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俺は摩訶不思議のドッペルゲンガーを見た

作者: 乙彼秋刀魚

 暗闇に包まれた月が綺麗な夜だった。


 電車がカンカンカンという踏切の音と共に真っ直ぐ突き進んでいた。

 その時、俺は確かに見た、ただ似た人とかではない。

 紛れもなく瓜二つだった。


 目に映ったのはたった一瞬のこと、でもはっきりと分かった。

 見飽きる程見たその顔を俺は間違えるはずがない。


 その電車には俺がいた。



 俺はドッペルゲンガーを見た。



◆◆◆◆



「なんでまた、ドッペルゲンガーを見たとかなんて言い出して。妄想も良い所だぞ」


 ガムシロップを含んだアイスティーをストローでかき混ぜながらコウタは言う。

 

「妄想なんかじゃない。はっきり見たんだこの目で!」


 誰かに主張したからといって疑問が解決するなんて期待もしていない。だが誰かに相談することで少しは心を落ち着かせられるのではないか、と考えていた。

 俺は基本的にこの目で見たものしか信じない主義なのだ。つまり都市伝説なんてもっての外、噂すら疑ってしまう性格なのである。

 しかし俺は、俺が一番に信用するこの目を通して、それを見てしまったのだ。

 自分でも未だに信じられていない。しかし信じる他ないのだ。


 ドッペルゲンガーそれは諸説あるが、一般的には自分に瓜二つの顔を持つ人物がもともとの人物を殺してくると言われている。


「信じてくれよ幼稚園からの幼馴染だろ?」


 泣いて縋る思いで俺、すなわちケントはコウタの手を握る。


「ま、まあ。そこまで言うなら信じるけどさそんなこと言われても、俺は何をすりゃあいいんだ?」


 後ろ髪をぽりぽり掻き首を傾げるコウタに俺は確かに、とつい呟いてしまう。

 ドッペルゲンガーが現れたということは要は俺は殺されてしまうということ。

 そして俺がコウタにして欲しいこと、それすなわち俺のドッペルゲンガーの捜索である。


「おい、ケントこれ見ろよ」


 コウタはつい先ほどまでいじっていたスマートフォンの画面を俺に見せつける。

 そしてそこにはこう書かれていた。


"ドッペルゲンガーの捜索ならばお任せあれ"


 なんとも都合が良くそして胡散臭いのであろうか。

 しかしやってみないに越したことはない。


「なんだそれ、少し気になるな」

「でも怪しくないか? こういうのって」

「まあ、そうだけどさ」


 俺は自分のスマホを手に取り、そのサイトにアクセスしてブックマークした。

 少し迷ってしまう、自分の死は刻々と迫っている。だからといってどこの馬の骨かもわからない人に頼るのも抵抗がある。


「とりあえず俺、今日ここいくわ」

「お、おお」


 やはり行ってみよう。そう決断し席を立ち上がる。

 コウタは冗談と思っていたのか凄く驚いている。


「じゃあな。相談乗ってくれてあんがと」


 そう言ってケントはカフェを颯爽と後にした。

 自分の食事の代金を払っていないのはここだけの話だ。

 

 何本か電車を乗り換え、しばらく歩いた所でナビの矢印は止まった。


「ここ、だよな?」


 住宅街にあるその建物は小さな探偵事務所だった。

 特にドッペルゲンガーについて触れられていることもなく。ここが例の場所なのか、と疑問を残しつつ、建物の扉を開けた。


「こんにちは〜」


 辺りを見回しながらそう呟いた。

 暗めのその部屋は人気を感じられない。

 すると奥の方から男の人が出てきた。


「こんにちは、」


 スラリとした男の人が俺によってくる。


「本日はどのようなご用件で?」


 男の人はカウンター席に座ったのちボールペンを握った。


「あの、その」


 やはりドッペルゲンガーなどと、この歳で口にするというのは少し躊躇いが生まれる。つまり恥ずかしいのだ。

 男の人はそんな俺の姿を見て、顔を覗き込む。


「ど、ドッペルゲンガーなんですけど……」


 俺がそういうと男の人は目を見開き、マジかといったような気がする。


「そ、そう。またドッペルゲンガーですか……」


 男の人は信じられないと言わんばかりの口調で、部屋の奥へと入って行った。

 そして数分もすれば女の人が連れてこられる。


「じゃ、とりあえずこっちおいで」


 大きな丸メガネを掛けた女の人は手を仰ぎ俺を呼ぶ。

 俺は言われるがままに奥の部屋へと進む。

 そしてソファに座った。


「こんにちは、私の名前はフシギよろしくね」

「よろしく……お願いします」


 女の人はフシギという名前らしい。凄くニコニコしていて元気だ。


「そしてこっちがマカくん。私の助手だ」

「俺を助手とか言ってますが、フシギさん本業の探偵は全くやらないですけどね」


 マカさんは助手という言葉が気に食わなかったのか直ぐに撤回する。


「私はドッペルゲンガー捜索が本業だからね」


 得意気にフシギさんは語る。そんなフシギさんを見てマカさんは呆れた表情を浮かべた。

 そして俺は期待と安心をする。本業というからには食っていけるほどの仕事をこなしていてそれなりに経験があるということだからだ。


「つまり今まで何度もドッペルゲンガーを倒してきたということですね?」


 俺は期待を乗せて言葉の飛行機をフシギさんに送る。しかしその飛行機はすぐに爆撃されてしまう。


「いや、ないよ」


 またまた得意気な顔を浮かべてフシギさんはいう。そしてさらに追撃が入る。


「フシギさん、ドッペルゲンガー捜索とかいう名目で探偵の仕事サボって自堕落な生活送っていますからね」

「マカくん、余計なこと言わないの!」


 完全に墜落した飛行機は完膚なきまでに爆撃され尽くした。

 俺はとてつもない不安に駆られた。本当にこの人たちに命を預けて良いのだろうか。

 そんな俺の表情を見て、フシギさんはニコリと笑う。


「でも任せて必ず解決してみせる」


 その自信の根拠は一体どこからきているのだろうか。俺はこの人のこと一切知らないがそう思ってしまう。


「それでケントくん?」


 この人に俺名乗ったことあるっけな?


「なんで俺の名を?」

「いや、なんとなく」


 すごい人だな。


「それでいつドッペルゲンガーと出会ったの?」


 俺はその日のことを全て洗いざらい話した。

 そしていろんな質問を受けた。その日来ていた服とかその日食べた物とか。


「そっかなるほどね。それでねケントくん」

「はい?」

「今から、ここに泊まるってこと出来る?」

「今からですか?」

「うん、今から」

「わかりました」


 どうやら俺を保護してくれるらしい。

 

 

◆◆◆◆



 あれから1日が経過し、俺は探偵事務所から追い出された。

 もう不要らしい。

 つまりもう保護する気はないのだろう。

 ドッペルゲンガーを見つけたのか?

 いや違うだろう、こんな早く見つかる訳ないし見つけたら俺に報告するだろう。

 では、諦められたのか?

 その可能性が一番濃い。

 まあ、無理だよなドッペルゲンガーを探すなんて。

 あんなのに頼る自分が馬鹿だった。


 俺はトボトボと帰り道を歩いた。

 

 何か腑に落ちない。あんなに自信があったフシギさんがこうも簡単に諦めるのだろうか。あんなに真面目そうなマカさんがこんなにすぐに投げ出すだろうか。


 やはりドッペルゲンガーを見つけたのか?


 というかなぜ彼女は俺の名前を当てられた?

 たまたまか? 今思えばそれは不可能だ。何千とある名前を一発で当てれるわけがない。

 ではなぜだ?

 考えられるのは一つだけ。

 フシギさんは過去に俺にあったことがある、のみ……。


「おーい、ケント!」


 コウタが道で手を振っている。


「おお、コウタ」


 偶然コウタと出会った。コウタはいつも通りの表情で俺の肩を叩く。


「ごめんな今日学校休んじゃって」


 追い出されたのは夕方な為、俺は今日の学校をサボったことになる。

 コウタはそう言う俺を笑う。


「何言ってんだよ。お前、今日学校来てたじゃんか」

「は?」


 今日、俺は確かに学校に行ってない。探偵事務所で匿われていたからだ。

 なので俺が学校に行けるわけがない。

 

 ドッペルゲンガーが!?


 それしかない。つまりドッペルゲンガーは近くにいる。


「そいつはドッペルゲンガーだ!」

「え?」

「ちょっと携帯かせ!」

「なんで?」


 俺はコウタの携帯を取り上げてすぐに電話を掛ける。

 着信先は俺。


「ドッペルゲンガーに電話するんだよ」


 電話のプルルルという音が聞こえる。


「そしたらお前に……!」

「あ、出た! コウタ、ここに来いって言ってくれ」


 コウタは戸惑いながら電話を持って告げる。


「ケント? 渡したい物があるから学校の前きてくんない?」


 そして電話を切った。

 コウタいはく来てくれるらしい。

 勝った。ドッペルゲンガーは俺の手のひらに乗せられた。


「もういいかな? ケントくん」


 突然、俺の名前が呼ばれる。

 振り向くとそこにはフシギさんとマカさんが。なぜこんな所へ?


「どうしたんですか?」


 顔を引き攣らせて問いかける。

 なぜ彼女らがここにいるんだ?


「まだわからないのかい?」

「わからないって何がですか?」


 フシギさんのニコニコとした瞳が不気味に光る。

 俺は何を言っているのかさっぱり分からない。


「君がドッペルゲンガーだということをだよ」

「どういう、こと……!」


 全ての疑問が一つに集まった瞬間だった。

 ドッペルゲンガーと出会ったあの日、俺はなぜ暗い夜道を歩いていたんだ。なぜ電車に乗っていないんだ。


「そんな……」


 俺は地面へと崩れ落ちる。

 そしてマカさんの背後からもう1人の俺が現れる。


 お前がいなければ、お前がいなければ!

腹の底から怒りが湧き上がる。


「ドッペルゲンガーの存在が第三者に確認された時……そいつは消滅する」


 俺は憧れていたのだ、人間という存在に。


 ドッペルゲンガーはパッと消えた。

 チリ一つ残さないまま。


「終わりましたね」


 マカくんはため息をつく。


「うん、終わったね」


 私はそれを笑顔で返す。


「フシギさんはこれを機にちゃんと働いて下さいね?」

「やだよ」

「はあ、せめて並行世界の自分はフシギさんと出会うなと願うばかりです」

「お、らしくないこと言うね? でも安心してどんな時でも私はマカくんと出会って居ると思う」


 私はニコニコとマカくんを見つめた。

 マカくんは、それは最悪だと言って顔を青くする。

 きっとどの時空でも私たちは出会って、そして同じ最後を迎えるんだ。


「どうしてそんなこと思うんですか?」

「なんとなく」


 そう、なんとなく。



 


ドッペルゲンガーを自分の脳内で想像して書いている為、イメージとか特徴とかが違う可能性があります。

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