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014 月山翼は、サッカー部のベジータポジションである。

 着替えを済ませ、屈伸、アキレス腱など、柔軟体操を始める。他の部員もぞろぞろとストレッチを始め出した。


「なぁ青葉!よかったな!球技大会がサッカーに決まってよ!」


 柔軟体操をしている最中に、同じサッカー部の月山翼が話しかけてきた。どうやら同学年のサッカー部連中は、男子の球技大会がサッカーに決まったことで、みんな意気揚々としているらしい。


「そうか?」

「そりゃそうじゃん。サッカー部として活躍しまくって、女子にもてまくる絶好の機会じゃないか。」


 月山は金に近い茶髪に染めた髪をいじりながらそう言った。本人は気に入っているらしいが、仮にも進学校である我が校では、その派手な髪色はあまり女受けはよろしくないようである。


 月山は一見するとちゃらついて見える、いわゆるサッカー部らしい男である。どちらかというと大人しい自分とは縁遠い性格の月山であるが、小学校からクラブチームで何度も対戦し、言うならば互いの幼少期を知る間柄である。中学時代も何度か試合で顔を合わせ、月山曰く、俺は宿命のライバルらしい。


 高校では偶然同じ学校になり、昨年はクラスも同じだった。それ以来、「俺たちは宿命のライバルだった。それが同じチームメイトとして共に戦うって、素敵じゃない?」とやたら絡んでくる。


 昨日の敵は今日の友理論……少年漫画の読み過ぎだ。そのうち、「お前がナンバーワンだ!」とか言いだしそうでちょっと怖い。


「運動できる奴はもてるとか、小学生女子じゃないんだから。」

 

 それでもてるなら、俺だってずっと神崎さんの前でリフティングをして、運動できるアピールしているだろう。


「でも、青葉だって活躍してるところを好きな子に見せたいだろ?」

「……そりゃ……まぁ、確かに。」


「ほほう。ちなみに誰が好きなんだ?」

「誰が教えるかよ。」


「同じクラスの神崎さんか?」

「はっ!?バカ!ちげーし!」


 なぜわかる……。変な洞察力を見せやがって。


「まぁ青葉が球技大会やる気がないって言うなら、こっちはライバルが減って助かる限りだ。」

「ライバルって……そんなこと言ったら、二年のサッカー部は全員ライバルになるのか?」


「そりゃまぁ。特に剛田が率いる四組が危険だな。」


 月山は、向かいで柔軟をしているガタイの大きな男を一瞥しながらそう言った。


 剛田力、彼は高校二年生にして、身長180㎝を超える恵まれた体格を持っており、ゴール決定力において彼の右に出る者はいない。二年から、俺と月山もレギュラーに選ばれ始めたが、一年生からレギュラーとして試合に出ていたのは剛田、彼だけである。


「四組って他にサッカー部いたっけ。」

「あとはディフェンスに定評のある池上だな。圧倒的攻撃力の剛田と、守りの池上がいる四組が優勝候補だ。」


 なるほど……ちなみに俺は一組、月山は五組である。月山とは去年は同じクラスだったが、俺は文系、月山は理系に進んだため、今年からクラスは離れた。


「ふーん。」

「まぁ、一番のライバルは青葉だけどな。」


「俺はお前をライバルだと思ったことは一度もないけどな。」

「はぁ!?馬鹿にしやがって!」


 あぁ、もう耳元で騒ぐな、うるさい。


 どうやらサッカー部のメンバーは、みな球技大会に全力で挑むようだ。女子にアピールしたい気持ちはわからないでもないが、初心者も参加する球技大会で、経験者がガチでやるってどうなの?という疑問を誰も抱かないのだろうか……。


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