032「ラウ六歳(魔物調査) 蹂躙……そして」
「そ、そんなバカな……! 無傷だとっ!?」
ラウは仮面の男が村人へ放ったものより大きな火炎魔法『火炎放射』を手で軽く弾き、それを目の当たりにした仮面の男が驚愕な表情を浮かべる。
「終わりか…………外道」
ラウは相変わらず据わった目をし冷酷さを感じる顔のままだった。
「じゃあ、次はこっちの番だ……」
「くっ! お、おい、お前らっ! あのガキをつぶせぇえぇぇぇええぇーーーーっ!!!」
ラウが動き出そうとする前に、仮面の男は魔物に必死に指示を出す。
すると、魔物がその仮面の男の命令どおりに一斉にラウに襲ってきた。
しかし……。
スッ。
スッ。
スッ。
魔物たちは拳や蹴りをこれでもかと繰り出すが、その『小さな子供』には一発も当たらなかった…………というよりも、むしろ、触れることさえできないでいた。
≪まあ、そりゃ~そうでしょう……。何たって今『基本能力』をすべて『フルコンプリート状態』にしてますし、マスター自らの意思でフルコンプリートにしているので、私にも制御できない状態ですし、いわゆる『キレてる状態』ってやつですから……≫
ラウの脳内ガイドアバターの『ビショップ』が誰ともなく独り言を呟く。
≪さて…………『今回の彼』はどういう感じになるんでしょうね~…………≫
ラウの脳内ガイドアバターの『ビショップ』が誰ともなく独り言を呟く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「「「「「「ぐぎゃああぁあぁぁあぁ~~~~~……っ!!!!!」」」」」」
ラウを取り囲む魔物が次々と首をはねられ絶命していく。
ラウは今、基本能力のステータス値を『999』のフルコンプリートにした状態で動いている為、自分以外の動きがすべてゆっくりと見え、敵からの攻撃のダメージは無いに等しく、自身の攻撃は『よく研がれて切れる高級な包丁で豆腐を切る感覚』よりもさらに感触がないレベルで魔物の首を『手刀のみ』で刈っていた。
時間にしてわずか『十秒足らず』で、三十匹近くいた魔物がすべて首をはねられた状態の光景が広がっていた。
「ラ、ラウ……く、ん……ラウ……くん……」
メルシーはすでに恐怖のあまり涙目になりながら震えた声でラウの名前をか細く呼び続ける。
しかし…………今のラウにはメルシーの声は届いていなかった。
「ば、化け物め…………」
「お前がそれを言うか、鬼畜外道。…………まあいい、僕は君を絶対に許さないから…………じゃあ…………殺すね?」
そう言うと、ラウは一瞬で仮面の男の背後に立ち、肩を掴んだ。
「えっ? い、いつのまに………えっ? えっ?」
仮面の男はラウが自分の背後に回ったのをまったく気づけなかった為、その現実に頭がついていかない状態になっていた。
ズブッ……ズブ、ズブ、ズブ。
「…………あ」
ラウは仮面の男の反応など一切、気にも留めず、自身の手刀を仮面の男の背中から心臓のある真ん中部分に突き刺し、そのまま手刀を突き進め、仮面の男の心臓ごと反対側まで貫いた。
「か、かはっ……!!!」
仮面の男は膝を地面につき、前のめりに倒れる。
ラウはその倒れた仮面の男を据わった目で見下ろす。
「お、お前……おまえぇ~~~~っ!? な、何者…………何者だ~~~~~~っ!!!!」
口から血を吐き血みどろ状態になりながら仮面の男が叫ぶようにラウに向かって言葉をぶつけ続ける。
「お、俺は……おれは…………魔族だぞっ!! 魔族なんだぞ~~~~~~~~っ!!!!!」
仮面の男はこの現状が信じられないとでも言うかのように叫び続けた……………………が、
「お前………………うるさい」
そう言うとラウは、つまらなそうな顔をして仮面の男の首をはね絶命させようとした……………………がっ! その時っ!
「ラウーーーーーーーーっ!!!!」
「はっ!!………………あ……れ……ぼ、僕は……いったい…………??」
その時、村の入口側から自分の名を大声で叫ぶ、聞き覚えのある声にラウの目が正気に戻る。
その声のする方角に目を向けると、そこには叫び声の主…………マルス・ヴィンテージが立っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ぼ、僕は……いったい…………なに、を…………」
気がつくとラウは魔物の死体が溢れかえった状況や、仮面の男が胸を貫かれ死んで倒れているのを見て戸惑う。
「こ、これ……を、僕……が……??」
ラウは魔物と仮面の男を一方的に蹂躙していた記憶が無かったので、目の前の状況を自分がやったものだとすぐには理解できなかった。
「ああ、そうだ……お前が…………やった、ものだ」
マルスは声のトーンを下げ、ゆっくりと諭すようにラウに告げる。
「そ、そうだっ! メルシーさんはっ? メルシーさんは無事ですかっ?!」
ラウがメルシーが近くにいないのに気づき、マルスに確認をする。
「……ああ、大丈夫だ。ケガ『は』していない」
マルスがメルシーの無事を伝えるが…………歯切れが悪い。
それもそのはず…………メルシーは今、村長の空き部屋でシャンディが付き添う横でガタガタ震えながら布団にうずくまっており、その原因が魔物でも、『魔族である』と言った仮面の男でもなく、先ほどの『冷酷な眼差しで蹂躙したラウ』に恐怖を覚えてのものだったからだ。
しかし……そんなことを「今のラウに告げるのは酷だ」と判断し、マルスはそのことはラウに黙っていた。
「そ、そうですか……とりあえず無事で良かった……です」
「…………そうだな」
ラウはマルスに特に質問を続けることなく話をすぐに終わらせた。
「あ、あのマルスさん…………だいぶ、身体もラクになったので、ちょっと気分転換に村の周囲を散歩してもいいですか?」
「ん? あ、ああ…………いいぞ」
「ありがとう、ござ……います」
ラウはそう言うと、サッとその場から逃げるように早足で去っていく。
「…………ラウ」
マルスは、そんな早足で逃げるように離れるラウの背中を、ただ見ることしか…………できなかった。
今日は仕事が早めに終わったのでこの時間に更新ですっ!




