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第11話「オタクとかオタクじゃないとか関係なく何かしら拗らせた奴は度し難く面倒くさい」

 私は扉の前で息を荒らげている吉田を見てゾクリと恐怖心を覚えた。うまくは言えないのだが、その様子にとてつもない異常さを感じたのだ。



「よ、吉田くん……?」



 部長が彼を見て呟く。すると吉田はじろりと目を動かして、部長の方を見ると、上擦った声で静かに言った。



「……今、僕のこと、バカにしてただろ」



 由希が私に「詩子、下がって」と声をかける。私はそれに従い、ゆっくりと部室の最奥へと行く。と、直後、吉田突然大きな声をあげて、



「バカにしただろおおお!!! 僕のことをおおおおお!!!!」



 そうして私に突進するかのように暴れ出した。直後に部長と田中が私の前に出て、同時、一番出入り口に近い位置にいた河野が、吉田の前に立って奴の体に組み付いた。



「うぐっ……お、落ち着け、吉田くん!」


「うるさいっ! 突然しゃしゃり出た癖に! う、うっちーは、僕がずっと好きだったんだぞ!」


「知ったこっちゃあないしそもそも僕と彼女は恋愛関係じゃない! やめろ、流石にこれは暴力だ!」


「うるさい! 会ったこともないのに僕の悪口言ったくせに! だいたい暴力なんて、お前のこれも十分暴力じゃないか!」



 河野が少しずつ吉田に押されていく。体格に圧倒的な差があるのだ、純粋な力較べで河野が勝てるわけが無い。私がそう思った直後、吉田は河野の体を持ち上げ、振り回すように彼をはね飛ばした。



「うがあ……」


「河野!」



 壁に頭をぶつける河野に私は思わず声をあげた。同時に吉田が「このクソビッチ野郎! 結局デブはダメなのかよ!」と叫んでまたこちらに向かおうとした。


 と、部長と田中が2人がかりで吉田に組み付き、部長が吉田に声をかける。



「吉田くん! か、影口を言ってしまったのは謝るが、さすがに落ち着いて!」


「黙れよ! お前なんかクソだろ! 女だから色目使いやがって! 僕が男だから追い出そうとしたんだろ! 立場が逆だったらどうせ何も言わなかっただろ!」


「そういう問題じゃあないって……!」


「うそだろ! だから女は楽でいいんだよ! いつだってこういう時損するのは男の方なんだからあ! こんなのおかしいだろおおおお!!!!」



 な、なにを言ってやがるんだコイツは。私は吉田のあまりの気迫にたじろぎ、一歩下がった。


 と、その時。



「どいて、2人とも!」



 由希が声をあげる。同時に由希が風のように突っ走り、田中と部長がその勢いに思わず吉田の前から立ち退いてしまう。瞬間、由希が吉田の腹に強烈なパンチをお見舞した。



「うぉえ……」



 吉田が腹を押さえ下を向く。同時に由希は身を翻し、そのまま背中で奴にタックルをかまして吉田の体を吹き飛ばした。


 吉田が部室の外に押し出される。由希が同時に扉を閉め、ガチャリと鍵をかけた。

 とてつもない勢いだ。由希が強いのはよくよく知っていたが、まさかあの巨体を吹っ飛ばすとは。



「鍛えておいて良かった」


「あ、相変わらずぶっ飛んでんなお前」


「殺さないようするの大変なんだよ?」


「ええ……どうなってんだお前……」



 私は由希の爆弾発言に言葉をなくした。


 そうだ、そう言えばコイツ誇張じゃなくマジでナンパしてきたチャラ男を畑の大根みたいに地面に埋めたんだった。なんというか、1人だけバトル漫画の世界から飛び出してきたような性能してるんだよな……。


 私はしばし呆然とする。しかし直後、河野が壁に頭をぶつけていたことを思い出し、「河野!」と彼の元へと寄った。


 そして、私は河野の顔を見て絶句してしまった。彼は頭からたらりと血を流していたのだ。



「わ、うわぁーっ! や、やっば、こ、河野!」


「騒がないで……頭痛い……」


「ちょ、部長! 田中! て、て、手伝って!」



 私が声を張り上げると、由希が「落ち着いて詩子」と私の肩に手を置いた。



「こういうのは下手に動かさない方がいいの。とりあえず、誰か教員呼びに行きたいけど……」



 直後、部屋の扉が強く叩かれ、同時に外から吉田の喚き声が聞こえてきた。



「開けろぉ! 開けろよ! 卑怯だぞお前ら、僕を締め出しやがって!」



 私は激しいまでの音に恐怖を感じて、思わず黙り込んだ。今にも扉が破壊されて、アイツが入ってくるんじゃないかとビクビクしてしまう。


 しかし、やがて吉田が喚き声を止めたかと思えば、「くそお!」と叫び、そのまま走り去っていくかのような靴の音が聞こえた。おそらくは、吉田が扉の前から去ったのだろう。


 そしてしばらくして、「き、君たち! なにがあった!」と中年位の男の声が聞こえてきた。



「……うあ、た、助かったあ……」



 教員が来たのだということを悟り、私は全身の力が抜けていった。


 その後、私たちは部屋の鍵を開け、駆けつけてくれた教員に事の経緯を説明し、そして河野を医務室へと連れて行った。

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