035「ラウ六歳(魔物調査) 魔宝具(まほうぐ)、魔族、そして……」
とりあえず、今日中に何とか投稿できたー!
「はい…………というわけで、こっから本題に入ります」
さっきまでのシャンディとメルシーの『きゃっきゃうふふ』のガールズトークを、マルスが強引に間に入って止める。
「さて……これまでの半年間の調査では常に後手に回り、詳細が掴めなかった『魔物の組織的襲撃』はとりあえず、ラウが倒した『仮面の男』が魔物を統率していたことがわかった。本来、その仮面の男を倒した今、魔物調査の依頼はこれで完遂となるのだが、仮面の男が言っていた言葉…………『自分は魔族だ』という言葉…………今のところ、これが事実かどうかは調べようがない。だが、事実である可能性は…………高い」
「「「「「…………魔族」」」」」
僕以外の皆が『魔族』の言葉に苦悶の表情を並べる。
一応、僕も一歳の頃にこの国の歴史書や神話なども一通り勉強したので概要は理解している。
この世界では現在、『人間』と『魔物』はいるが『魔族』は『今は』存在していない。
しかし、大昔…………今から千年ほど前にはこの地上に魔族が存在していたという。
しかも、魔族だけでなく、魔族を統率する『魔王』も存在していたらしい。
しかし、そのことが記されているのは『神話』という、地球で言うところの『おとぎ話』に近いレベルの作り話に記述があるのみで、多くの一般人からすればただの『迷信』に近い程度でしか認識がない。
かくいう僕もその認識であり、他の者も同じ認識である。
だが…………、
「魔族…………昔、兄貴が話していたことが本当に現実に…………」
ゾイドがそう呟き、
「ま、まさか、マルス、それって、もしかして魔族だけじゃなくて…………」
シャンディがマルスに質問をする。
「……ああ、もしかしたら魔族の王…………『魔王』も復活している可能性があるかもな」
「!! そ、そんな…………ウソでしょ」
マルスがシャンディの質問に即答し、シャンディはその言葉に愕然とする。
他の者たちは彼らの反応がどういう状況なのか理解できていなかった…………が、僕は前世が地球で生きていたのでそんなファンタジーの話は映画や小説などで見識はあるので、ある程度、理解はできる。
まあ、あくまでフィクションの作品の世界観という理解程度だが……。
「それともう一つ…………この村にある『魔宝具』の件だが、さっき村長の話を少し聞いたが、これはその『魔王』と関係がある可能性が出てきた…………村長、皆に話してくれるか?」
「はい……皆様、初めまして、私はこの村の村長で下級貴族のベルガモット・マルコルヌと言います。話の前に改めて…………村を助けてくださり本当にありがとうございました」
村長が深々と頭を下げ、そして話を続けた。
「今、マルスさんからお話がありましたとおり、この村にある『魔宝具』がもしかしたらその『魔王』に関係するというお話ですが…………まず、この…………魔宝具、『灯火の再燃』ですが……」
と、村長のベルガモット・マルコルヌがその魔宝具『灯火の再燃』を取り出す。
それは、地球で言うところの『石油ランプ』のような形をしていた。
ちなみに火は点いていない。
「この魔宝具、『灯火の再燃』の効力は…………『死者を冥界から現世に呼び戻す』というものになります」
「「「「「し、死者を冥界から現世に呼び戻す…………っ?!」」」」」
マルス以外の皆がその効力に驚愕の顔を示す。
そりゃ、そうだ。
だって、『死者を冥界から現世に呼び戻す』って、つまり…………生き返らせるって意味だと思うし。
となると……、
「仮面の男は何を生き返らせようとしていたんだ?」
ラウが誰に言うでもなく独り言のように呟く。そしてマルスがそのラウの言葉に反応する。
「おそらく、魔王だろうな……」
「魔王っ?!…………で、でも、今は封印されてるんだから生き返らせる前にそもそも封印が解かれなければ意味ないと思うし、そもそも、封印されている中では生きている可能性だってあるんじゃ…………」
「本来なら、な……。だが、その魔王の封印は一度解けたことが…………あったんだ」
「「「「「えええええ~~!!!」」」」」
全員が一斉に叫ぶ。
「まずその前に皆の認識を合わせておこう…………現時点で魔族と魔王の話を知っているのはゾイドとシャンディだけだからな」
「「「魔族と魔王の……話?」」」
「そうだ……」
そう言うと、マルスは一度大きく深呼吸をし…………話し始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「今から約二十年前…………まだ、俺が『七武神』としてロマネシア王政を手伝っていたころ、ある世界を揺るがす重大な事件が起きた。それは…………魔族と魔王の封印の力が弱まっているというものだった」
「「「「封印の力が…………弱まっている」」」」
「そんなことがあったのかっ!」と、マルスから以前に話を聞いているゾイドとシャンディ以外の皆が皆、心の中でそう叫んでいるような顔をしていた。
マルスは淡々と話を進めていく。
「当時、ライオウと七武神全員でその魔族と魔王の封印されている…………『カトラの聖域』へ向かった。すると、確かに魔族と魔王の封印が弱まっていたんだ。そこで、七武神の一人で唯一、魔族、魔王の封印の魔法を掛けることのできる『ジェシカ・カトラ』という魔法使いが封印を元の強度に戻しその時は事なきを得た…………かに見えたが、実は、魔族の何人かは弱まった封印のタイミングで自力で封印を解き、俺たちがそこに駆け付ける前にすでに地上に現れ姿を消していた……」
「えっ…………そ、それって、つまり…………魔族は二十年前に何人かはすでに地上にいたってことですか?!」
メルシーがマルスに問いかける。
「ああ、そういうことだ…………。そして、俺たちはその封印を解き、地上に消えた魔族を探し出した。その際、事が事であった為、ルミア王国以外の四カ国にもその協力を依頼した。そして…………俺たちは地上に消えた魔族を追い詰めた……」
「ち、ちなみに……その地上に消えた魔族は何人だったんですか?」
今度はラウがマルスに質問をする。
「五人だ…………しかし、俺たちはそこで五人中三人を葬ったが、残り二人を仕留めることができず逃がしてしまった」
「もしかして、その一人があの…………仮面の男なんですか?」
「いや、たぶん違うと思う。理由はこの逃した二人の実力はかなりのもので俺たち七武神全員で何とか倒せる可能性ができる、ほどの実力だった」
「七武神全員でも……」
「確実に仕留められないって…………」
アーカムとメルシーがマルスの言葉に絶句する。
「だが、さすがに英雄剣士ライオウ・スピルデンがそこに入れば仕留めることは何とかできた……が、隙を突いて二人が逃げたので俺たちは追いかけた。すると二人は姿を消したのではなく…………『カトラの聖域』に戻り、魔王の封印を解いたんだ。
「「「「「ええええ~~~っ!!!」」」」」
「おそらく魔王の封印がちゃんと元に戻っていなかったのだろう…………二人は魔王の封印を解いた後、俺たちが魔王を目覚めるのを食い止めようとするのを防いでいた。しかし…………魔王は動かなかった。魔王は封印の中で永遠の眠り…………死んで、いたんだ」
「えっ!? 魔族は生きていたのに…………魔王は死んでた?…………何、それ」
メルシーが意外だと言う風に言及する。
「ああ、本当にな…………ただ、今思えばそれは『力尽きて死んだ』というよりも『意図して死んだ』という風に感じた」
「えっ? どういうこと?」
ラウがその説明に反応する。
「生き返らない魔王に最初はショックを受けてた魔族の二人だったが一人がボソッと呟いたんだ…………『そうかっ! 冥界で復活する為の力を蓄えていらっしゃるのか』……てな」
「冥界で……力を蓄える? 冥界ってつまり…………死者の国ってことだよね?」
「ああ、そうだ。ラウよく知ってるな~……」
「……え、ええ、まあ」
まあ、ファンタジー系の小説ではよく扱われるものだしね。
「それで二人は『カトラの聖域』から離脱し今度こそ本当に姿を消したんだ…………俺たちも当然追いかけたが二人を見つけることはできず、その後、他の四カ国とも協力し厳戒態勢を敷いて捜索したが、それでも二人を見つけることはできなかった」
「……ということは……今も……」
ラウが尋ねる。
「ああ、おそらくどこかで身を潜めて生きているだろう…………あるいは」
「?……あるいは?」
「あるいは……………………どこかの国がその二人ないし一人を匿っている可能性も考えられる」
「ま、まさか……っ! そんな人類の脅威を匿うって何の目的で…………っ?!」
メルシーが信じられないと言う顔をしてマルスに答えを求める。
「世界を支配するための『武器』として、だ」
「!!……そ、そんな……」
メルシーがショックを受ける横でシャンディが呟く。
「ありえる話だと思うわ。特に、可能性……一番臭いのは……………………クシャリカ王国」
「……そうだ」
皆、シャンディの言葉とマルスの返事に驚愕する。
「ライオウの今回の魔物調査依頼の本当の目的は…………姿をくらました残り二人の魔族が関与している可能性とクシャリカとのつながりをみつけること、だったのさ」
今回の調査の真の目的を聞いた皆は思っていた以上に深刻な依頼だったとショックを受けていた。
「まあ、魔族の痕跡を確認できなければ特に言う必要はないと思ってたし、お前らに話したら……まあ……ショックを受けるだろうな~って…………」
「「「「当たり前じゃないですかっ!!!」」」」
チームの皆さんから総ツッコミを受けるマルス。
「……とは言っても、この事を調査の前に言われていたら今みたいに気楽にツッコむようなテンションは難しかったかもね」
メルシーが呟く。
「まあ、俺とシャンディは知っていたから、ぶっちゃけ、皆に悟られないよう装うのが大変だったよ、なあ、シャンディ?」
「うそつけ。お前は何も考えていなかったろ? 私はお前がつい漏らすんじゃないかってずっとヒヤヒヤしっぱなしだったよっ! アホっ!!」
ゴン!
シャンディにグーで殴られる、殴られ役のゾイドであった。
「……でも、話してくれてありがとうございます、マルスさん」
そう言ってマルスに頭を下げるアーカム。
「……まあ、本当は『魔族』が関係なければ……この話をしないままで調査が終わっていれば一番良かったんだけどな…………ハハ」
マルスがそう言って笑うが、すぐに顔がキッと厳しくなり、
「だが、これからは…………もう俺たちだけじゃ対処できない最悪な事態になる可能性が出てきた、ということだ」
と、強い口調で告げる。
「そして、この魔宝具だが……」
そう言ってマルスがもう一つの問題である魔宝具『灯火の再燃』を手にし、懸念の言葉を口にする。
「『魔王が冥界で力を蓄えている』という話が本当なら、おそらく、魔王を現世に呼び戻す為にこれが必要だということなのだろう……」
ここで、マルスは少し考え込み、そして、意を決したようにマルスは皆に向かって声を大きく張り上げた。
「明日、ルミアに戻るぞっ!」




