045最終回 「ラウ七歳(魔物調査完了) 終幕(エピローグ)」
いよいよ最終回となりました。
「おはよう、ラウ君っ!」
「ふんっ! おはよう、ラウ…………ふん」
「おはようっ!」
朝、ミレーネがいつものように家に笑顔で迎えに来ていた。あーあと……ライオネルも。
「だからっ! なんでお前はそんなことを口に出すんだよっ!! だから、お前は…………嫌いなんだっ!!」
おっと。
思わず、心で思っていたことが口に出てしまっていたようだ。
「おはようございますっ! ミレーネ様、ライオネル」
「おっはー! ミレーネ様、ライオネル」
フィネスとサイモンも二人にいつものように挨拶を交わす。
――あれから一ヶ月
ラウはミレーネやライオネル、フィネス、サイモンと同じ中等部へと飛び級進学をした。
その前にこれまでの経緯を説明しておこう。
一か月前、ラウたちがルミアへ戻った後、祝賀パレードが行われた。
勿論、そのパレードの主旨は本来『魔族討伐成功を祝うためのもの』であったのだが、ライオウや七武神などあの戦闘に参加した者だけでなく、世間での主旨は『ある一人の英雄の誕生』として捉えていた。
というのも……、
「…………まあ、実際、あの戦いではほとんどラウ君が一人で解決したようなものですし…………だから、諦めてください」
僕はあまり目立つとこれから学校に通いづらくなるからやめてほしい、と何度も断ったのだが、ライオウがそれでは王宮としても『示しがつかない』という理由でそこは頑として譲らなかった。
実は、このパレードの前にこの戦闘に参加した功労者ら全員に対し『叙勲式』が行われていた。
今回は国はおろか世界の平和を脅かす魔族の脅威を食い止めたという功労ということで『第二等叙勲』というかなり名誉な叙勲が皆に授与された。
まず、『叙勲』は『第五等叙勲』から始まり、第四等、第三等、第二等、第一等と続き、最高の名誉が『特等叙勲』となる。
そして今回の一番の功労者ということでラウはルミア史上初めての『特等叙勲』が授与されることとなった。
「ラウ・ハイドライトよ…………素晴らしい活躍でした。あなたがいなければこの国、いえ、この世界は魔族の脅威に晒されていたでしょう。ありがとう…………そして、おめでとうっ!」
「あ、ありがとう…………ございます」
ルミア王国には大規模な祭りや式典用に広い庭園を改造し建設された豪華な屋外コンサート会場のような施設があり、今回、『国民の皆にも知ってほしい』というミレーネ『たっての希望』により、そこで『叙勲式』が開かれた。
実際、国民は『新たな英雄の誕生を一目見たい!』ということで、ほとんどの全国民が『叙勲式』に集まっていた。
「ミレーネ、やりすぎ…………規模でかすぎ…………」
「ふふ…………これは魔物調査ことを隠していた時の罰だよ? ラウ君」
「うっ!?……………………ま、まいりました」
二人は小声でそんなやり取りをしながら、ミレーネ手から『特等叙勲』の証である『六芒星の真ん中に『S』の文字』が入った勲章を授与された………………その瞬間、
「「「「「「「うおおおぉおぉおぉぉおぉぉおお~~~!! 新しい英雄の誕生にばんざーーーーいっ!! ばんざ~いっ!!!」」」」」」」
「「「「「「新英雄ラウ・ハイドライト様、ばんざ~い!!!」」」」」
大観衆が一斉に新英雄の誕生に声を上げた。
「す、すごい…………まるで地響きだな」
ラウは後ろを振り向いて観衆たちを見ながら、まさに地響きのような物凄い歓声にドキドキする。
「ほら、ラウ君! こういうときは手を上げて観衆の声援に応えるのがこの儀式の儀礼ですよ…………」
「あ、そ、そうなんだ……………………こ、こう?」
ラウがスッと右手を上げる。
「「「「「うおぉぉぉおおおぉ~~っ! ラウ様が手を上げたぞ~~~!!」」」」」
「「「「「きゃああ~~!! ラウ様~~~~!!!」」」」」
先ほどよりも、更に一際大きい歓声が会場内…………だけでなく、その会場の外からも大きな歓声が起こっていた。
「…………これで、明日から学校に行けと?」
ラウが予想以上の観衆のリアクションに、案の定、明日からの学校が心配になっていた。
「ま、まあ、とりあえず静養も兼ねて十日ほど休みをいただけるので、その後からでしたら学校へ行くのも大丈夫だよ………………きっと」
と、ミレーネが僕の目を逸らしながら呟く。
「……なるほど。ミレーネ、君…………何も考えていないな?」
「テヘっ!」
すると、ミレーネはラウに『これぞ模範演技』とでも言うような『てへぺろ』を披露した。
何だよっ! それっ!!
そんな…………かわいいのされたら許すしかないじゃんっ!
僕は嘆息をついて「もう、なるようになれっ!」と半ば諦めた気持ちで心の中で呟いた。
――そして、それから一ヶ月後の現在
今、僕とミレーネ、ライオネル、フィネス、サイモンはミレーネの馬車に乗って中等部へと向かっている。ちなみに、中等部へ進学となってからはフィネスとサイモンも一緒に馬車に乗って通っている。
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あっ!
あと、僕は先週誕生日を迎え、七歳となりました。
特に代わり映えはないけど、その日は皆にサプライズで誕生日を祝ってもらったので、前世も含め、これまで生きてた中で最も豪華で充実した誕生日だった。
まあ、その話はまた後日にでも…………。
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――閑話休題
中等部は王都にある初等部からは少し離れ、森に近い場所に造られている。
わざわざ森の近くに建造した理由は、中等部からは実戦訓練が必修であり、ほぼ毎日がその時間にあてられる。その為、訓練する際に最も効率的な場所として森の近くである現在の場所に建造されたということだった。
とはいえ、設備や環境は初等部よりもさらに充実していた。例えば、校舎は二十四時間利用できるようになっており、その中の学食なども二十四時間いつでも利用できるようになっている。
また、ルミア王国の最新の『生活用魔宝具』も充実しており、そこも中等部の快適さにつながっていた。
ちなみに『生活用魔宝具』とは、地球いうところの『生活家電』的なことを意味する。
このような設備と環境が充実しているのも、ルミア王国では中等部からは冒険者ギルドに登録できたり、仕事をすることもできたり……と『ほぼ成人』に近い扱いを受ける。
そして、それは同様に『戦闘要員』としても扱われる為、国の戦力として鍛える意味でここまでの施設が用意されるというわけである。
――二十分後
馬車が中等部の正門に着いたので馬車から降りてすぐに教室へと向かおうとした。
すると……、
(きゃあっ! ラ、ラウ様よ!!)
(すごいっ! 本当に六歳なんだっ! 小っちゃ~い! かわいい~!!)
(あ、ミレーネ女王陛下だっ! 今日もまた神々しいっ!!)
(朝の登校時間にミレーネ女王陛下を拝見できるなんて………………神様、今日という日をありがとうございますっ!)
皆、ボソボソとだがけっこうはっきり聞こえるボソボソ声で、僕たちの顔をチラチラ見ながら呟いていた。
ラウは一週間前から中等部へと通い出したが、入学初日はもっとあからさまに皆、顔をガン見したり、声を出して騒いでいた。しかし、それだとあまりにも授業に響くのでライオウ・スピルデンがやってきて全校生徒の前で「できるだけ他の生徒と同じように接してください……」と言及し、生徒たちに頭を下げた。
それからは初日のような騒ぎは収まったが、今朝のような『はっきりと聞こえるが本人たちはボソボソ声と思ってやっている』という状況がここ最近の朝のトレンドとなっていた。
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「おはよう、ラウ君! 今日は私と実戦訓練だっ! よろしく頼むっ!!」
教室に入っていきなり声をかけてきたのは『リチャード・エイワス』…………初等部の運動会のとき、六年生の二百メートルリレーで他の生徒を圧倒したエイワス兄弟の兄だ。
「お、おはようございます。よ、よろしくお願い…………します」
「なんだ、まだ敬語を使っているのか? 年齢は違えど、同じ飛び級で同じ教室で学ぶ同級生なんだ…………リチャードで構わんよ、ラウ君っ!」
「あ、そ、そうですね…………でも、まだ、目上の人に敬語を使わないのはまだ少し抵抗があるというか、慣れてないというか…………」
「そうか。まあ、無理してまで『敬語を使うな』ということではないからな。まあ、でも、そんなかしこまった言い方は気にしないでいいからな」
「は、はいっ!」
ラウが中等部へ通い始めた初日からこのエイワス兄弟のリチャードとはすぐに仲良くなれた…………というより、最初に会ったときも今のような感じでリチャードのほうから積極的にフレンドリーに話しかけてきたのだった。
ちなみに弟のパーシー・エイワスも飛び級でこのクラスにいる…………が、最近はサイモンとライオネル、パーシーの三人でつるんでいるのをよく見かけ、今もその三人はパーシーの席の周囲でたむろっていた。
現在、中等部へ飛び級で進学した生徒たちは皆『飛び級クラス』という一つの教室で授業を受けている為、年齢がバラバラだったが、個人的にはすごく楽しかった。
というのも、先生以外にも自分たちより年上の先輩らが授業のサポートやアドバイスなどをしてくれるなど、さながら『教室に家庭教師がいっぱい』状態となっていたので、先輩全員とすぐに仲良くなれたし、何よりも僕が知らないこの世界のことや魔法のことなどをいろいろと教えてくれるので毎日が充実していた。
しかし、教室を一歩出ると僕たち『飛び級組』は既存の中等部の生徒からはあまり………………歓迎されていなかった。
その理由としては『まだガキのくせに生意気っ!』といったものがほとんどだった。
――お昼時間
普段の授業中や休み時間のときは他の生徒とは関わらないので問題ないのだが、一番、インネンというか、絡まれるのはお昼時間の『学食スペース』が多かった。
そして、今日もまた…………同じ奴らが現れる。
「よう~、『特等叙勲』の英雄、ラウ・ハイドライト様よ~…………いい加減本当のことを言ったらどうだ?」
学食でミレーネとライオネル、フィネス、エイワス兄弟と食事をしていると一週間前と同じ奴…………『上級貴族ベルベット家』の御曹司で、ぶくぶく太った巨漢の男『パウエル・ベルベット』とその取り巻き四・五人が僕らを囲んでいた。
「何がだ?」
ラウは一切喋りたくなかったが、無視をすると余計に面倒だったことが一度あったので、それ以来、とりあえず、返事だけは返すようにしていた。
「どうせ、戦場にただ居ただけで何もしていなかったんだろ? だって、どう考えてもあり得ないじゃん。六歳の子供が魔族をやっつけるなんて………………マジ、話盛りすぎ」
「「「「「ぎゃはははははは~~!!!」」」」」
パウエルが嫌味を告げると、周囲の金魚のフンたちが決まったリアクションのように声高々に笑っていた。
「あ、そうです、そうです。僕はただそこにいただけです…………ということで認めたから、もう早くどっか行って下さい……」
ラウはそう言うと、パウエルから顔を背け食事に戻ろうとした…………その時、パウエルが後ろからラウをいきなり殴ろうとする。
しかし、それにすぐに気づいたライオネルがフォークを持って、そのパウエルの殴ろうとした手の前にフォークを掲げる。
「ラ、ライオネル…………きさま~…………同じ上級貴族のくせに…………邪魔をするなっ!」
「いいえ、それはできません。僕はもうあなたと同じ上級貴族ではないです。だって、ほら…………僕、今、『第二等叙勲』頂きましたから……」
そう言うと、ライオネルは満面の笑みで左胸に付けている『六芒星の真ん中に『Ⅱ』の文字』が付いた『第二等叙勲』の褒章をチラつかせた。
「くっ……この…………」
「『第二等叙勲』を持つ上級貴族は私の家だけです…………つまり、君が気にするであろう『格』は断トツで僕のほうが上ということ。だから、言わせていただきますね………………これ以上、僕たちに絡むな、豚野郎っ! ここから去れっ!!」
「ぐっ…………こ、この…………」
ライオネルが本当にキツイ一言を言ってパウエルを激怒させるが、『格』を重んじる上級貴族としてはそこは逆らえない部分であり、また、そのテーブルにはミレーネもいた為、これ以上ここにいてはいろいろとまずい、と判断し、すぐに撤退するが、最後に…………、
「この借りは、来月の『クラス対抗実戦トーナメント』で晴らしてやるっ! 覚えとけーーっ!!」
と、見事な『遠吠え』っぷりを披露した。
「いや~、有名人は大変ですね~…………ラウ君?」
「はは……有名人だなんて…………」
「そうね……実際、今の生徒以外にも何人かラウ君に挑戦的に絡んでくる人、多いもんねっ!」
ミレーネが楽しそうにラウに言及する。
「そんな風になったのは、元はといえばミレーネが叙勲を…………」
「はいはい! その話はおしまいっ!! だって、あれは罰ですからね? ラウ君?」
「うっ…………ちくしょう」
ミレーネには今も頭が上がらないラウであった。
「まったくだ。お前は罰を神妙に受け入れろっ!」
ライオネルがミレーネに便乗して偉そうな言葉を吐く。
「うるさい。少し前のパウエルと同じことしてた奴に言われたくないです」
「い、言うな~~!!! 今さら、またほじくり返すなんて…………酷い奴だっ!」
「お前がミレーネに便乗して偉そうなこと言うからだよ……」
「くっ!…………こいつ~……」
と、ライオネルがラウの言葉にムカムカしていると、
「ほう、ライオネル。昔のお前は今のパウエルと同じ感じだったのか? その話、詳しく聞かせてくれ……」
リチャードがラウとライオネルのやり取りに反応し、ライオネルに迫る。
「あ、いや、その、何でもないです、何でも…………はは」
ライオネルが必死にリチャードを煙に巻こうとするが、
「はっはっは、ライオネル………………私はそんな簡単に煙に巻かれるような人間ではないぞ?」
「うっ!…………」
リチャードの鋭い眼光にもはや逃げられないと悟ったライオネル。
「さすがリチャード兄様ですっ!」
弟のパーシーがリチャードに拍手込みで尊敬の言葉を掛ける。
「…………」
その後、二人に囲まれたライオネルは暗い顔で二人に『パウエル時代のライオネル』の話をじっくり話すこととなった。
「うふふ…………楽しいね、ラウ君」
「まったく、中等部にラウが来てからさらに楽しさが増したよ…………さすがラウだな」
ミレーネとフィネスがラウをからかうように声をかける。
「もう…………勘弁してよ~、ミレーネ、フィネス兄さん…………」
と、僕は二人に呆れ顔で返事を返す。
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この世界に転生し、およそ七年。
まだ、僕の『第二の人生』は始まったばかりだが、すでに、いろんなことを経験し、そして、それから多くのことを学んだ。
魔物の討伐はまだ完了しておらず、むしろ、あれから姿を消したヴィルカルマと七天が今後どうなっていくのかでまた世界は大きな脅威に包まれるだろう。
でも……、
ただ、いまだけは……、
もう少し、このみんなと和気あいあいとした時間を大切にしたいと思っている。
僕がこの『成長速度999倍』の力をどう活かして人の為に生きていくのかわからないが、でも、少なくとも、今の仲間や出会った人々に危険が迫れば僕は全力で守るっ!
まずは、そこから始めようと思っている。
あと、いつかは『恋愛』もして…………みたいな~…………みたいなっ!
コホンっ!
まあ、そんなわけで。
僕の物語はまだ始まったばかりだから、また、この後、いつか活躍ができた時は、また改めて報告しますね。
とりあえず報告はここまで。
次、また報告ができるようなことがあれば、またその時にお会いしましょうっ!
ではまたっ!
完
これまで「自作自演……」を読んでくださった皆様……ありがとうございます。
これで「自作自演……」は終了となります…………がっ!
話自体はまだまだ続いていく内容ではありますので、また、書きたくなったら始めたいと思います。
でも、しばらくはお休みとし、いろいろと新作を書いてみるつもりです。
と、言いながら、すぐに『パート2』として話を始めるかも……?
まあ、そんな優柔不断な『てんやもん』はこれからも執筆活動を続けていく所存ですので、また、新作などを発表することがあれば、ぜひ、読んでいただければ幸いです。
約二ヶ月間のお付き合い、誠にありがとうございましたっ!!
2017年4月27日(金) てんやもん




