知ってしまったら
たぶん人は、どんな人生を過ごし、いつこの世を去るかを知らずに生まれてくる
私は、もちろん生まれてきた時の記憶はないし、どんな人生を過ごし、いつこの世を去るのかも知らずに今もいる
知っているのは、いままで過ごしてきた人生である
さて、彼はこの世に生まれた時にすでに、自分がどんな人生を過ごすかを全て知り、いつこの世を去るのかも知っていた
どんな人生を過ごすかを知っているということは、何もかも全て思ったとおりにバラ色の人生を過ごすということではない
自分がいつ人生でどう道に迷うかも知っている
そして選んだ道で人生がその先どう進むかも知っている
ところが、その進む道が幸せとは限らない、犠牲を払って仕方なしにそうせざるを得ないことも知っている
もちろん幸せを掴む場面があることも知っている
やはり、全てが上手くいく人生なんてありえないようで、苦難が待っているということを知っているのに避けることができない
そのまま決められた最期の時がくるまで、この世を去ることはできない
先のことを何も知らずに、今を一喜一憂して生きていくことが、どれだけ幸せなことか
と心底思えるかも知れない
そう、不確実でも可能性のある人生とはどれだけ素晴らしいものであるのかを
しかし、幸いなことに未来を全て知って生まれてきた彼は、それなりに幸せに過ごせることを知っていた
そしてやはり予定通りにこの世を去った
ただ、この世を去る時は知っていたのだが、この世を去ったかどうかは解っていたのだろうか?
誰一人知る由もなかった
人生は未来を知らないから修行であり、知ってしまったら拷問となるかもしれない




