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勇者10歳と魔王17歳~幼女勇者と美少女魔王、世界を支配する“神”を倒さんとす  作者: 雪見桜
そなたらは帝国軍の誇りであり、リリム陛下の誇りである
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騎士にとって剣は魂も同然です

 メリアがこの修行の最初にリリムから課せられた『平常心で剣を握れるようにする』という課題は大いにメリアを苦しめたが、この一週間ほどはかなり安定して平常心を保っていられるようになっていた。実際今も、刀身が半ばで折れている彼女の愛剣『泉の女神』を握ったまま、冷静に魔王リリムの前にいる。


 この一週間、メリアは主に島の中央部にある森の中で修行レベリングを重ねていた。森の中には凶悪なモンスターがいるのでそれを退治したり、フェンと手合わせしたりしているのである。


 そんなリリムはメリアに一日一回のチャレンジ、すなわちリリムへの挑戦権を与えた。

 それが今メリアがリリムの前に立っている理由である。


 勇者の仲間として数多くの活躍をしてきた聖騎士メリアだったが、魔王リリムと比較すれば当初は赤子同然といえた。リリムをただの一歩も動かすことができず、いとも簡単にあしらわれていた。


 しかしそこからがメリアの真骨頂だった。

 日を追うごとに目を見張るほどの成長を見せ、数日前にはついに剣――倉庫にあったただのロングソードだが――を抜かせるに至った。


 その実力は間違いなく西大陸最強であり、リリム配下の名だたる猛将達と比べても勝るとも劣らぬ実力といえた。

 そんなメリアはリリムと数メートルの距離を取って対峙している。


「その剣、取り替えましょうか?」

 リリムが手を差し出したがメリアは首を振った。


 メリアが持っているのは勇者パーティーの一行として冒険をしているときに手に入れた名剣『泉の女神』だ。五年前の“神”との戦いに敗れた際、“神”自身によって折られたものをそのままにしている。


「騎士にとって剣は魂も同然です。そう易々と取り替えるものではありません」

 その決意にリリムは頭を下げた。


「そうですか、申し訳ありません。軽はずみなことを言ってしまいました」

「いえ……」


「その心意気に応えましょう」

 そう言ってリリムは亜空間に手を伸ばした。


「…………!」

 メリアが息を呑むのも仕方がない。彼女たちが目覚めてからリリムが彼女の愛剣・ソウルファイアを抜くのはこれが初めてだからだ。リリムの本気が伺えた。


 自分でも驚くほど魔王に素直に頭が下がった。

「胸をお借りします」


 折れた剣を構え、相対する相手を見る。

(隙がない……)


 相手はいつもの赤いドレス姿で、いつものように穏やかな微笑みをたたえてリラックスして立っているだけなのに、どう踏み込めばいいのかまったくイメージが湧かない。それ以前に、圧倒されそうな自分がいた。


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