魂ごと木っ端微塵に砕いてくれる……!
「ふ、ふふふふふふふふ……」
それまで痛みに絶叫していた“神”が笑い出した。リリムとルーヴェンディウスが警戒度を上げる。
「もう許さないぞ。転生すら不可能なほどに、魂ごと木っ端微塵に砕いてくれる……!」
“神”の背から溢れ出ている靄の量が増えた。鉄砲水のように溢れ出る勢いで、周囲を黒く染めていく。
「ルーヴェンディウスさま、あれを見てください!」
リリムが“神”を指さした。
動きを止めた“神”。しかしその丸まった背だけがぴくりと動いたのが見えた。
やがてそれは左右に裂け、裂け目からはこれまでと比較にならない量で靄が飛び出していく。
「な、何が起こっているのじゃ……?」
「ルーヴェンディウスさま、念のためにデルフィニウムさんの保護を」
デルフィニウムは無数のお守りによって守られているが、万一の場合にはルーヴェンディウスがデルフィニウムを保護することがあらかじめ打ち合わせられていた。
「しかしそうなると、ヤツへの対応はリリムたんだけになるが、大丈夫か?」
ルーヴェンディウスの指摘にリリムは今もうずくまり靄を放出し続ける“神”を見た。
「なんとかするしかありません。この作戦の『要』はデルフィニウムさんです。何が何でも守らなければ鳴りません。“神”が何をし始めるのか未知数の部分がありますが、そもそも“神”の力は相当衰えているはずです」
「希望的観測にすぎんが、致し方あるまいか……」
デルフィニウムの存在はこの戦いの核だ。彼女を放置するという選択肢はあり得ない。
「リリムさん、無理しないで欲しいの」
「ありがとうございます、デルフィニウムさん」
そうしている間に“神”の側に変化が生じてきた。
「あれを見てなの……!」
デルフィニウムが指さした先には“神”の発した靄があった。いつしか、“神”を中心に渦を巻くように対流していた靄が、その中心部からまるで触手を伸ばすように靄が伸びていき、『カテドラル』の屋上に取り付いた。
「何をするつもりじゃ……?」
三人が身構える。
その警戒をよそに、靄は次々屋上の床に取り付いていき、そして……。
「うわっ……!」
突然『カテドラル』が揺れた。リリムやルーヴェンディウスが全力で攻撃をしても一切揺らがなかった『カテドラル』が揺れたのだ。
「靄が……!」
最初に気づいたのはデルフィニウムだった。
中心部から伸びた触手状の靄がいっせいに中心部に戻りつつあった。取り付いていた『カテドラル』の天井構造物をもぎ取って。
まるで地面に落ちている石を拾い上げてポケットに入れるような気安さで靄は次々と『カテドラル』の天井構造物を取り込んでいく。
「な、何が起こっているのじゃ……」
ルーヴェンディウスの驚きをよそに、靄は建材を取り込んで大きくなっていく。
そうしていく間にも靄からは次々触手が伸びていき、屋上構造物を取り込んでいった。
そして、唐突に靄が弾け飛んだ。
中から現れたものは――
「な、なんなのあれは……!」




