呪いのカセットテープ ~退屈な日常をぶち壊せ!~
かつて一世を風靡した映画がある。
ビデオテープに呪いの映像が録画されており、視聴すると数日以内に死ぬという内容。呪われたビデオテープが人から人へ手渡されていく様は、言い知れぬ恐怖を与えたものだ。
これは……映画のマネをしてカセットテープに呪いを込めようとした少年の話。
「お前を呪ってやる、お前を呪ってやる」
少年はカセットデッキに話しかける。
自分の声を録音しているのだ。
テープをクラスメートに送り付け、その反応を見て楽しむのが目的。
もちろん、ボイスチェンジャーを使って特定されないようにしている。
全員分を郵便ポストに投函したその数日後……。
「うちにこんなテープが届いたんだけどぉ!」
「俺に家にも!」
日に日に騒がしくなっていくクラスメートたち。
少年は一人ほくそ笑む。
クラスは呪いのカセットテープで話題が持ち切り。
騒ぎを起こしたのは俺だけど、誰も気づいていない。
彼は満を持して話題に入っていく。
「あれ本当に気持ち悪いよな!
特に『一週間以内に誰かに聞かせないと、お前は死ぬ』
って言ってたところが!」
そう言うと、クラスメートはいっせいに彼へ視線を向ける。
「え? 俺、何か変な事、言ったかな?」
きょとんとする少年。
記録媒体はCD、MDが普通な時代。
今更になってカセットテープを使う人は少ない。
誰も内容を確認していなかったのだ。
「そんなことよりさぁ、昨日チェーンメールが……」
話題はすぐに流行の話題へ。
カセットテープは時代遅れの産物だった。
「はぁ……」
肩を落として下校する少年。
そんな彼に背後から……。
「なに落ち込んでんだ! この馬鹿!」
「いてっ!」
勢いよくカバンで後頭部を強打される。
「何すんだよぉ……」
「落ち込んでるみたいだから喝を入れてやったぞ。
これ作ったのアンタでしょ」
後ろを振り向くとカセットテープを手にした少女。
少年の幼馴染だった。
「え? なんで?」
「こんなことするのアンタくらいだしね。
それに、声変えてもしゃべり方で分かるってーの。
ほら、元気出して!
明日は一緒に例の心霊スポット行こうよ!」
「うっ……うん」
少年が呪いのテープを作ったのは彼女の為だった。
彼女は非日常に憧れる夢見る女の子。
呪いのテープを作って話題になれば喜んでくれると思った。
「約束だからね! 忘れないでよ!」
「分かったよ」
夕焼けに照らされる彼女の笑顔がとても眩しい。
退屈な日常を打破して、非日常を求める青春。
二人は全力で不思議を追い求めた。