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自作自演の無双能力者  作者: てんやもの
第三章 ルミア王国魔物調査/クシャリカ王国編
34/46

033「ラウ六歳(魔物調査) 力持つ者」



 ラウはマルスと離れ、一人、うつむきながら村を歩いていた。


「僕があの魔物の群れや仮面の男をやっつけ……………………いや、蹂躙したのか」


 あの時、僕は仮面の男が小さな女の子を愉悦を感じながらいたぶる様を見てそこから記憶を無くした…………たぶん、その時、僕はキレたのだろう。


 でも、記憶が無くなるほどキレるなんて前世も含めて一度も経験が無い僕はいまだに信じられないが、しかし…………それが事実であることには変わりない。


 そう考えた時、僕は怖くなった。


 僕が女神セイラからもらった『成長速度999倍』という能力が怖くなった。


「こんな強大過ぎる力を僕が持ってはいけない……」


 そう思った時……、


≪そんなことはありませんよ、マスター……≫

「!?…………ビショップっ!」


 脳内ガイドアバターのビショップが声をかけた。


≪前にもお話しましたが基本能力をフルコンプリート状態にするということは絶大な力を有することになります。以前は私の声が届いたので『自動調節機能オートレギュレーション』でマスターの状況に合わせ能力を自動調整しておりましたが、今回、マスターは怒りのあまり我を忘れ『暴走状態』となった為、一度、設定した『自動調節機能オートレギュレーション』も強制解除されました≫

「や、やっぱり僕は怒りで我を忘れて暴走してしまったのか……」


 ラウはまた落ち込んで顔を伏せる。


≪マスター…………マスターの能力は絶大です。故に、そんな『力持つ者』には『力の制御』というものが求められます。今回の暴走の件もそうですが、『力持つ者』が一歩間違えれば、その力が『不幸を招く力』にもなります。まあ、今回の場合はすぐに暴走状態から抜け、罪なき者が不幸になることはありませんでしたが、それはただ『運』が良かっただけということもご自身で感じられてるでしょう≫

「…………ああ」


 まさにビショップの言うとおりだった。


 僕の姿を見てメルシーがあそこまで酷く怯えるほど僕の力は圧倒的だったのだろう。


 あの時、そんな制御できない暴走状態でマルスの声が無かったら、と思うと今でもゾッとする。


≪……ですが≫


 自分のやったことの重大さを思い知り落ち込んでいるとビショップが言葉をかけた。


≪ですが……今後、その力を制御するためにきちんと向き合うことができれば今回のような暴走状態は無くなるでしょう。力を恐れるのではなく『理解』するのです。これからは基本能力のステータスを1から999までいろいろと試し、いろんな状況での『ステータスの最適値』を自分で見つければ、本当の意味での『成長速度999倍』という能力を最大限に活用できるでしょう≫

「『ステータスの最適値』……」

≪そうです。『ステータスの最適値』と『自動調節機能オートレギュレーション』をうまく、タイミングよく、利用・制御することができればもはや敵なしの強さと、自分が力に溺れることも無くなるでしょう≫

「力と向き合う、理解する、ステータスの最適値を見つける…………わかったよ、ビショップ! ぼ、僕、やってみるよ」


 ラウはビショップの言葉にさっきよりも少し気が楽になったのか笑顔を見せた。


≪大丈夫です。マスターならきっと『成長速度999倍』の力をきちんと物にできます。ちなみに…………先ほどはその力は『不幸を招く力にもなる』と言いましたが、同時に使い方を間違わなければ『幸せを招く力』になります。そして、今回、マスターが経験したことが後に活きて『幸せを招く力』として正しく利用していけると確信しておりますっ!≫

「ありがとう、ビショップっ! 僕、頑張るよっ!!」


 ラウは完全に笑顔を取り戻し、この絶大なる力『成長速度999倍』と向き合う覚悟を決めた……………………その時、


「あっ! お兄ちゃ~~んっ!!」


 目の前から歩いてきた同級生くらいの女の子に声をかけられた。


 よく見ると、その子はさっき助けた女の子だった。


「さっきは助けてくれてありがとうっ! あたし、すごく怖かったけど、お兄ちゃんが守ってくれたから後からは怖く無かったよっ!」

「えっ? 怖くなかった? あの時の僕、怖くなかった?」


 ラウは覚えてはいないが皆から話を聞いているので、女の子にもう一度確認をした。


「??…………全然。だってあたしのこと助けてくれたし、それに、あたしがいじめられていることにずっと怒ってくれてたもん。お兄ちゃんはあたしのヒーローだよっ!!」

「ヒ、ヒーロー? ぼ、僕が?」

「うんっ!」


 僕は泣きそうになった。


 さっきまでは、メルシーに怯えられる程、怒りで我を忘れた自分に対し、深い後悔しかなかったが、しかし、あの助けた女の子から『ヒーロー』と言われるとは思っていなかったので思わず、泣きそう……ではなく、泣いてしまった。


「??…………おにいちゃん? 具合でも悪いの? お医者さん行く?」


 女の子が心配そうに顔を眺める。


「あ……う、ううん、大丈夫…………大丈夫だから。これは……うれし、涙……だから」


 そう。


 僕は助けた女の子の言葉に救われたことと、前世からここまで人に感謝されることなんて一度もなかったことを思い出し、涙を止めることができなかった。


「あ、そろそろ行かなきゃっ! じゃあね、お兄ちゃん、ばいばーいっ!!」

「……ばいばい」


 そう言うと女の子は、ニッと笑顔を見せ、元気良く走り去って行った。


「よしっ! 自分の能力をこれから『幸せを招く力』として利用できるよう、完全にマスターしてやるっ!」


 僕は元気を取り戻し、『成長速度999倍』の力の制御に取り組む覚悟を決めた。



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