034 神崎さんの私服をチェックする至福の時間
神崎さんの座る六名がけのボックス席は、現在は神崎さん、菅野さん、クラス委員長、太田くん、……そしてなぜか五組のサッカー部である月山が座っていた。
「おい……、何でお前がいんだよ。」
俺は月山をじろっと睨みつけながら言った。
「そりゃ、俺は青葉の永遠のライバルだからな。お前のいる場所には現れるさ」
「ごめん、五組と打ち上げの場所被っちゃったみたい」
クラス委員長は少し申し訳なさそうに言った。
月山はちゃっかり自分の食器とグラスを席に置いている。どうやら、うちのクラスの真野が五組の方に行っており、彼と入れ替わりで月山がここに座っているようだ。
「まぁ俺の隣、空いてるから座れよ」
月山は、先ほどまで田中が座っていた席をぽんぽんと叩きながら言った。
「何で一組の席なのに、五組のお前に誘導されなきゃいけないんだよ」
いや、そう言いながらもまぁ……座るんですけどね。グッジョブ月山、試合でも見せないほどのナイスアシストだ。
こうして俺は愛しの神崎さんの正面というプレミアムシートに陣取ることができた。何という神のご加護、今日一日頑張ったご褒美かもしれない。
こんな間近に私服姿の神崎さんがいる。
世の男子なら分かるだろうが、俺は早速、神崎さんの私服のファッションチェックを始めた。
神崎さんの私服は、上品かつキュートな純白のシャツワンピースであった。天使な神崎さんには、眩しいほどの純白がよく似合う。ワンポイントとして、腰回りに黒の細いビットベルトが巻かれており、神崎さんの細いウエストのくびれがより強調されている。
シャツワンピースの裾は可愛らしいフリルがついており、彼女の可愛いひざ小僧が見え隠れするくらいの丈である。足元は黒を基調としたクラシックシューズであり、ロークルー(脛よりちょい下)の茶色の靴下を履いている。
全体的に清楚かつ可愛らしくまとめられており、ピーコやドン小西もきっとご満悦頂けるコーディネートである。
普通の男子高生は、女子の服とかよく知らないだろう。
しかし、俺はそこのところが一味違う。昔はワンピースと聞いて、まっ先に少年ジャンプの某海賊漫画が浮かんでいた俺だが、神崎さんの私服を分析するために、結構女子のファッションについても勉強したのだ。
というのは冗談であり、姉貴と妹がいる俺は、存外女性ファッションに詳しいということにしておきたい。
実際、中学時代には、ドクロのTシャツに、ズボンをずらし(腰パンが流行ってた)、ジャラジャラとしたウォレットチェーンを付け、首元には十字架のネックレスという中学生らしい痛さのロイヤルストレートフラッシュを決めていた頃がある。
その頃は、母と姉貴と妹からボコボコに駄目だしされ、「服を買うお金がもったいない。」と、一時期は自分で服を購入するのは禁止されていたほどだ。
今現在、まともなファッションセンスになったのは、厳しい女性陣に囲まれて育ったという環境要因が大きいだろう。
まぁ、結局自分に似合う服がいいんだよね。神崎さんは何着てても可愛いんだけどね。




