039「ラウ六歳(魔物調査) 反撃そして……」
「魔王の『器』となる人間、それは………………ルミア王国第十代国王 ハミルトン・キング・ルミアだ」
「ルミア王国第十代国王、ハミルトン・キング・ルミア…………」
確か、昔の……第十一代国王のウィンスター・キング・ルミアと第十二代国王でミレーネの父親のロマネシア・キング・ルミアがライオウや七武神と共にクーデターを起こす前の圧政を敷いていた国王…………。
「そうだ。今の平和の世になる前に自国民や他の国からも恐れられていた『無慈悲で獰猛な荒ぶる獅子王』という人間だ。その者の深き欲望は魔王となる『器』としては最適だ」
「…………」
なるほど。
確かに最適だろうな。しかし……、
「そんなこと……………………魔王の復活なんてさせると思うか?」
「…………どういう、意味だ?」
ナイータはラウの言葉に眉をひそめる。
「ああ、すまん。具体的に言うとだな……………………『僕がこの部屋から出られなくて、お前の手のひらでずっと踊り続ける』と思ったか?」
「な、に……?」
「いや~、ベラベラと聞いてないことまで喋ってくれてありがとう。おかげでお前らの策略がわかったよ…………」
「ふん、負け惜しみか? この隔絶された空間…………魔族独自の結界魔法『永遠の闇』はお前ら人間には絶対に破れないぞ? なんせ、この魔法はお前ら人間の魔法とは別の魔族固有の魔法だからな……」
「なるほど。『魔族独自の魔法』というのが存在するのか…………だが、お前はひとつ過ちを犯しているぞ?」
「何だと……っ?!」
ナイータのそれまで余裕の笑みの表情が消える。
「僕の能力をちゃんと把握していないという過ちだ…………解放っ!」
「!?…………なっ!!!」
ラウの言葉と同時にラウの身体が輝きだし、閉じ込められていた部屋とその周囲を取り囲んでいた闇が霞み消えていく。
光が収まると、ラウはクシャリカ王国の王宮の間に姿を現した。
王宮の間にはかすかにあの『商人』の顔に似ている角を生やし青い身体の色をした男…………おそらく、さっきまで話していたナイータという魔族だろう…………そいつが冷や汗を掻きながら立っており、その後ろには玉座に棺桶がひとつ、そして、その下に七つの棺桶が置かれていた。
「な、なぜ、人間のお前が……………………ま、魔族魔法を?」
目の前の状況についていけてないナイータが呆然としながらラウに問い掛ける。
「そんなの教えるとおもうか? あんた、人間舐め過ぎだよ」
ラウが冷徹な眼差しを向ける。
しかし、以前のような暴走状態ではなく、怒りと冷静さのギリギリの均衡を保った状態を維持していた。
≪マスター…………二回目の力の行使で、もうそこまで怒りと冷静さの均衡を維持できるとは、さすがです≫
僕は今、村を襲った仮面の男の時と同じように基本能力をフルコンプリートした状態にしている。
その状態で前の暴走状態にならないよう、コントロールできている自分に驚きつつも、意外と対応できている自分にホッとしていた。
「お、お前、人間じゃ……ないのか……?」
驚愕した声でナイータはさらに質問をぶつける。
「そうだな…………確認してみよう、『窓』っ!」
ラウは『窓』を開く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
名前:ラウ・ハイドライト
年齢:六歳
階級:ルミア王国傘下ハイドライト村の
下級貴族の三男
[基本能力]
体力:999
敏捷性:999
攻撃力:999
防御力:999
魔法力:999
魔法量:999
知力:999
[魔法]
治癒魔法/1……[詳細]『浄化回復』
捕縛魔法/1……[詳細]『締まる鎖』
認識阻害魔法/1……[詳細]『不可視の世界』
火炎魔法/1……[詳細]『火炎放射』
自白魔法/1……[詳細]『真実の言質』
[特殊魔法]
偽装
窓
[亜力 ※魔族だけに使える力]
魔光の矢
[魔族魔法]
結界魔法/1……[詳細]『永遠の闇』
[スキル]
なし
[武道]
ルミア王国一般武道/習得
暴虐のマルス体術/習得
拳聖のロイ体術/習得
ライオウ・スピルデン体術/習得
[言語]
ルミア語/習得
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ふむ。『ルミア王国傘下ハイドライト村の下級貴族の三男』…………どうやら人間みたいだな」
「な、ななな、な、なんだっ! それはっ?! 基本能力がすべて『999』って何なんだよ、それっ…………?!」
魔族ナイータが『窓』のスタータス値を驚愕した様子で見ながら問いかける。
「ほら、[魔族魔法]欄にちゃんと『永遠の闇』て書いてあるでしょ? だから使えるの」
「い、いやいやいや、その前に質問に答えろよっ!!」
「いやです」
「はっ?」
「なぜなら……僕はあなたをここで殺すので説明は不要だからです」
そう言うや否や、ラウはナイータの目の前から消え、一瞬でナイータの背後に移動し腕を掴んだ。
「な…………っ!!」
「火炎魔法……『火炎放射』」
ラウが魔法を発動した瞬間、腕を掴まれたナイータが豪炎で燃え上がる。
「うぎゃあぁぁぁあああ~~~っ!! な、なんだ、この馬鹿でかい……炎と熱量ばぁぁあぁあああああああ…………っ!!!!」
ナイータはあっという間に炎に飲まれ、そして灰と化した。
「ふう…………これで魔王復活も大丈夫そうだな」
ラウがホッと息をついたその時……、
<なるほど…………中々、面白い能力ですね>
王の間に禍々しい雰囲気を纏った声が響いた。
「だ、誰だっ……!!」
<私は君が聞いているもう一人の魔族…………名はヴィルカルマ、魔王様の『右腕』として仕えてきた者だ>
「ヴィルカルマ……魔王の右腕……」
<君が以前、村で倒した仮面の男は私が作り出した『人造魔族』でね、このクシャリカ王国の……確か、騎士団長と言ってたか、まあ、そこそこの実力を持つ人間を私が魔族に変えたものだ>
「人造……魔族…………」
このヴィルカルマというこの魔族…………『人間を魔族に変える』ことができるのか? しかも、話している雰囲気からするとさっきのナイータとは比べ物にならないくらい……………………強い。
『魔王の右腕』は伊達じゃない、ということか。
「お前はさっきナイータに対して『窓』という見たことの無い魔法を使ったな……それに、人間であるはずなのに魔族固有の結界魔法『永遠の闇』も解放することができた…………実に興味深い男だ」
「…………」
ラウは気配を探るが王の間に人の気配はしなかった。
「……無駄だ。私はそこにはおらぬ。すでにそこからは離れ別の場所からお前に『思念』を使って会話している。残念だったな…………フフフ」
「まったくだ」
ラウはとりあえずヴィルカルマという魔族と話すことに専念することにする。
<さて……とりあえず、お前の能力は今、見た限りではまだはっきりと把握できていないが、少なくともあの『窓』という見たことの無い魔法……あれを晒したのは失態だったな。ナイータを倒すつもりだったから大丈夫だと思ったのだろうが、まだまだ…………甘いようだな>
「ぐ……」
悔しいが、ヴィルカルマの言うとおりだった。
<まあ、それでも今わかっていることはお前の基本能力が『999』という数値を示していたこと、それと、『相手の魔法を何らかの方法で手に入れることができる能力』を持っていると見た>
「…………」
<なるほど、無言か。では、私の読みは間違いなさそうだな……フフフ>
「……ああ、お前の言うとおりだ。それが僕の能力だ」
<ほう、あっさりと認めるのだな……>
「僕とお前じゃ、駆け引きの経験がまるで違うと感じたからな。下手に隠しても意味がないと思っただけだ」
<ふむ………………………………お前、面白い男だな>
「??……面白い? 僕が?」
<ああ、そうだ。フフフ…………実に興味深いよ>
ヴィルカルマは本当に楽しそうに笑っている…………ように聞こえた。
<私には珍しいことだが、お前とは一度ゆっくり話がしたいと感じる……>
「こっちはそんなつもりはない」
<まあ、そうだろうな…………>
ヴィルカルマは一瞬、黙ったがすぐに話を続ける。
<……さて、ラウ君。君に良い事を教えてあげよう。魔王はまだ復活はできないが私はすでに『ある者たち』を『人造魔族』として蘇生させた>
「?!…………蘇生?」
<お、察しがいいな、さすがだ。そう、この国の中にいる現時点での最強の者たちをすでに蘇生させている。その者たちの名は……………………『七天』>
「『七天』……?! そ、それって…………」
<そう…………ルミア王国の第十代国王ハミルトン・キング・ルミアの忠実なる剣、『七天』だ>
『七天』…………それは第十代国王ハミルトン・キング・ルミアの忠実なる部下であり、当時のルミア王国『最強の剣』である。
「じゃ、じゃあ、あの七つの棺桶の中身は…………」
ラウが王の間にある七つの棺桶を指差す。
<もちろん、もぬけの殻だ>
「そ、そんな…………」
<ふ、動揺してるな? いいぞ…………さて、ラウ君、更に良い事を教えてあげよう。その『七天』に私は『ここに向かっているライオウや七武神を殺して『灯火の再燃』を持って来い』と命令してある>
「なっ……?!」
ラウが青ざめた顔でヴィルカルマの言葉にショックを受ける。
<ナイータがお前を誘拐した際、書き置きをしてあってな……そこには『一週間後にクシャリカ王国に来い』と書いてあった。そして、今日がその一週間目となる。ちなみに、お前が結界魔法にいた間もちょうど一週間…………それがどういうことを意味するか、わかるか?>
「ま、まさか…………っ?!」
<そうだ。ライオウたちが到着するのは……今日。しかも、おそらく……今、奴らはちょうど国境に差し掛かった頃だろう。そして、その国境沿いでは『七天』が待ち構えている、という算段だっ!>
「く……っ!!」
ラウはヴィルカルマの話を聞くや否や、王の間から飛び出していった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「フッフッフ…………甘いですね~、ラウ君」
ラウが消えた王の間の玉座には、青い身体と角を二本生やした長髪の男性が座していた。男の名は…………ヴィルカルマ。
「魔族隠蔽魔法……『潜在透過』…………さすがに気配を完全遮断し、尚且つ、身体が透過する私を見つけることはできませんでしたか…………まだまだですね~」
と、ヴィルカルマはくつくつと嗤う。
「しかし、彼の能力…………実に興味深い。しかも、見た目は人間の六歳のくせに年相応でない言葉遣いや発言、そして思考…………あれは本当に人間なのか? それとも人間は人間でも『特殊な人間』ということなのか? いや~、興味は尽きませんね~……クックック」
男はまたも愉快に笑う。
「さて…………ラウ君が彼ら『七天』が待ち伏せしている国境沿いに間に合い、ライオウたちと合流することができるのか、楽しみですね~…………それに、ラウ君の実力ももう少し見てみたいですし…………とりあえず、私は特等席でゆっくりと見学させていただきますかっ! いや~、楽しくなって参りましたね~……」
そう言いながら、ヴィルカルマもまた王の間から出て行った。




