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滅びの神は世界を謳歌する  作者: 流川 綾
3/4

ダンジョンマスター

 

 絶え間なく続いていた"黄金の川"はまるで幻のように消えていた。


「はあー、足場が崩れたのはマジで焦った」


 あの後、俺は左腕に集まる財宝によって持ち上げられ、財宝をある程度収納すると足場が崩れた。うまく財宝たちがクッションになり特に怪我などはしなかったが、四、五メートル位は落ちた気がする。



 俺は改めて回りを見渡した。

 まるで巨人でも出入りするような重厚な扉があり、天井にはいつの間にか明かりが着き様々な宝石で創られた大きなシャンデリアが幻想的な輝きを発していた。


 床には金の装飾がされた芸術品のような深紅のカーペットが敷かれ、それを辿るように視線を向かわせると、部屋の最奥に王様が座るような壮大で豪華な細工が施された玉座があった。



「魔王でも居そうな雰囲気だな」

 

 所々に黄金で細工をされた壁や床は白を基調としていたが、ここは全体的に薄暗く、異様な気配を発する玉座のせいで神聖さは感じず、まるでゲームに出てくる魔王城のようだった。


 俺は玉座へ近づき階段を上る。好奇心に勝てず、玉座の目の前に行きゆっくりと腰を掛けた。見た目の割にふかふかで身体が沈んだようにさえ感じてしまった。


「凄いな。これに座っていると離れられなくなりそうだ」


 あまりの快適さにこの玉座から離れたくないとすら思ってしまった。


「にしても、どんだけ金を注ぎ込めば創れるんだ?」


 壁を剥ぎ取っただけでもかなりのお金になりそうだ。


「そう言えば、鏡を探していたんだったな」


 俺は自分の目的をすっかり忘れていたことに気づいた。


【先ほど〈世界格納(ワールドストレージ)〉に収納したモノの一覧を表示します】


 管理者がそう言うと、目の前にステータスの時のように宙にスクリーンが現れた。そこを見るとズラリと財宝の名が載っていた。


【聖金貨×4,211,292 、白金貨×13,082,458 、金貨×41,146,582 、銀貨×37,597,986 、銅貨×10,658,226 、鉄貨×8,889,687 、魔法袋(マジックバッグ)(特大)×29、魔「ちょい待った!」…いかがなさいましたか?】


 俺は目で追いながら一番上から順に言う管理者に待ったを掛けた。


「多すぎないか!?流石にこれ全部見るのは時間が掛かるな。貨幣の価値が分からないが、凄い額だ。いったい何円くらいになるんだ?」


【 聖金貨:1億円

  白金貨:100万円

  金貨:1万円

  銀貨:1000円

  銅貨:100円

  鉄貨:10円

 凡そこの様な価値になっており、約400兆を越える金額になります】


「えっ!?」


 俺はあまりにも多く、想像以上の金額に呆然としたまま口が塞がらなかった。


【古き迷宮で手に入る貨幣は"神代通貨"と呼ばれ、精巧な技術力によって偽造が難しく特殊な魔力が籠ったモノとなります。

 基本的には何処でも使えますが、古き迷宮クラスのダンジョンは少ないので周囲にない国は自国で創っているようです。

 つまり、殆どの国が独自に創っている金貨などより価値が高くなります。場所によっては先程の価格より更に値が上がると推測します】


 金貨などの貨幣だけでなく財宝の山にあったモノは素人目にも物凄い技術で創られているように感じた。


「おいおい。それじゃあ、国家予算並み…いや、それ以上か」

 

【宝石等も沢山あるので、実際にはもっと高い筈です】


 俺は財宝の山の中にはかなりの宝石類があったことを思い出した。これらが全て俺の物だと考えると俺は少し怖くなった。



「ふぅー、まあいいや。あとで考えよう。…そうだ!鏡を出してくれ」


 俺は色々考えたが、現実逃避をすることに決めた。


【…はぁ。普通の鏡でよろしいですね?】


 どうやら俺の不甲斐なさに管理者には呆れられたかもしれない。まあ、仕方ないよね。だってこんな金額が自分の物って言われても信じられないし…。


 ああ、と俺が答えると手の中に手鏡が現れた。そのまま自分を写すとその変化に気づいた。


「っ!?」


 そこに写っていたのは、幻想的な美少女ではなく、女性と間違われそうな中性的な顔立ちをした美少年だった。

 髪の毛が伸び、白髪に変わっていた。更には瞳の色が金色に変わっていた。


「暗くて分からなかったが、髪の色まで変わっていたのか。進化の影響か見た目は人間なのが救いだが、マズイな。これじゃあ、まるで厨二病だ」


 元々どちらかと言うと中性的な顔立ちではあったが、前はもう少しは筋肉があり男っぽい体格をしていた。今は無駄な筋肉がなくなりスラリとした女性っぽい体型に変わっていた。

 可愛く?なったのは仕方ないが、これでは元の世界での生活に支障が出る。特に知り合いに会えなくなる。それにこれでは目立って仕方ない。


【私が偽装を施します】


 そんなことも出きるのか。


【はい。世界の全ては情報の集合体で出来ています。マスターの管理下にあるモノならばいくらでも情報の偽装が可能です】


 早速やってもらうと、一瞬で髪と瞳がもとの色に戻った。

 

「素晴らしい精度な」 

 

【色彩情報だけなら何の問題も無いのですが。体格を偽装すると肉体もそれにつられ能力が低下してしまいます。

 私の偽装は一時的に世界に干渉し一部書き換えているので、肉体を元に戻すと能力も低下し、また肉体に異常が生じる可能性があります。ですので、今は本格的な偽装は出来ません】


 世界の書き換えってそれはもう偽装とかのレベルじゃないだろ!?

 体格などを偽装できないのは痛いが、特に気にしなくていいよ。無意味に目立つのは嫌だが、わざわざ他人に遠慮してまで危険を冒すつもりはない。

 あっちに戻ったら自動で偽装するようにしてくれ。

 

【分かりました。ですが、〈滅神ノ瞳(ルインズ・アイ)〉を使うと瞳の偽装が一時的に解けてしまうのでお気をつけください。】


 ああ、気を付けるよ。


「これからどうすればいいんだ?」


【ダンジョンコアの再登録をお勧めします】


「ダンジョンコア?」


【ダンジョンの支配者、ダンジョンマスターになるにはダンジョンコアへの登録が必要です。前世のマスターもダンジョンマスターでしたが、転生したので再登録を行う必要があります】


 そう言えばここはダンジョンって言っていたな。


【はい、古き迷宮(古代ダンジョン)の一つで"破滅の塔"と呼ばれています。

 古き迷宮は大陸に一つしかなく、その全ては攻略不可能と言われています。ここは塔型のダンジョンで、現在150階層あります。このダンジョンの一階層あたりの大きさは、最低でも大きな街が丸々一つ入るほどの広さです】


 げぇ、そんなに広いのか。他の古き迷宮もこのレベルなら攻略不可能って言われても納得だな。どうせ魔物の強さも異常だろうし。


「どこにあるんだ?」


【マスターが座っている玉座に嵌まっています】


「え?」


 振り返ると玉座の背もたれの上の方に宝石と一緒に水晶のようなものが嵌まっていた。


「これか?」


 思わず掴んでみると簡単に取れた。その瞬間に頭に声が響いた。


~~ピコーン~~

(迷宮の心臓(ダンジョンコア)への接触を確認)

(称号"古き迷宮の主(ダンジョンマスター)"を取得しました) 


「え?こんなに簡単に?」


【この最上階にたどり着くことすら難しいので、本来はダンジョンコアに触れることも叶いません】


「それもそうか」


 俺は手に持っているコアを鑑定してみた。


ーーーーーーーーーー

名前:迷宮の心臓(ダンジョンコア)

クラス:幻想(イマジナリー)

分類:コア

能力:使用者固定、『メニュー』

称号:攻略者の証、S級ダンジョンコア

ーーーーーーーーーー


【ちなみにS級は最高ランクです】


 流石に創世神が居たところは特別だな。

 俺はコアを持ちその能力である『メニュー』を開いた。目の前に光のパネルのようなものが現れ、その中には『迷宮管理』『カタログ』『魔物召還』『ランダム召還』と書かれた項目があった。


「これはどこでも使えるのか?」


【ダンジョン領域内ならば何処でも使えます。しかし、この部屋の外で使う際には念の為"ダミーコア"を『カタログ』で手に入れたほうがいいかと。一部の機能しか使えませんが、コアを破壊されるよりはマシでしょう】


「え?破壊されると何かあるの?」


 俺は何も知らずにダンジョンマスターになってしまった。もしかしたら、コアの破壊=死だったら…。


【破壊されても死ぬことはありませんが、ダンジョンコアとダンジョンマスターの魂は繋がっているため魂が傷つき一時的に能力が低下します】


 まあ、そのくらいならいいか。死ぬとかだったらシャレにならないからな。

 改めてコアを見て色々弄っていると、『迷宮管理』は縮小された迷宮全体の構造や情報を見たり操作することができた。大抵のことはこれで出来るようだ。

 『カタログ』は日本のモノだけでなく見たこともない物やスキルを習得できるスキルオーブなど沢山の物がDPで交換できるらしい。『魔物召還』はダンジョンマスターの系譜に関する魔物や一度召還した魔物を召還でき、『ランダム召還』は物や魔物などランダムに召還できると説明されていた。

 DPってのは?


【ダンジョンポイントの略です。『迷宮管理』で見ることが出来ますが、今現在のDPは凡そ780億ポイントです】


 それって多くない? 


【はい。マスターの前世の肉体は魂無き今も魔力を放出しています。それが五百年間、DPに還元されているからだと思います。

 昔は100階層だったのが今では150階層になっているところをみると、ダンジョンが吸収出来ないほどの魔力によりダンジョンが成長したんだと思われます。恐らく魔物も強化されていると思います】


 死してなおも衰えることの無い魔力。流石は神様。


【ダンジョンマスターが直接コアに魔力を注ぐ、または侵入者から魔力を奪うことでしかDPを得られません。

 暫くはDPの余分がある為大丈夫ですが、ダンジョンの運営にはDPをかなり使うので、何かしらの対策を考える必要があります】


 前世の体を吸収しちゃったのは不味かったかな?いや、ダンジョンマスターが俺に変わったし、前世の身体じゃ意味ないのか?

 侵入者ってどのくらい来るの?


【ここは古き迷宮ですので、野良の魔物が数体程しか入って来ません】


 そりゃあ、そうだよな。進んで危険なところには来ないか。


【このダンジョンが密林に覆われているのも原因の一つかもしれません】


 なるほど、そんな場所なら余計人は来ないだろう。ふむ、やはり対策を考えないといけないかー。

 俺は試しにコアに魔力を流しながら色々と思考する。


「一回だけ『ランダム召還』を使ってみるか」


 色々と考えたが直ぐに出きることで無かった為、思考を止めた。俺は気になっていた『ランダム召還』をしてみることにした。

 にしても、『ランダム召還』って何かゲームのガチャみたいな感じだな。

 

「えーっと、これか?」


 宙に浮かぶステータスの画面のようなものに『ランダム召還』と書かれたボタンがあり、それを押すと今度は三つのボタンが現れた。金、銀、銅の三つの色をしたボタンは出てくるものの価値がそれぞれ異なるようだ。

 一回引くのに 金は10万DP、銀は1万DP、銅は千DP で1回引くだけでなく、10回分のDPで11連が出来るらしい。本当にゲームのようだ。


「今回は金を一回だけ引いてみるか」


 俺は早速ボタンを押すと魔力が一点に集まり、目の前が光った。すると、オレンジ色の宝石が現れた。

 それは神々しい光を放ち、そのオレンジ色の結晶の中には小さい太陽が爛々と輝いていた。


「綺麗だ。まるで太陽が封じ込められてるみたいだ」


 俺はあちらの世界では絶対に存在しない、この美しい宝石に目を奪われていた。


 不意に魔力を流したらどうなるのか気になった。今までの経験上、魔力を込めると何か起こるかもしれないが、やってはいけないと思うほどやりたくなってしまう。




 早速、魔力を込めると"ズドンッ!"と、まるで空が落ちてきたかのような感覚に陥った。しかし何故か俺はこの感覚を知っていた。

 この現象は神が依り代に顕現する予兆…だったか?


 

 《()()適正者が現れたのかと思って来てみれば、その魂…まさか貴方だったとは》


「はじめまして、君は…太陽神でいいのかな?」

 

 女神のような美貌と炎のような美しい髪を持つ女性は、いつの間にか宙に浮くように存在していた。俺は〈世界眼〉を使い、この膨大なエネルギーを持つ超常的な存在が何なのか理解した。


《如何にも、"太陽神オリリス"と申します。貴方は"滅神竜ウルス=ドラゴン"様でよろしいでしょうか?》


「ああ、そうだ。用件は何なのかな?」


 前世の記憶が原因なのか分からないが、俺の頭は不思議と冷静だった。そして俺は質問を返した。


《手に持っている物は"太陽結晶"と呼ばれ、太陽と同じ力が込められております。太陽神との適正が高い者を見つけるための選定としても使っておりました。本来なら適正者に恩恵を与えるのですが…》


「俺がその適正者でもあるが、神としての格が俺の方が高いから渡せないと」


 俺の頭には次々と知らない筈の知識が浮かび上がる。


《はい、最高位の神と言えど創世神と比べると天地ほどの差がありますから》


「この太陽結晶は貰っていいのか?」


《はい、お渡しします。ですが、私からの恩恵を与えられません。申し訳ございません》


「気にしなくてもいい。あっ、それなら一つ頼みたいことがある」


《頼みたいこと?》


「俺が転生して始めてと会ったのが君だ。もしかしたらもう気づいている者もいるかもしれないが、俺が転生したことを隠してほしい」


 前世の記憶に関することを見聞きすると、色々とを思い出すみたいだ。

 俺が転生したのを知るとちょっかいを出してくる厄介な奴を思い出したので、俺と会ったことを隠してもらえるよう頼んだ。


《そのようなことでよろしいのですか?》


「遅かれ早かれ気づかれると思うが、今の弱った俺がアイツに目をつけられると厄介だからな」


《アイツ?…()()()のことですか?》


「そうだ」


 いかに高位の神と言えどアイツの名は()()()()か。


《最近は一切動きを見せませんね。むしろあの方に従っていた邪神達の方が怪しい動きを見せています。もしかしたらこの世界に"完全なる顕現"をする為にまた何か画策しているやもしれません》


「ふむ、確かに何かやるつもりなのかもな」


《貴方様が動くような事態にならなければ良いのですが。もしその時がきたら今度こそ何もかも滅んでしまうかもしれませんしね?フフ…すみません、そろそろ時間のようです》 


 太陽神は冗談めかして微笑み、すぐに頭を下げて名残惜しむような顔をする。


「ああ、情報をくれたこと感謝する」


《いえ。では、またお会いしましょう》


 太陽神が消え、俺は左手で太陽結晶を掴み吸収した。



~~取得スキル・称号~~

スキル:

称号:古き迷宮の主(ダンジョンマスター)



 聖金貨:10億円

 大白金貨:1000万円

 白金貨:100万円

 金貨:1万円

 銀貨:1000円

 銅貨:100円

 鉄貨:10円


古き迷宮(古代ダンジョン)の一つで"破滅の塔"

 古き迷宮は大陸に一つしかなく、その全ては攻略不可能。塔型のダンジョンで現在150階層もあり、一階層あたりの大きさは最低でも大きな街が丸々一つ入るほどの広さです


『メニュー』→『迷宮管理』『カタログ』『魔物召還』『ランダム召還』


『迷宮管理』→縮小された迷宮全体の構造や情報を見たり操作することができる。

『カタログ』→日本のモノだけでなく見たこともない物やスキルオーブなど沢山の物がDPで交換できる。

『魔物召還』→ダンジョンマスターの系譜に関する魔物や一度召還した魔物を召還できる。

『ランダム召還』→物や魔物などランダムに召還できる

 一回引くのに 金は10万DP、銀は1万DP、銅は千DP で1回引くだけでなく、10回分のDPで11連が出来るらしい。金、銀、銅それぞれ価値が異なる。


 DP=ダンジョンポイントの略

 今現在のDPは凡そ780億ポイント


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