027「ラウ六歳(初等部一年生) 皆との別れ、新たなる旅立ち」【第二章 完】
第二章 完結です
――次の日。
家にミレーネがいつものように迎えにきた。
「お、おはよう……ラウ」
「??……お、おはよう」
何だかミレーネが朝から元気がない。
何かあったのだろうか?
そんなことを考えていると、
「お・は・よ・う……ラウっ!!」
後ろから、元上級貴族で現在はミレーネ女王陛下の専属従者として活躍している……、
「誰が元上級貴族だっ! 今でも上級貴族だ、この野郎……っ!」
おっと! うっかり声に出てしまっていたらしい。
と、まあ、そんな感じでいつもの会話を馬車内でやってると、ライオネルがコソっと話してきた。
(……お前、後から説教、な)
(えっ?! 何でっ!!)
(それは、お前が一番よくわかっているはずだ……)
(!?)
そうか……。
もう二人は、俺の話を……。
おそらく、ライオウあたりが報告したのだろう……な。
『魔物調査の旅に参加する』と決めて一週間……、その間はもちろん学校に通ってはいたがその話は二人にはしなかった。
理由はもちろん、『この事は内密に』とライオウから箝口令を敷かれていたから…………だが、でも、ミレーネは女王陛下だ。ミレーネに告げる分には問題ないだろうと思ってはいた。しかし、『六歳の子供を王宮依頼の魔物調査に参加させる』という無理難題を王宮や上級貴族に了承を得る必要があった為、少しでも情報が漏れる恐れを懸念しての判断だった。
しかし、ライオネルの言い方だと二人とも知ってしまったのだろう。
それで、ミレーネがあんなに元気の無い落ち込んだ顔を…………てっ!? 僕は今、すごく超勘違い発言をしている可能性があるぞっ!!
今、僕は『ミレーネも僕のことが好きで離れたくないという気持ちは一緒なんだ』なんて思ってしまった。
い、いやいやいや……思う分には大丈夫だろう。
も、もちろん、そうだと良いがこればっかりはわからないっ!
しかも、僕は別としてミレーネとライオネルは普通の六歳児だ。
そんな年齢で色恋沙汰なんてはっきり言ってそこまでこだわっているものでもない……むしろ、まだそういうことはまだよくわかっていなに年齢だ。
確かにこの国の人たち……特に貴族や王族の人といった責任ある立場の子供たちは生前の僕のいた世界と比べれば、とても大人な考え方だし行動をする。
とは言え、普段、学校にいて貴族、王族という責任から解放されたミレーネやライオネルも含めた皆はやはり『六歳児』という感じだった。
そんな子供であるミレーネがどう思っているのかなんて、仮に僕の事が好きだとしても『恋愛の好き』ではなく『友達として好き』という部分が強いだろう……というかほとんどだろう。
そういう意味では、これからどのくらいの期間になるのかわからない旅に参加するのは、正直、怖い。
ぶっちゃけ、今のライオネルには皆、以前みたいな『オードリッチ家のバカ息子』という認識ではなく、『秀麗な顔だけでなく強さと厳しさ……そして、周囲への気遣いもできる上級貴族』という認識に変わるなど、『曰くつき物件』から『超優良物件』へと跳ね上がっていた。
実際、悔しいが僕からも見てもかなり『良い男』であることは間違いない。
今でも会えば文句ばっかり言い合うのは変わらないが、『ここぞ』という時には頼りになると『お互い』がそう認識している。
もちろん、あいつも僕もそんなことは絶対に口にしないが。
ちなみに、ミレーネはちょっと違って僕とライオネルに、
「今のお二人は本当に互いを信頼し合って何でも言い合える仲で素敵です!」
などと、僕たちがあえて口にしない『羞恥な部分』をよく平気で突いてくる。
「そんな時、どんな顔すればいいんだよっ!?」
と、某新世紀系アニメを彷彿とさせるようなツッコミを入れようと何度思ったことか……。
あれっ?!
僕が今、『ライオネルにミレーネを取られないか?』なんて考えていることや、そもそも『ミレーネに好意を抱いている』って、それって…………ロリコンということなのか、僕は……?
驚愕の事実を今更、やっと、気づいたラウ・ハイドライト……の中の人『源栄太』は、新たなる悩みを見つけてしまった。
い、いや、でも、この身体だし、外見は六歳児だし、あと、好意を抱く衝動も相手は同級生だし…………別にこれ普通だよね?
僕は、なまじ生前の記憶……そう七十七歳まで生きた『源栄太』の記憶もあるばっかりに、今後、この悩みと共に歩むことになるのはまた別の話。
とりあえず、そんなこんなでいろんなことに悶々としながら馬車はちょうど学園に到着した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
授業はいつものように滞りなく進み、お昼休みに突入した。
ちなみに、現在のクラスの雰囲気はミレーネを中心として皆、和気藹々(わきあいあい)としていた。
ほんのちょっと前までは、皆が気軽にコミュニケーションを取れるような雰囲気ではなかったけれども、良い方向に変わって本当によかったと思う。
「も、もういいだろ?! その話はっ! 僕が悪かったって何度も謝ったじゃないかっ!!」
ライオネルが泣きそうな顔で僕に言及する。
「あ、声に出てたんだ……ごめん。でも、嫌味じゃなく今のようなクラスになって本当によかったってことを言いたかったんだよ。だから、こうしてお前とも仲良くなれたんだし……」
僕とライオネルとミレーネは学食の中庭にいた。
最近はいつもここで三人でお昼を取ることが多い。
「な、なんだよ……気持ち悪いこと言いやがって…………あ、さてはお前、僕とミレーネ様からの説教を誤魔化そうとしていうな……それは許さんぞっ!」
「そ、そんなこと、な、ないよぅ~……」
くっ! 図星かっ!!
こういうときは、ミレーネに味方になってもらおう。
「もう、何とか言ってよ、ミレーネ。こいつ、また僕に嫌味を言ってくる……」
「……ラウ、正座」
「……えっ?」
ミレーネがものすごい剣幕をして呟く。
「せ・い・ざ……」
「は、はいっ!!!」
僕はミレーネのいきおいに言われるがまま、正座を敢行した。
ミレーネがいつもと違い笑顔が無い。
いや、それだけじゃない。
何か、威圧オーラが半端ない。
何か、最近、ウチで見た覚えがあるな、これ。
そんなことを考えながら、僕はミレーネの目の前で正座をしている。
ミレーネの横では『良い気味だ』と言わんばかりの顔をしたライオネルがほくそ笑んでる。
「……話はライオウさんから聞きました」
「あ……う、うん」
お昼休みの学食は多くの生徒がにぎわいを見せ、皆、楽しそうに盛り上がっている。
そんな中、二人の間にはピリピリとした空気が流れる。
「どうして……どうしてラウの口から話してくれなかったんですかっ!!」
ミレーネは涙を堪えた顔で大声でそのセリフを吐くと、ラウの胸に飛び込み顔をうずめてきた。
「!?……えっ……ミ、ミレーネ……ちょっ……!!!」
「ミ、ミレーネ様っ!!!」
ミレーネが僕の胸に顔をうずめているその光景は、僕やライオネルを動揺させたのは勿論だが、周囲の生徒たちも会話を止め、全員が僕たちを注視していた。
「こ、ここではまずいっ! おい、ラウ! ミレーネ様を抱えろ。移動するぞ!!」
「お、おう……!!」
僕は『抱えろ』と言われたので、ミレーネを…………『お姫様抱っこ』した。
「お、おおおおお、お前ーーーーっ!!!!」
「え、いや、だって……『抱えろ』って…………え、え?!」
「そういうことじゃない。肩を抱えながら移動するっていう意味で……ああ、もうっ! いいよ、それで!! とにかくここから離脱するぞっ!!」
「は、はいっ!!!」
僕は思わず敬語になりながらライオネルの後を追い、生徒が注目する学食から離れた。
その後、僕たちは人目のつかないところということで、以前、マルスたちと対峙した『校舎奥の裏山』へ移動した。
「ふう、ここなら大丈夫だろう……」
「そうだな……」
「……て言うか、おいっ!! 早く、ミレーネ様を下ろせっ!!!」
「えっ? 下ろす?…………て、うわっ!? そうだったっ!!!」
僕はミレーネを『お姫様抱っこ』していたのを思い出し、すぐにミレーネを下ろした。
「……だ、大丈夫ですか! ミレーネ様っ!!」
ライオネルが俺を突き飛ばしミレーネに駆け寄る。
「……だ、大丈夫……です……」
ミレーネは顔を紅潮させ、モジモジしながらライオネルに返答する。
「ほらぁ、ラウっ! お前のせいでミレーネ様が苦しんでいるじゃないか! まったく雑の運び方でもしてたんじゃないかっ!!」
「あ、え……その、い、いやあ~……ハハ」
「ん~~???」
僕もまたミレーネと同様、顔を赤くしながらしどろもどろにライオネルに言葉を返す。
しかし、ライオネルだけは状況を理解できておらず一人、困惑していた。
まあ、それが六歳児のリアルだろう。
ということは、ミレーネはライオネルに比べて『ませてる』ということになるが、まあ、女性のほうがそういうものに目覚めるのが早いのはこの世界も同じということか。
そんなことを考えているとミレーネが落ち着きを取り戻したところで言葉をかける。
「ラウ、ライオウさんから聞きました。明日、魔物調査の旅に出られるんですよね?」
「……うん」
ミレーネが真剣な眼差しで話を続ける。
「ごめんね……ラウ。本当はなぜあなたが私たちにその事を今まで喋れないのか、の理由もちゃんと聞きました。でも、それでも、本当は……ラウの口から聞きたかった…………これは、只の私のわがまま……です」
ミレーネが目に涙を浮かべながら言葉を紡ぐ。
すると、ここでライオネルが入ってきた。
「それは、僕もミレーネ様と同じだ。できればお前の口からちゃんと言って欲しかった。だ、だって……ぼ、僕らは、もう……と、ともだ…………友達だろ?」
「ラ、ライオネル……っ?!」
初めてライオネルの口からはっきりと『友達』と言ってくれた。
これまでは絶対に言いたくないセリフだったはずなのに……。
ライオネル……。
「い、一度しか言わないぞっ! ぼ、僕は君と出会って本当に良かったと思っている。もし、君に出会ってなければ僕はこんな自分を手に入れることはできなかったと思う。おそらく今でも『オードリッチ家のバカ息子』として、周囲にみっともない姿をみっともないと思わないまま、大人になっていただろう…………そのことは本当に感謝している……ありがとう、ラウ」
「ライオネル……お前……」
ライオネルはそう言うと顔を赤くし、
「も、もう二度と言わないからな…………フンっ!!」
と言いながら、ソッポを向いた。
ツンデレかよっ!!
と、心の中でツッコむものの、そんな素直なセリフを吐くライオネルが、ちょっと……いや、けっこう…………かわいいと思った自分がいることに少し動揺した横でミレーネがライオネルに対し、
「うん! 今のライオネル君、かわいかったよっ!!」
と、僕の心を代弁するかのようなセリフを言った。
「ミ、ミレーネ様っ?! や、やめてください!!」
「うふふ…………ライオネル君、かわいい」
「はぅわっっ!!!」
ライオネルがミレーネのセリフに顔を赤らめ固まった。
そして、ミレーネは改めて僕に身体を向ける。
「ラウ……今のこの私たちの関係や、クラスの和やかな雰囲気も、それらはすべて君が……君が事を成し遂げた結果なんだよ……」
ミレーネが優しい眼差しで静かに言葉をかける。
「私はそんな勇気と強さを持ったラウに憧れて今がある……そして、その気持ちは今も変わらないし、これからもきっと変わらないわ……」
ミレーネの頬から涙こぼれる……が、笑顔だ。
「いってらっしゃい、ラウ。あなたが旅から帰るまでに私……今よりもっと努力して……ゆ、勇気と強さを持って……これから……うんと、成長して……いくねっ!」
笑顔のミレーネは涙でボロボロになっていた。
「そして、ラウが……旅から戻って……き、たら……驚かせるん、だからっ!」
そして、今日一番の満面の笑顔を見せて力強い言葉をくれた。
「……えへへ」
「ミ、ミレーネ…………ありがとう……僕も頑張るよ…………僕も君を更に驚かせられるよう……頑張る……」
ミレーネの涙と言葉に僕もやられてしまい涙腺崩壊してしまった。
かっこわりぃ~。
でも、なんだかすごく気持ちが良い。
前世では、ここまで僕にかまってくれた人なんていなかったので単純に感動してしまった。
「おいっ! 僕だっているからなっ!!」
「あ、ライオネル……いたんだ」
「こ、この野郎……!! そういうところが……ぼ、僕は……僕は君のそういう……とこ、ろが……嫌い……なん、だ…………くっ!」
いつもの嫌味なセリフを涙をボロボロ流した顔で呟くライオネル。
「ちゃ、ちゃんと言えてねーじゃねーかっ!!」
僕も涙でボロボロになりながらいつものテンプレ通りにツッコミを入れた。
「うふふ……わ、私たち、ひどい顔ね……」
「まったくだ……」
「ミ、ミレーネ様は……ひどい顔では……ありません、からっ!!!」
そんな感じで僕はミレーネとライオネルにきちんとした別れを告げることができた。
「明日の朝は私たちも見送りにいくからね」
「うん、わかった。ありがとう」
「明日は大事な日なんだから寝坊なんてするなよっ!」
「するかっ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こうして学校で二人に別れを告げた後、授業も無事終わり、僕は帰宅した。
帰宅して居間を通るとそこには豪勢な食事が並べられていた。
「か、母さん、この豪華な食事って……」
「あら、おかえり、ラウ。そうよ……あなたの明日の出発を祝う為のご馳走よ」
「そ、そんな……大げさにしなくても……」
「何言ってるんですかっ! 明日の旅はラウのこれからの人生を作り出す『はじめの一歩』なのですよ。大げさなことは決してありません!」
ネルが力強く言葉をかける。
「とりあえず、そんなことはいいからフィネスの部屋に行きなさい」
「えっ? なんで?」
「そこで、フィネスとサイモンが待ってるわ…………お話してきなさい」
「お母さん…………わかった、ありがとう!」
僕は急いで二階の奥にあるフィネスの部屋へと足を運んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
コンコン……!
「フィネス兄さん、ラウです」
「……どうぞ」
中に入ると、ネルの言うとおりサイモンも一緒にいた。
「ラウ、いよいよ明日だな……」
「……はい」
フィネスは優しい笑顔で言葉を呟く。
「おい、ラウっ!」
「!! サ、サイモン兄さんっ!!」
サイモンが凄みのある言葉で僕に言葉をかける。
「何、ビビッてんだよ! 規格外の強さを持っているクセに!」
「い、いや、そ、それとこれとは別っていうか……サイモン兄さんやフィネス兄さんは、今でも……いや、たぶん、これからも僕の中ではずっと尊敬する兄さんたちだから……いくら強くなってもそこは変わらないと思う」
僕は正直な気持ちを二人にぶつけた。
「「ラウ……」」
二人とも、優しい笑顔で僕を見つめている。
「本当にこれが『ルミア王国最強戦士』とはな……まったく、全然凄みを感じねーよ」
と、笑いながらサイモンが呟く。
「でも、それがラウの良いところだと僕は思いますけどね……」
「ま、そうだな……!」
フィネスが続けて言葉をかけ、その言葉に納得するサイモン。
「ラウ! 俺も中等部へ行ったら『冒険者ギルド』に入るからよ!」
「えっ! そうなの?!」
「おう! まあ、さすがにお前みたいにマルスさんとこの『踊る道化師』に入るみたいなことは無理だけど、まあ、俺は俺なりのスピードで強くなっていくさっ!」
「サイモン兄さん……」
「それに結果的には、お前のおかげで父さんに冒険者ギルドに入ることを言うこともできたし、許しをもらうこともできたからな……感謝してるぜ、ラウ」
「い、いえ、僕は、何も……」
僕はサイモンの言葉に目頭が熱くなったので顔を下に向けた。
「ハッハッハ……本当に凄みねーな」
サイモンが屈託の無い笑顔で僕の頭を撫でた。
「面目ない……」
僕は照れながら言及する。
「ラウ……学校のことは心配するな。お前が今回旅をすることで周囲の人間から何か言われても僕たちがちゃんとフォローするからな」
運動会で注目された僕が突如学校から姿を消す……長期欠席をするということになるといろいろと学校で言われるかもしれない、という懸念をライオウは持っていたが、その懸念をフィネスとサイモンが自分たちがフォローすると言ってもらったのでライオウは二人に任せることにした。
「まあ、まかせとけって。ちなみにフィネス兄さんは中等部へ上がるとは言っても、今年の任期までは初等部の生徒会長は続けることになってるんだ。だから今年中で初等部でのお前の変な噂があっても俺たちがフォローするからまかせとけっ!」
フィネスもサイモンも僕の為にいろいろと根回しなどしながらフォローすると言ってくれた。
「ありがとう……フィネス兄さん、サイモン兄さん」
ああ、本当に良い兄弟……良い家族だ。
本当に……本当にこの世界に……この家の子供に……転生できて良かったと心から思った。
その日の夜は家族みんなでご馳走を食べ、いろんな話をして盛り上がった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――翌日、出発の朝。
「よう、ラウ! 準備はできたか?!」
「あ、はい。できました!!」
マルスが朝から元気よく声をかける。
「いやあ快晴ですよ、兄貴! 良い旅びよりだっ!!」
「すごく良い天気で何より。マジ、何より」
「みんな朝、強いですね~……バカですか?」
「……朝は苦手」
『踊る道化師』の皆さんもとりあえず相変わらずだ。
「ラウ~!」
「おい、ラウ!」
「ミレーネ! ライオネル!」
ミレーネとライオネルがちょうど今、やってきた。
すると、僕以外の人たちが皆、膝を付き頭を下げる。
僕は普段からミレーネと一緒だったのですっかり忘れていたが、ミレーネはルミア王国……この国のトップの『ミレーネ女王陛下』なのだ。
僕も遅れて皆に合わせて膝をつき、頭を下げる。
すると、ミレーネとライオネルの後ろにある場所から英雄剣士ライオウ・スピルデンが現れ、
「……良い。今さらだろ、この面子は。頭を上げてくれ」
そう言ってライオウが皆に声をかける。
ミレーネもライオウの言葉で頭を上げ元に戻る様を見てホッとする。
「ラウ……頑張ってね」
「ミレーネ様……」
僕はミレーネが女王陛下ということに久しぶりに気づいたおかげで最初の頃みたいに『ミレーネ様』と言ってしまった。すると……、
「ミレーネ!」
ミレーネが笑いながらあの時のやり取りをそのまま返し、そして二人で笑った。
「何だか懐かしいね……」
「はい。もう随分昔のような感覚でした」
「な、何、今のやり取り……?! 教えろ、ラウっ!!」
「な、何でもないよ……!!」
「ウソつけ! 怪しいぞっ!!」
と、ライオネルが僕を問い詰めていると……、
「おい、ライオネル……お前、ウチの弟にちょっかい出してたそうじゃないか」
「うわっ! サ、サイモン先輩っ!?」
ライオネルがサイモンを見て恐怖に怯えた顔をしている。
「あとから、ちょっと裏で……話そうか」
「は……はい」
サイモンが凄みを出しながらライオネルに言及。ライオネルは微かな震え声で返事を返す。
まあ、そっちはそっちでいいんじゃないでしょうか!
そんなことを考えていると、ロイとネルが言葉をかける。
「ラウ。この旅はお前を大きく成長させる旅になるかと思うが無理はするなよ。命はあってこそ、だからな……」
「は、はい……っ!!」
ロイが経験を踏まえての言葉なのだろう……とても説得力のある言葉だったので僕は改めて気を引き締めた。
「ラウ……あなたは強い子よ。でも、同時にあなたはまだ子供。旅でつらいことがあったらちゃんとみんなに遠慮せずに言いなさい。強がることは必ずしも良いもの限らないということを忘れないでっ!」
「はい、わかりました……!」
ネルは、僕はまだ子供である、ということを自覚するよう言われた。
確かにその通りだ。
前世の記憶や経験を持っているおかげで、大人びたことを言ったり考えたりすることはできるけど、でも、実際に身体や心は六歳児よりである。
だから、旅は僕にとってはキツイものであるかもしれない。
そんなとき、大人がよくやる『強がり』は確かにこの旅ではデメリットにしかならないだろう。
ネルの言葉に気づかされた僕は、もう一度、深く感謝の言葉を述べた。
「よーし、じゃあ行くぞ、ラウっ!!」
マルスが馬車から声をかける。
馬車に乗り込もうとすると、そこにライオウが立っていた。そして……、
「ラウ君、短い間でしたけどあなたとの『手合わせ』とても楽しかったです。ありがとう……」
ライオウが『手合わせ』のことについて感謝の言葉をかけた。
「……さて、これからのこの魔物調査の旅は前にお話しましたが『クシャリカ王国』が絡んでいる可能性があります。なので、すごく重要で、もしかしたら危険もあるかもしれません。でも、あなたなら大丈夫です。それだけの強さを持ってすれば旅での危険は皆無と言っても過言ではないでしょう……」
ライオウが微笑みながら言葉を続ける。
「ということで、旅から帰ってきたら改めて『手合わせ』しましょうっ! 私も鍛えて待ってますので……!」
ライオウさん……途中まで良いこと言ってたのに、最後は自分の欲望をそのまま口にして台無しにしちゃいました。
まあ、ライオウらしいなとは思うけど。
「では、いってらっしゃい、ラウ君! 旅の無事を祈ってますっ!!」
「はい、いってきます!!」
僕の言葉を合図にマルスが馬にムチを入れ馬車が動き出した。
「みんなーー、いってきまーーーーすっ!!!」
僕は大声で皆に手を振る。
「いってらっしゃーーい、ラウ!」
「弱いんだから無理すんなよー!」
ミレーネとライオネル。
「マルス、頼むぞーー! ラウ、頑張れーー!!」
ロイ。
「マルス、この野郎っ! ラウを本当に頼むぞーーー!!」
ネ、ネル……(周囲は困惑の顔)。
こうして僕は皆にいろんな言葉をかけてもらいながら魔物調査の旅へと出発した。
第二章 ルミア王国魔法学園/初等部編 完
第二章が完結しました。
第三章からいよいよラウも本格的な戦いに巻き込まれることとなります…………がっ!
ここで申し訳ありませんが一週間のお休みを頂きます。
理由は、『新しい作品』を立ち上げる……かも、というのが理由です。
突然、構想が浮かんだものでして、それを形にするかどうか迷っているのですが、とりあえず、この『自作自演……』もちょうどキリの良いタイミングだったので、とりあえず一週間考えてみようかな、と。
特に、形にできなければまた一週間後に『自作自演……』を投稿しますし、仮に新作を発表することになっても『自作自演……』の投稿は続けます。
ただ、もし、二作品となった場合、『自作自演……』の更新頻度は最短で『二日に一回』、遅くて『三日に一回』となると思います(新作も一緒です)。
と言っても、新作の構想がちゃんと形にできれば、の話ですがっ!
というわけで、とりあえず一旦、お休みします。
一週間後にお会いしましょう。
シーユー!




