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013 神崎さんと菅野さんの二人三脚

 最後に落とし穴に嵌められ最下位という結果。そして会場からの生温かい拍手。


 障害物競争の結果に肩を落として観覧席に戻ろうとした時、蒼空を舞う雲雀の鳴き声のような澄んだ声が聞こえてきた。振り向くと、赤色の鉢巻を付けた神崎さんとその友達である菅野さんが立っていた。


「おつかれさまだね~、雪くん!」


「おつかれ青葉くん。さっきのレースはなかなか衝撃映像だったね。」


 神崎さんと菅野さんは、俺にねぎらいの言葉をかけてくれたものの、俺は恥ずかしさの余り取り乱してしまった。


「か、神崎さんと菅野さん!? やめて、俺を見ないでくれ。超恥ずかしい、穴があったら入りたい。」


 先ほどの無様なレースを、彼女たちにもばっちり見られてしまっていたのだ。顔から火が出そうなほど恥ずかしい。


「あ、穴? 大丈夫だよっ……! さっきまで雪くんはがっつり穴に入ってたよ?」


「ちょっと若葉、それフォローなってないから。」


 菅野さんは呆れたように神崎さんを見つめた。神崎さんの無意識に傷をえぐってくるスタイル……嫌いじゃない。


「ごめんっ、でも雪くん頑張ってたよ。だから元気だして?」


 神崎さんの必死にフォローしてくれようという気持ちが伝わってくる……。やはり神崎さんは天使のような良い子である。


「ありがとう。それより、二人は次何かに出るの?」


「うん、私たちは二人三脚に出るんだ。」


 神崎さんは嬉しそうに菅野さんの手をとって言った。


「そっか、二人なら息ぴったりだろうな。応援してるよ。」


「任せてよ!」


「うーん……まぁ、がんばってくる。」


 自信満々の神崎さんと、どこか心配そうな菅野さんを見送り、俺はいそいそと観覧席に戻った。



 二人三脚の結果はというと、神崎さん菅野さんペアはぶっちぎりの最下位であった。


「わわっ!?」

「ちょっ、若葉、大丈夫!?」


「ごめんっ、足が絡まっちゃった。せーのっ! いち、に!」

「いや、まって若葉……最初は左足からだってば。」


「あわわわ……。」

「若葉、落ち着いてね。私の言い方が悪かったね。若葉の左足からだよ? ゆっくりいこう!」


「うん! がんばる!」


「「せーの! いち、に! いち、に!」」


 息が合うとかの問題ではなく、根本的な神崎さんの運動神経のスペックに問題があった。


「二人ともおつかれさま。」


 走り終えた神崎さんと菅野さんに、俺は労いの言葉をかけた。


「はぁ、はぁ……ありがとう、雪くん。」


 やや息をきらす神崎さん。


 そして――


「菅野さんも……本当にお疲れさん。」


「っぜはぁ……っぜぇはぁ! ありがとぉ……。」


 菅野さんの疲れ方が半端じゃない。何度もこけそうになる神崎さんを必死に支えながら、観客席 

からの生温かい拍手の中でのゴールであった。



 その後も色々な種目が続き、おおむね割愛するが色々と見どころはあった。


――以後それらダイジェスト。


「続いてのプログラムは、『降ろせません勝つまでは!』です。」


 各クラスの力自慢が出場し、大きな米俵を担いで誰が最後まで持ち上げ続けられるかという競技では、サッカー部の剛田とラグビー部の太田くんが出場していた。


「がんばれー太田くん!」


「剛田くん! 理系クラスの意地をみせてくれ!」


 最後まで残った二人は同時に力付き、戦いのあとは力強い握手を握った。


「続きまして、部活動対抗リレーです! なお、純粋な順位の得点と、競技中のパフォーマンス点を加味した上で、優勝した部活には副賞として来年の部費が少しだけ増やしてもらえる権利が与えられます。」


 部活動対抗リレーでは、単純な順位では短距離ガチ勢で固めてきた陸上部が一位、惜しくもサッカー部が二位であった。だが、パフォーマンス点との合計点では、全力疾走しながら爆風スランプのRunnerを演奏した、姉貴率いる吹奏楽部が優勝をかっさらっていった。


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