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お主のようなお子様と同じにするな!

「しかし、わしらをさんざん苦しめた勇者イリスがこんなちんちくりんとはのう」

 ルーヴェンディウスがイリスの前に来てイリスの頭からつま先までを見下ろした。


 その姿はどう見ても普通の子供にしか見えない。ルーヴェンディウスの言うとおり、知らなければただの子供で終わってしまう見た目だ。勇者と言われても誰も信じないだろう。

 しかも中身は日本の男子高校生なのだ。


「うるせー! つか、そういうお前の方がちっせーじゃねーかよ! チービ!」

「なんじゃと! わしはこう見えて千年も生きるヴァンパイアロードなんじゃぞ! お主のようなお子様と同じにするな! やーい、コドモ、コドモ!」


「なんだと!? チービ!」

「コドモ!」


「チービ! チービ! チービ! チービ!」

「コドモ! コドモ! コドモ! コドモ!」


 低レベルな子供どうしの言い合いになりつつあったので、リリムが「こほん」と間に入った。

「ともかく、皆無事でよかったです。それでルーヴェンディウスさま」


「なんじゃ、リリムたん?」

「その『リリムたん』ってのは何なんだよ……」

 イリスの突っ込みをルーヴェンディウスは華麗にスルー。


「ここにいても大丈夫なのですか? “神”に見つかればルーヴェンディウスさまの面従腹背が知られてしまうのでは?」


「その点は抜かりない!」

 リリムの指摘に対し、ルーヴェンディウスは「えへん」とない胸を張った。


「城にはマーガレットを残してきてある。やつはわしの眷属であり、ヴァンパイアロードとしての権能の多くは今やつに委譲してある」

 リリムはルーヴェンディウスの館で会ったことのある、品のある老女の姿を思い出した。今彼女はルーヴェンディウスと同じ姿をしているのだという。


「そんなことができるのですか……!」

「うむ。リリムたんの〈魔王因子〉を参考にわしが〈吸血鬼因子〉を改良した、この五年の成果じゃ。個々の個体の区別のつかない“神”はきっとマーガレットをわしだと思っておるじゃろう」


「それで五年前よりも幼い姿をしているのですね」

「う、うむ……。そうじゃ……」


 それの話をしっかり聞いていたのがイリスだ。

「なーんだ、やっぱりチビじゃねーか」

「ぐぬぬ……否定できぬ……」

 イリスがルーヴェンディウスの頭を撫でるのを、ヴァンパイアロードはおとなしくされるがままになっているのであった。


「それじゃ、行くか」

 イリスがおもむろに立ち上がった。


「行くって……どこへですか?」

 イリスの隣に座っていたメリアが聞いた。

 イリスは、メリアと、この部屋の中にいる面々を順番に見わたしつつ、言った。


「決まってるじゃないか。“神”を倒しにさ」


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