036「ラウ六歳(魔物調査) ルミア王国へ帰還/襲撃」
「よし! すぐに出発するぞっ!!」
マルスはそう言うと、てきぱきと動き始めた。
普段であれば、一番ノソノソと歩いて邪魔な感じなのだが、だからこそ、今、マルスの中では緊張感でいっぱいなんだ、と皆が理解していた。
「すみません、この魔宝具、ルミア王国で管理させていただいてもよろしいでしょうか?」
マルスは村長に魔宝具『灯火の再燃』を持ち出しこちらで預かる旨を話す。
「もちろん! 今の話を聞いてはこの魔宝具は私どもにはあまりあるものです。ぜひ、ルミア王国にて管理をお願いしますっ!!」
と村長もホッとしながら魔宝具をマルスに手渡した。
「よしっ! 準備ができたようだな…………では、すぐに出発だーっ!!」
「「「「「は、はい……っ!!」」」」」
こうして僕たちは村からルミア王国に向けて出発した。
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――出発してから六時間後。
あたりは暗くなり始めていた。
村から馬車でルミア王国まで向かっているのだが、馬車でもルミア王国までは約一週間はかかる。
その為、そろそろ野宿をする為のキャンプの準備をする必要があった。
「マルスさん、そろそろキャンプの用意したほうがいいんじゃないっすかね?」
ゾイドがマルスに尋ねる。
「そうだな。ゾイドにしては珍しく真っ当なことを言われたな。では、ここでキャンプを張るか。お前ら準備しろっ!」
というマルスの掛け声で僕たちはキャンプを張る為のテントの準備をしようとした…………その時、
「うわああ~~~っ! だ、だれか助けてくれ~~~っ!!!!!」
助けを呼び叫ぶ男の声が聞こえた。
すると、マルスとゾイド、アーカムが反応しその声の方向に向かった。
僕やシャンディ、メルシーも三人の後を追う。
「や、やめろ~~……だ、誰か助けてくれ…………」
三人の後を追うと、そこには豪華な野宿用のキャンプの横で、大きな蟻の魔物数匹に囲まれている『商人っぽい男』を見つけた。
マルスがすぐさま魔物に飛び掛り、一瞬で三匹を屠った。
そして、残り五匹の魔物はゾイドとアーカムによって屠られ、一瞬で
魔物を撃退した。
「おい、大丈夫か、あんたっ! ケガはないかっ?!」
マルスは商人風の男に声をかける。
「あ、ああ……大丈夫…………ていうか、あ、あ、ありがとう~~~~助かりました~~~~っ!!!」
と、男は涙をボロボロ流しまくりながらお礼の言葉を叫んだ。
男は落ち着いた後に改めて説明をした。
「俺は商人なんですが、クシャリカ王国で取引を終えてルミア王国に帰る途中でした。いつもはこんな山道は魔物が出る確率が高いので使わないのですが、今回、ルミア王国で急ぎの商談があった為、近道であるこの山道を使ったら…………魔物に襲われました」
と、商人はガクッとうな垂れた。
「魔物に教われた時、ダメだ…………と死ぬ覚悟をした時、あなた方が現れたのです…………本当に、本当にありがとうっ!」
そう言って商人はもう一度深く頭を下げた。
「いいってことよ。困った時はお互い様だ……っ!」
マルスが気を遣って商人を励ます。すると……、
「あの……せめてものお礼として…………もしよかったら、ぜひ、私のキャンプを使っていただきませんか?」
と、商人は豪華なキャンプテントを自分たちに使ってもらうよう言ってきた。
けっこう、儲かっている人なのだろう。普通のキャンプ用のテントとは素材から大きさ、広さまで違っており、また、中の寝床も野宿用のキャンプテントのくせにベッドが用意され、しかもその数は七つもあった。
「前にお客さんから安く仕入れた大したことのないテントですが、どうせ、一人では持て余す代物だったので、よかったらお使いください。私が夜はずっと見張りをしています……」
と、商人は少し自慢なところも入れつつ、夜の見張りまで買って出た。
「いや、正直、あんな大きな魔物に襲われたのは初めてで、ちょっとここで眠るのは無理かな……と…………」
という眠れない事情がある、とのことで見張りを買って出たとのことだった。
「でも、魔物が現れたらすぐに起こしますからっ! その時はまた退治をお願いしますね…………」
と、言ってまた深々と頭を下げた。
僕たちは「ラッキーっ!」と思いながら、そんな気持ちが出ないよう、深々と頭を下げ、商人に礼を言った。
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「いや~、やっぱ良い行いをすればちゃんとその見返りはあるもんなんすね~っ!」
ゾイドが風呂の湯船につかりながら呟く。
「馬鹿やろうっ! 俺の日頃の行いの賜物だっ! ありがたく味わえよっ!」
先に湯船に浸かっていたマルスがゾイドに檄を飛ばす。
「うっす!!」
すると、身体を洗っているアーカムが、
「…………マルスさん、マジ、リスペクト、マジ、リスペクトっ!」
アーカムなりの感謝の言葉をマルスにボソッとかけていた。
「こういうこともあるんですね…………なんか旅をしている感じがして楽しいですっ!」
ラウがマルスにそう言いながら湯船に入ってきた。
「おっ! 言うじゃねーか、ラウ…………まあ、本当ならお前にはゆっくりと安心して参加できるレベルの低い依頼からやってもらって冒険者の楽しさをもっと味わってあげさせたかったんだけど、な…………すまねー」
と、マルスが頭を下げてきた。
「そ、そんな気にしないでくださいよ、マルスさんっ! 僕も昨日のあの仮面の男との件でいろいろと目標ややるべきことが見つかったんですからっ! 頭を上げてくださいっ!!」
ラウはすぐにマルスに頭を上げるよう言う。
「……そうか、わかった。それじゅあ、ラウが今後、力の制御の訓練に俺の力や皆の力が必要なときは遠慮せずに言えよ。力になるから……」
「そうだぞ、ラウっ! すぐに言えよっ!!」
「うんっ! 僕も絶対に力を貸すからねっ!」
三人がまっすぐに僕を見つめながら力強く言葉をぶつける。
「ありがとうございますっ! 皆さんっ!!」
と、僕は三人に頭を下げた。
「……ところで、ラウ君?」
「…………えっ?」
すると、マルスの口調がいきなり変わる。
「君、何だか昨日からメルシーと良い感じになっているようだが…………お前、十七歳年上のメルシーが好きなのか?」
「はっ?! な、何を言って…………っ!」
「そういやその件がありましたね、兄貴っ!」
「ちょ……っ! ゾイド、お前…………っ!!」
「なるほど、マセてるね、ラウ君。早熟、早熟~ぅ!!」
と、三対一の構図が男湯で出来上がっていた。
――一方、女湯では。
「……ところでメルシー? ちょっといい?」
「……えっ? シャンディ……さん?」
シャンディの口調がいきなり変わる。
「あんた、何だか昨日からラウ坊やとだいぶ良い感じになっているようだけど…………大丈夫?……………………十七歳差は?」
「はぅっ……!! ど、どうしよう~……シャンディさ~ん…………」
と、『外見と見た目のギャップ』によるラウの被害者となったメルシーがシャンディに悲痛な想いを訴えていた。
「はぁ~、こりゃ…………重症だわ」
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野宿だというのにお風呂が男湯と女湯で両方付いている豪華キャンプテントで風呂から上がったメンバーはその後、商人が腕によりをかけて作った料理を堪能していた。
「う、うまいっ! うますぎるぞっ!! 商人、あんたすげーなっ!!!」
マルスが料理のあまりのうまさに叫び、他の皆も同じように舌鼓を打っていた。
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「ふ~食った、食った…………」
料理を食べ終えた皆はしばらく食べ過ぎて動けないでいた。
そして、お腹が一段落するとすぐに睡魔に襲われる。
「あ、皆さん、私がしっかり見張りますのでそのままベッドでお休みになってください」
と、商人が何から何まで至れりつくせりしてくれる。
「な、何だかいろいろと頂いたので見張りくらいは我々も交代で…………」
「何を仰いますっ! あなた方は私の命の恩人ですっ!! どうか、私のわがままとしてそのままゆっくりお休みになってくださいませっ!!」
と、マルスが見張りの交代くらいはこっちもやりますと告げるが逆に、命の恩人にお返しをしたい、というような勢いで返事を返され、同時に、また、深々と頭を下げられた。
「わ、わかりました、わかりましたから、頭を上げてくれよ…………まったく」
結局、マルスは商人の感謝の熱意に折れ、皆で商人の好意に感謝のお礼をし先に寝床に入った。
皆は寝床に入るや否やすぐに寝息を立て始めた。
昨日、あんなことがあり気が張っていたこともあって相当疲れていたのだろう………………という理由で皆はすぐに寝たのではなかった。
「いや~、それにしてもよく効く魔宝具だな~………………この『強制催眠香』は…………クククッ」
商人がネットリと嫌らしい笑みを漏らしながら、料理に仕込んだ『強制催眠香』の効能に感心する。
そう。
マルスたちはこの『強制催眠香』という強力な『眠り薬』の魔宝具を料理に仕込まれ、眠らされていたのだった。
何の理由で?
それは…………、
「さて………………こいつがいると我々の計画が潰れるからな。能力的に殺せない以上、こいつを『隔離』する必要があるな…………」
商人はそう呟きながらある『男』の前に近付いた。
「では、君には先に舞台から退出してもらいましょうか……………………ラウ・ハイドライト君?」
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――次の日。
朝、起きると商人の姿とラウの姿がなく机には一枚の書き置きが残されていた。
『ラウ・ハイドライトを預かった。私はお前の知っている魔族の一人だ。魔宝具『灯火の再燃』を持って一週間後にクシャリカ王国の王の間に来い』
一旦、このまま『自作自演……』を書き続けていくことにしました。
新作の『イージーモード・ライフ』その後に書き続けたいと思います。
m(__)m




