031「ラウ六歳(魔物調査) 激突」
「……は~ち、く~う、じゅっ!」
仮面の男の指先から放たれた光がまた村の男の心臓を貫き絶命させる。
「ひ、ひどいっ!」
その様子を見たラウがおもむろに飛び出そうとした。
「ダ、ダメよ、ラウ君っ! 一旦、ここは引いて村の外で『赤色閃光弾』を打ち上げて皆を呼ぶわよっ!」
そう言うと、メルシーが飛び込もうとしているラウを必死で止める。
「あの仮面の男…………そうとう強いわ。それに周囲には魔物が三十匹はいるのよ…………私たちだけでは無理よっ!!」
「で、でも、僕なら、僕の力なら…………」
「ダメっ! 私はラウ君の強さは聞いているけど……それでも、まだ実戦経験の無いラウ君ではあまりにも危険よっ! 我慢してっ!!」
「で、でも……」
そんなやり取りをしている間に、仮面の男がまた村人に話しかける。
「さあ、さあ、どうですか~? 魔宝具のこと、まだ話す気になりませんか~?」
仮面の男の問いに村人は誰一人、答えようとしない。
「ん~、この村もハズレなんですかね~? まあ、全員皆殺しにして探せばいいのですがちょっと手間なんですよね~…………だから、あと一人くらい様子を見ますか……。じゃあ、次は………………お嬢ちゃん、行ってみよっかっ!」
ニタッ……と弱者をいたぶるのを心の底から楽しむような笑みを見せた仮面の男が指差した先にいるのは………………五、六歳くらいの女の子だった。
「い、いや……っ!?」
少女は目に涙を溜め、男の指先から逃れようとする。すると……、
「こ、この子だけは…………この子だけは許してください……っ!」
おそらく少女の母親だろう女性が少女の前に立ち庇った。
「…………どけ」
「きゃあっ……!?」
「マ、ママーーーーっ!!!」
仮面の男が右腕を左に振り払うと、女性もその方向に身体を飛ばされ、そのまま壁にぶつかり気絶した。
「じゃあいくよ、お嬢ちゃん…………い~ち、に~い……」
「い、いや、いやあぁぁああ~~~~っ!! ママ~~~っ! ママ~~~~っっ!!!」
「ママはね~、気絶しちゃったから呼んでも無駄だよ~…………さ~ん、よ~ん……」
「「「「「や、やめろ~、この野郎~~っ!!」」」」」
村の男数人が、仮面の男に向かって飛び出していった。
「失せろ…………火炎放射っ!!」
仮面の男は掌を向かってくる男たちに向け、そこから男たちをゆうに包み込むほどの炎を放つ。
男たちはそのまま黒焦げになり、地に倒れる。
「……全く、騒々しい…………ろ~く……」
仮面の男は、何もなかったかのようにまたカウントを始める。
「ま、待ってくれっ!?……………………魔宝具の件、私が話すっ!!」
「「「「「「そ、村長…………っ!!!」」」」」」
村人の集まっている人ごみの中から『村長』と呼ばれた男が前に出てくる
「あ、そう、教えてくれるんだ…………ていうか、この村にあったわけねっ! ラッキーっ!!……………………な~な、は~ち…………」
「お、おいっ! 何をしてるっ!! 私が魔宝具のことを話すと言ったろっ!! カウントをやめろっ!!!」
「えっ? 嫌です。だって、魔宝具があることがわかったんだもの。後は、どうとでもなるしっ!…………ということで、お嬢ちゃんはここでサヨナラだね~……バイバ~イ…………く~う……………………じゅっ!!」
仮面の男の指先が光を放つ直前っ!
ヒュルルル~…………パンっ! パパンっ!!
仮面の男の上空で、鮮明な『赤色』の閃光が空を覆った。
「!!…………誰ですっ?!」
仮面の男がその『赤色閃光弾』を放ったであろう場所へ、指先の光を放つ………………がっ!
バシュっ!!
仮面の男の指先から放たれた光は、そこに立つ『小さな六歳くらいの男の子』に簡単に弾かれてしまう。
「!!!…………何っ!?」
仮面の男はその状況に顔を強張らせる。
「君………………何?」
仮面の男のニヤついた顔が一変…………楽しみを奪われた腹いせにズタズタに殺してやりたい、とでも言いたいようなわかりやすい怒りの表情を浮かべていた。
「僕はラウ・ハイドライト。あんたを許さない……」
そして、ラウもまた珍しく怒りの表情で仮面の男を凝視する。
「あの…………バカっ! もうっ!!」
すると、ラウの横からひょっこりとメルシー・アイライナが飛び出す。
「おい、そこの仮面ヤローっ! 私はメルシー・アイライナ。ルミア王国冒険者ギルド、傭兵結社『踊る道化師』だ。今、私たちの仲間がお前たちを包囲している! 無駄な抵抗は止めろっ!!」
メルシーが『警察が立てこもり犯に使う常套句』のような言葉を仮面の男に投げ掛ける。
「『踊る道化師』?…………ほう、あの有名な傭兵結社……というより『七武神』…………『暴虐のマルス』のチームですか。なるほど、お前たちが最近、ルミアの王族依頼で嗅ぎ回っている奴らだったということですか…………」
仮面の男が『踊る道化師』に反応する。
「さすがに『暴虐のマルス』…………マルス・ヴィンテージが出てくるとやっかいですねぇ~……」
どうやら、『踊る道化師』というより『マルス・ヴィンテージ』に仮面の男は顔を雲らせる。
「ええ、リーダーのマルスさんも今、あなたを観察しながら包囲しているのよ。だから、あなたはこれから私たちに捕まるっ! だから、おとなしくしなさいっ!!」
「ほう、『捕まえる』…………ですか?」
「そ、そうよっ! 私たち『踊る道化師』があなたを捕まえ、魔物を始末するわっ!!」
メルシーは勢いにまかせ畳み掛けるように仮面の男に言及する。
ちなみにメルシーが言っていることはすべて……………………『ハッタリ』である。
メルシーの作戦は、うまく『ハッタリ』をきかせ、仮面の男や魔物たちにここから逃げるよう仕向ける、というものだった。
しかし……。
「その前に少し確認させて…………もらいますよっ!」
すると、仮面の男が掴み取るような手の形をした状態で僕たちに向け、
「自白魔法、『真実の言質』っ!!」
「!!…………し、しまっ……」
仮面の男の両手から無数の糸のようなものが飛び出し、僕らの身体を突き抜けていった。
しかし、特にダメージはなかった。
何だったんだろう、今の。
ラウは特に気にもしていない様子だったが、横でメルシーが顔を青ざめガクブルしている。
「ラ、ラウ君……」
「な、何ですか……?」
「……バレちゃったみたい」
「えっ……?!」
仮面の男を見ると、また、さっきの少女をいたぶる前のニタッとした表情を浮かべる。
「ふ~む、なるほど……ただのハッタリでしたか。仲間を呼んだのは確かですが彼らがここに到着するまでまだ二十分もかかると…………いやはや、大した度胸ですね、お嬢さん」
仮面の男がニタついた顔で話を続ける。
「それにしても、ここで私の前に姿を現したということは…………私をどうにかする、ということですか?」
「お前をどうにかする、じゃない…………お前を許さないと言っているんだ」
「ラ、ラウ君……………………っ?!」
メルシーがラウを見るとラウの身体が仮面の男への恐怖なのか、怒りなのかわからないが…………震えていた。
「ガキっ!…………失せろっ! 火炎放射っ!!」
仮面の男はさっきよりもさらに大きい炎を上げラウへ放った。
「ふん」
バシュっ!!
ラウはまたさっきの光と同じように炎も軽く振り払った。
「なっ!? 何だとっ!!! そ、そんなバカなっ!!!! な、何だ、このガキは……?????」
仮面の男が先ほどのニタついた顔から一気に蒼白し、余裕ぶっていた空気が無くなる。
「もう終わりか?…………外道」
ラウは依然、身体を震わせているが顔は先ほどの怒りの表情から逆に目が据わり、冷静な…………というよりも冷酷さが垣間見える表情をしていた。
「ラ、ラウ……君…………?」
メルシーは仮面の男よりもむしろ『今のラウ』に恐怖を覚えていた。
洞察力の高い彼女のその感覚が間違っていなかったことが、この後、ラウの反撃…………というよりも『蹂躙』で明らかになる。
今、もう一つ書き始めた新作『イージーモード・ライフ』ですが、しばらくは毎週日曜日に一回、または二回投稿という形で進めていく予定です。
今のところは『自作自演……』のほうを優先して投稿は進めていく予定ですので、また、よろしくお願いします。
※『イージーモード・ライフ』のほうも読んでいただければ幸いです。
m(__)m




