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自作自演の無双能力者  作者: てんやもの
第二章 ルミア王国魔法学園/初等部編
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025「ラウ六歳(初等部一年生) ラウの決断」



「……ラウ君、君は何を望む?」


 ライオウが真剣な眼差しで僕に答えを求める。


「ぼ、僕は……」


 僕は迷っていた。


 ネルの心配を考えるなら『中等部への飛び級』のほうがいいのかもしれない。でも……、フィネスやサイモン、ロイが言った『自分にしかできないこと』を考えると……、


「僕は…………僕は、マルスさんたちの魔物討伐について行きたいですっ!」


「ラ、ラウ……っ!」


 ネルが声を上げる。


「ご、ごめんなさい、お母さん。僕は、僕にできることを追求していくことが人の為になると思ってそう決断しました。危険かもしれないということでお母さんが不安なのもわかりますが、でも…………やっぱり僕は、自分の力で多くの人の役に立ちたいですっ!!」


 ラウはネルに向かって力強い言葉で覚悟を示し、頭を下げた。


 ネルはラウをジッと見つめる。


 ラウもネルから目を逸らさず、しっかりと見つめ返す。


 そして……、


「ふぅ~…………ラウも男の子なのね」


 ネルが諦めた表情でポツリと呟いた。


「お、お母さん……!」

「あなたは生まれた頃からすぐに言葉をしゃべったり、絵本どころか歴史書や魔法書、経済書まで読む普通の子とは違う……才能の片鱗を見せてましたね……」


 ネルは目を閉じ、ラウの赤ちゃんの頃のことを思い出しながらゆっくりと語る。


「……そうね。ラウはもしかしたら女神セイラ様が使わした『神の子』かもしれないわね」

「……あ」


 そういやこの国の神様は女神で名前は『セイラ』…………僕をこの世界に転生させた女神セイラ様だった。


 そう考えると、ネルの言っていることは間違ってはいない…………が、『神の子』と言うのは何とも大仰過ぎるので恥ずかしい。


「行きなさい、ラウ! お母さんも覚悟を決めました。あと、フィネス、サイモンも中等部へ行き、民の為、国の為に励みなさい。私はあなたたちを……あなたたちの覚悟、信念をこれからはずっと見守っていきますっ!」


 ネルが元ヤン時代の凄みで僕らに激励を飛ばした。


 しかし、その顔は「息子たちを信じる」という自信に溢れた笑顔だった。


「はいっ! 頑張りますっ!!」

「はいっ! 母さんの期待に絶対に応えます!!」

「はいっ! お母さん、ありがとうございますっ!!」


 フィネス、サイモン、ラウの三人は各々の想いを母親のネルに向かって言葉にし礼をする。


「……ネル、お前」

「ロイ、いいのよ…………だって、あなたと私の血が流れているんだもの、いつか、こうなることは覚悟してたわ」

「まあ……そうだな」

「でも、さすがに早過ぎてちょっと覚悟ついていけてなかったけどね……」


 と、ネルが言うとマルスに顔を向けた。


「マルスっ!!」

「は、はい……っ!!!」


 マルスが硬直したまま直立不動に立つ。


「……ラウのこと、本当に、本当に…………よろしく……お願いしますっ!!」

「!?……ちょ、あ、姐さんっ!!!!」


 ネルはマルスにそう告げると深々と頭を下げた。


「頭を上げてください、姐さん……」


 そう言うとマルスは両手でネルを起こし上げる。


「まかせてください、姐さん。俺や俺たちの仲間が全力でラウを守りますっ! 絶対に姐さんに悲しい想いはさせませんっ! なあ、みんなっ!!」


 マルスが仲間に声を掛ける。


「もちろんですぜ、姐さん! ラウ君は全力で守りますっ!!」

「はい! まかせてくださいっ! 私がちゃんとラウ君のことを守りますっ!!」

「絶対に守りますっ! 誰が何と言おうと、絶対守りますっ!」

「ネル様のために命をかけてラウ君をお守りしますっ!!」


 四人がマルスと同じように力強くネルに言葉をかけた。


「だから姐さん、心配しないで下さい。俺を信じてください」


 マルスが静かに、しかし、揺ぎない想いを乗せた言葉でネルに語りかける。


「……わかったわ。頼むわね、マルス」


 マルスの言葉に安心したのかネルの顔に笑顔が戻った。


「……マルス、頼んだぞ。ラウをよろしく」


 ロイがマルスに小声で声をかける。


「まかせろ、ロイ。ラウは俺たちが絶対に守る! それにあの子は……ラウはそんなヤワな奴じゃないし、むしろ、とんでもない力を秘めている。この魔物調査の旅が終わって戻ってきた頃にはすごいことになってると思うぞ。俺は個人的にラウがどこまで成長するのかが今回一番の楽しみなんだからな!」


 ニッ! と子供のような無邪気な笑顔を見せるマルス。


「そうだな……あの子なら今回の旅で大きくなって帰ってくるかもな。私も個人的に…………それは楽しみだよっ!」


 ニッ! とロイもまた子供のような無邪気な笑顔で応える。


 まあ、似た者同士ということである。


「……これで話はまとまったな。ラウ君、マルスと魔物調査の旅で多くのことを経験し身につけさらなる成長を目指してください」


 ライオウがラウに励ましの言葉を掛ける。


「そうだ、ラウ!」

「何? 父さん……」

「お前の能力は、一度どんな技でも受ければその受けた武道を吸収できるんだよな?」

「あ、うん……」

「ちなみにその吸収できるのは受けた技だけなのか?」

「魔法やスキルはそうだけど武道に関してはどんな技でも受ければその技の発祥の武道自体を吸収できるよ」

「なっ!?……し、信じられん…………だが、それが事実なんだよな……」


 そう言って、ロイはしばらく間をおいて考え込む。そして……、


「よし! ではラウ、私の……私独自の武道をお前に授けよう!!」

「えっ?! 父さん独自の…………?」

「ああ。お前やフィネス、サイモンにこれまで稽古していたのは『ルミア王国一般武道』だ。しかし、私は七武神時代に編み出した独自の武道を持っている。その技をお前に受けてもらう……そうして、私の武道を吸収しろ!」

「わ、わかりました……!!」

「まあ、本来であれば会得するのに何年もかかるものだが、お前のその反則級の能力であれば会得できるのだろう……?」


 ロイの表情と言葉に若干のひねくれ感を感じる。


「父さん……なんか嫌な言い方しますね……」

「だーってお前……私がその武道を完成させたのに十年かかったんだぞ!」


 確かに。


 僕のようなチート能力が普通の人はあるわけが無い。


 普通ならどうしても時間がかかるものを僕はこのチート能力のおかげで超ショートカットをしているわけだもんな。


 ロイのひねくれ感はもっともである。


「な、なんか……すみません」


 さすがに申し訳が無くなった僕はロイに謝った。


「ちょっと、ロイ……? あんた、そんな器の小さい人間だったの?」


 そこでネルが威圧オーラ全開でロイに迫った。


 こ、怖い……。


「あ、いや、そ、そんなこと、ありませんっ……!!」


 ロイが必死になってネルに謝る。


「そうでしょう? どうせ、減るもんじゃないんだから武道の一つや二つラウに上げなさいよ……て言うか、あるもの全部出しなさい」


 ネルはニッコリと微笑みながらまるで『中学生のカツアゲ』のようなセリフをロイに突きつける。


「わ、わかりました……」


 ロイが涙目になってションボリしていた。


「ということでラウ……器の大きいお父さんからもらえるものは全部頂いておきなさい」


 ニッコリ!


 ママン、その笑顔が怖いけどそんなこと言えない。


「は、はい、わかりました! いっぱいもらいますっ!!」

「はい、よくできましたっ!」


 ネルが頭をナデナデする。


 僕はそのままネルの手に頭を預けて固まった。


「そういうことなら……ラウ君」

「あ、はい……」


 ここでライオウがラウに声をかける。


「ついでに私との手合わせを兼ねて私の技も持って行きなさい……」

「「「「「「ええええええ~~~~!!!!!!」」」」」」


 その場にいた全員が驚く。


「マ、マジかよ……ライオウ」


 マルスが尋ねる。


「ああ、大マジだ。ただ、ロイとは違って私は単純に『手合わせ』をしたいのだ。その結果、おそらくラウ君の能力であれば、私の持つ武道や魔法、スキル、剣技などいろいろと吸収できるだろう。それに、魔物調査の前に私とロイから吸収すればお前たちにとってもラウ君にとっても安心がさらに保証されるというものだろう?」


 ライオウが淡々とマルスに返答する。


「な、なるほど……。しかし、それってよー、つまり、英雄剣士ライオウ・スピルデンと七武神『拳聖のロイ』の力、両方を手に入れるってことだよな?!」


 マルスが恐る恐る尋ねる。


「け、拳聖のロイっ!! 父さんがあの『拳聖のロイ』っ!! えっ? えっ?」


 サイモンが大声で叫ながら困惑している。


「絵本や伝記、歴史書に載っている『拳聖のロイ』がお父さん…………っ!! そ、そんな、まさか……で、でも、七武神の一人って言ってたし、『拳聖のロイ』のロイはやっぱり父さんしかいないだろうし、でも……」


 フィネスも冷静さを装っているが言葉を聞き取ると、困惑に包まれているのがよくわかる。


 フィネスとサイモンはマルスの『拳聖のロイ』のところで反応している。


 まあ、無理も無い。


 王国にいる子供たちは小さい頃からずっと『英雄剣士』や『七武神』が五大国頂上戦争で活躍し勝つまでの物語を読んでいるのが当たり前の為、その本に本名は書いていないものの七武神の『二つ名』は書かれているので『拳聖のロイ』と言う言葉は知っていた。


 しかし、知っていたとはいえ、改めて父親があの七武神の『拳聖のロイ』だなんて言われてもそりゃ混乱するだろうな。僕だって『拳聖のロイ』が父さんだって知って同じような思いだもん。


 そんな息子たちの混乱をよそにマルスとライオウは話を進める。


「……まあ、そういうことだ。これなら安全を確保できるだろ?」

「あ、安心どころか…………この国最強の戦士が誕生するってことじゃねーか……」


 さすがのマルスもライオウの言葉に震えている。


「……まあ、我々ももう年齢としだしな。『後継者』を見つけることができて良かったよ」


『後継者』……ライオウの言葉に皆がゴクリ……と唾を飲み込む。


「す、すごい会話だな、おい……」


 サイモンが皆の思いを代弁して呟いた。


「……だな。よし、それなら俺の力もすべて吸収させてやるぜ!」


 マルスもライオウ、ロイに続けて賛同した。


「英雄剣士、拳聖のロイに続いて……あ、兄貴……『暴虐のマルス』の力も……すべてって……す、すげえ」


 マルスを兄貴と慕うゾイドが震えながら驚愕の顔を浮かべる。


 それもまた、皆を代弁した表情だった。


「……うむ、では決まりだな。では早速、これから『最強戦士ラウ君』を育成しましょうっ!」


 心なしかライオウの言葉が小踊りしているように感じた。


「おーおー、はりきっちゃってまー……それにしても久しぶりだな、ライオウのこんな姿は」


 マルスがライオウの言葉を聞いて呟く。


 やっぱりライオウは少しテンションが上がっているようだ。


「……そうですね。ここ最近は骨のある相手がいなかったものですから……ラウ君との『手合わせ』、久し振りにテンションが上がりますっ!!」

「おっ! 意見が合うじゃねーかっ! 俺も同じだっ!!」


 ニッ!!


 ライオウとマルスの二人が同時にすっごい子供のような笑顔をシンクロさせて僕に向けた。


 お、おいおい……こっちは本物の六歳の子供だっての。


 いくら僕がチート能力があるからって、そんな本気モードなテンションで手合わせとか怖いからっっ!!


 ま、まあ、ロイもいるしその辺は二人を落ち着かせて止めてくれる…………、


「お前たちっ!! ラウは私の息子だぞっ!!…………」

「!!……と、父さんっ!!!!」


 さすがロイ!


 やっぱり父親として暴走気味の二人を制し…………、


「手合わせは、私が一番だっ!!!」

「…………」


 似た者同士、同じ穴のムジナ……でした。


 ガッカリだよっ!!!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ライオウ、マルス、ロイ……そして、その三人を後ろからついていくラウを、他の者たちが遠目で見ながら各々が様々な思いを呟いていた。


「……まったく! 何で父親や英雄剣士、七武神がウキウキしてんのよっ!!」


 ネルは、諦めのため息を吐きながら呆れ顔で四人を眺めながら。


「なんだかとんでもないモノが誕生する瞬間に立ち会っている気がする……」


 フィネスは、目の前での四人のやり取りに、もはやついていけず、ただただ立ち尽くしながら。


「なんていうか…………正直、ラウは俺たちどころか通常のモノサシで測れる次元を遥かに超えているのかも、な。ハハ……」


 サイモンは、ラウのあまりの規格外さに呆れと尊敬を抱きながら。


「……ていうか、ラウ君って魔物調査の旅に行く頃にはチーム内どころか『ルミア王国内最強戦士』になるってことで……そうなると、私たちは『ラウ君を守る』というよりむしろ『守られる立場』になるという残念な将来ビジョンが見えましたっ!!」


 治癒士メルシー・アイライナがけっして見てはいけない悲しい将来を見て悲鳴にも似た声を上げた。



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