読者との騙し合い(カラメルピンク)
架空の作家、裏川屏風氏に捧げる (牛乳ノミオ)
*卯乃墓参さん
*カラメルピンクさん
*右神夜雲さん
*地洋天さん
連載の更新に行き詰まると、わたしはよく他の作家さんの作品を見てまわる。ネタ探しの意味もあるが、基本的にはただの気晴らしだ。
他の作家さんの感想やお気に入りから、あっちへ飛びこっちへ飛びしていると、たまに相当面白い小説が見つかることがある。
新着にあまり興味のないわたしの唯一の開拓法である。
巡り巡って知り合いのページに漂着することもしばしば。いくらユーザー登録数が多いとはいえ、やはり世間はせまいものだなぁ、なんて思ったり。
つい先日も裏川屏風さん作の『ゼグリの夜』という短編にいき着き、久々に読み返してみた。
裏川さんの小説は、何度読んでも読み飽きるということがない。
一度目より二度目。
二度目より三度目。
三度目より四度目のほうが、より楽しめる構造になっている。どうすればこんな小説が書けるのか。どういうつもりで書いているのか。わたしの理解の範疇にはない。
褒めてばかりいてもしょうがないので、批判もしておこうと思う。
裏川さんの小説の弱点は、一度目がつまらないということ。正直「二度目は面白いはずだ」という期待無しでは読めたもんじゃない。
まずストーリーがわからない。
そして、結末の意味がわからない。
中途半端な所であっさり了の字を打ってしまうことも、よくある。
置き去りにされ、もう一度前書きから読み返してみて、ようやく時系列が飲み込める。
さらにもう一度よんで、多くの伏線に気づかされる。
またさらにもう一度……と、一つの作品で何度も狸に化かされたような気分になる。
裏川さんは自分の作品について多くを語らない作家だった。それは読者にサプライズを残しておくための、気遣いだったのだと思う。
『ゼグリの夜』には、十数件の感想がズラリと並んでいる。(何個かわけてほしい……)
それらを読むだけでも、それぞれの解釈の違いに驚かされる。
裏川さん自身、思いもよらなかった感想を書かれたこともあっただろう。
裏川屏風という人は、読者と騙し合いをしていたんだと思う。いわゆる“深読み合戦”を純粋に楽しんでいたんだ。
二度と返信の書かれることのない感想は、今でも増え続けている。
ぜひ、裏川さんにも見せてあげたい。
あっちの世界でも、小説を書いているんだろうか。天使達とリレー小説なんかやってたりして。
裏川さんの破天荒は、死んでも治らないんだろうな。 (カラメルピンク)