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042 ちろるは、球技大会で頑張ったご褒美を要求する。

「今日は、応援ありがとうございました」


 一年の球技大会が終わり、その日の部活の休憩時間のことだ。石段に座って休む俺のもとに、ちろるはぺこっと会釈しながら、今日の球技大会の試合結果を報告しにきてくれた。


「おう、お疲れさん」

「結局、先輩が応援にきてくれた時の対戦相手には負けちゃいました」


「そうか。まぁ……でも、頑張ったんだろ?」

「はい。全力で、本気でがんばりましたよ」


 あの後、試合はフルセットまでの熱戦になったそうだ。もう少しのところだったが、やはり中学軟式テニス経験者のちろるでは、ゴリゴリの硬式テニス経験者である相手には敵わなかったらしい。


「まけちゃったけど……、頑張ったから……何かご褒美とかあるといいんですけどねー?」


 ちろるは口笛を吹く素振りをしながら(しかし全然音は出せていない)、ちらっ、ちらっ、とこちらを物欲しげな表情で見てきた。


「ご褒美?……っじゃあ、……帰りに人工衛星まんじゅう奢ってやるよ」

「ふふっ、やったー!」


 ちろるは満面の笑みを見せ、石段をぴょんとリズミカルに跳ねながら降りていった。全く可愛らしい後輩である。


 その日の部活終わりの帰り道、俺はちろると肩を並べて帰り、湊川駅前にある人工衛星饅頭をちろるに奢ってやった。


 人工衛星饅頭は、神戸界隈では有名な和菓子屋さんが提供する焼き菓子である。


 見た目はどら焼きに似ているが、生地に大きな違いがあり、外側はかりっ、中はふわっとした皮の中に、丁度いい甘さの粒あんがぎっしり詰まった焼き菓子だ。


 下校中の高校生たちは、その甘い香りに釣られてつい足をとめてしまう。


 ちろるは、できたて熱々の人工衛星饅頭を、はむっと一口くわえた。


「んんっ~~~!/// おいしい~っ!」


 幸せそうに食べるちろるの姿を見ていると、何だか見ている方も幸せな気分になってくる。


「先輩も、一口ほしいですか?」

「いや、自分でもう一個買うわ」


「えぇ~? ここは関節キッスで、てれてれ……/// ってなるところじゃないんですか?」


「ちろるんって意外と計算高いのな」

「もう、残念だなぁ」


 俺の分ももう一つ購入し、ちろると二人で店前で頬張っていると、しゅわっと弾けるサイダーを注いだ時に、グラス内の氷がカランと鳴るような爽やかな声が聞こえた。


 俺がこんなまどろっこしい描写をするのは、もちろん天使なあの子しかいない……神崎さんである。

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