界から逃れるべく回り込み始めた。


[純粋は電気を通さない、ね]

[↑純水。ごめん誤字った]

[まあ雨天もある種純粋だけどね]

[四天王ってことはこんな感じの敵ばっかりなんだろ。どう攻略しろってんだよ 3000円]

[厳しい戦いになるな]


コメント欄から懸命に考察や情報が送られるが、有益そうな情報を見出すことが出来ずnoiseは悪態を吐く。

『……くそっ、弱点はないのか……?あの水のバリアさえ、少なくともどうにか出来れば……!』

セイレイはクラーケンの注意を引く最中、ちらりとドローンのホログラムが映し出すコメント欄に視界を送る。

「……純粋?」

『ずっと同じところをぐるぐると……さすがにワンパターン、ですっ』

物思いに耽るセイレイ。雨天はその隙を逃すまいと、触手を大きく振り上げる。

『セイレイっ!!避けろっ!!』

noiseが叫ぶが、思考の沼に嵌っていたセイレイは反応が遅れた。

セイレイの頭上目掛けて、クラーケンが振るう触手から繰り出される一撃が襲い掛かる。

「——っ!?」

咄嗟の判断でセイレイはファルシオンを頭上へと掲げ、受けの構えを取った。

しかし、完全にダメージを防ぐことは出来ずセイレイは大きく吹き飛ばされる。

「ぐあっ!?」

「セーちゃんっ!!スパチャブースト”青”!!」

吹き飛ぶセイレイを受け止めるべく、咄嗟にクウリは宣告(コール)を始める。

「待って——」

人を浮かせることは出来ないんじゃ——そうホズミは声を掛けようとした。

だが、クウリの狙いは別にあった。

「着ている服を浮かせられないとは、言ってないっ!!」

すると、大きく吹き飛ぶセイレイはブレーキがかかったように、途中でふわりと空中で停滞する。それから衣服に引っ張られ、セイレイはゆっくりと地面に着地した。

両手に受けたダメージを振り払うべく、セイレイは手足を軽く動かす。それから、クウリに向けてニヤリと楽しそうな笑みを浮かべた。

「助かったぜ。クウリ」

「どういたしまして。で?何かに気づいたんでしょ?」

「ああ。ヒントは、コメント欄にあったよ」

「……コメント欄?」

クウリは改めて、コメント欄に打ち込まれた文章を確認する。しかし、一向に理解することは出来ずクウリは首を傾げた。

「……何言ってるのさ?分かる情報と言えば、雨天ちゃんが純粋だってことくらい……」


「そこ。そう、そこだよ」

「え?」

セイレイの言っていることが分からない。きょとんと呆けた表情を浮かべるクウリを他所に、セイレイはホズミとnoiseが操作するドローンの方へと視線を向けた。

「ホズミ。姉ちゃん、一回集まってくれるか」

「どうしたの、セイレイ君」

『ヒントなんか、合ったか?』

セイレイの言っていることが理解できず、彼らはお互いに顔を見合わせる。

そんな面々を他所に、セイレイはいたずら染みた笑みを浮かべた。

「スパチャブーストと同じだろ?あの水の盾は、雨天の心を現した姿なんだ」

「……うん。そうだね」

『ああ、スキル名は”純水の障壁”と言うらしい』

noiseの報告に、セイレイは確信したように頷いた。

「あいつは、自分以外の世界を知らない、いわば()()な状態なんだ」

「……それは、なんとなく分かるけど……それが?」

クウリはセイレイの持つ答えを促す。

「綺麗な水ならば、濁してやればいい。俺達の持つ価値観で、雨天に言葉をぶつけるんだ。あいつの価値観を変える言葉を与えることが出来れば、あいつの純粋を打ち破ることが出来る。純粋さを失えば、俺の雷纏を通すことが出来るようになるはずだ」

「言ってること、無理難題なの……分かってる?」

ホズミは引きつった笑みを浮かべる。だが、セイレイは至って真剣な表情を崩さなかった。

「俺だって、沢山の言葉に感情を濁されてきた。でも、それら全てが悪いことだとは思わねぇよ。書き換えようぜ、あいつの価値観を」

筆洗いのように、沢山の言葉にセイレイは純粋な心を濁された。

その経験を武器へと変えて、沢山の戦いの中で抱いた価値観をぶつけるべく。

セイレイは再びファルシオンを構え、雨天へと向ける。


「俺達で、雨天に向けて共鳴(シンパシー)を感じ取ることが出来ると思う言葉を選ぶんだ。俺達なら、出来る」


To Be Continued……

総支援額:26500円

[スパチャブースト消費額]

青:500円

緑:3000円

黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

青:五秒間跳躍力倍加

両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。

緑:自動回復

全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

黄:雷纏

全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

②クウリ

青:浮遊

特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

③ホズミ

青:煙幕

ホズミを中心に、灰色の煙幕を張る。相手の視界を奪うことが出来るが、味方の視界をも奪うというデメリットを持つ。

緑:障壁展開

ホズミを中心に、緑色の障壁を張る。強固なバリアであるが、近くに味方がいる時にしか恩恵にあやかることが出来ない為、使用には注意が必要。

魔法:炎弾

ホズミの持つ両手杖から鋭い矢の如き炎を打ち出す。

一度の炎弾で3000円と魔石一つを使用する。火力は高いが、無駄遣いは出来ない。


ドローン操作:noise

[サポートスキル一覧]

・斬撃

・影縫い

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