024「ラウ六歳(初等部一年生) ラウの進路」
『成長速度999倍』の話は除いた僕の能力のカミングアウトの後、話は『中等部への飛び級』へと移った。
「……さて、ラウ君の能力の話は想定外、規格外過ぎていろいろと混乱しましたが……その話とも関連する中等部飛び級の話をしたいと思います。まず、もう一度確認ですが、フィネスとサイモン君は中等部への飛び級は了承でいいのかな?」
ライオウがフィネスとサイモンに確認をする。
「はい! 俺もラウに負けないよう強くなりたいのでぜひお願いします!!」
そう言うと、サイモンが僕のほうを見てニッと微笑む。
「はい! 僕も成長してラウを驚かせてやりたいので是非、お願いします!!」
「フィ、フィネス兄さん……??!!」
フィネスがそんなことを言うなんて思ってもみなかったので正直ビックリした。
「まあ、僕はハイドライト家の長男だからね。ラウが規格外の強さなら僕もそれに迫る強さを極めて、七武神ロイ・ハイドライトの長男として成長したいと決意したんだ。負けないぞ、ラウ!!」
「俺も負けないぜ、ラウっ!」
「は、はい! 僕も頑張りますっ!!」
フィネスもサイモンも僕の話を聞いてモチベーションが上がったとのことで改めて激励された。
「……良い息子たちを持ったな」
「まったくだ」
ライオウとロイが三人を暖かい眼差しで見つめている。
ライオウは一旦間をおいてから、改めてラウに確認をした。
「ではラウ君もお兄さんたちと一緒に中等部への飛び級でいいかい?」
「そうですね……」
能力のカミングアウトまでし、また皆からも「自分にできることをやれ」と言われたんだ。もはや断る理由などな……、
「ちょーーーっと待ったぁあぁぁああ~~~~!!!」
「「「「「「!!!!!!!!!」」」」」」
バーン! とドアを激しく開けて中に男が入ってきた。
「その話、ちょっと待ってもらおうか?……ライオウ」
「お、お前は…………マルスっ!!」
「おうよ! マルス・ヴィンテージ、ここに見参っ!!」
「マ、マルスさんっ!!」
「「えっ!? あの七武神の……!!」」
「この野郎……マルス! 何、勝手に人ん家に入ってきてんだっ!!」
各々が各々の反応を示す中、突如、七武神の一人であり、また『踊る道化師』のリーダーであるマルス・ヴィンテージがハイドライト家に押し入ってきた。
「ちょ、ちょっと、マルスさん! 勝手に人ん家に入り込んでダメじゃないですかっ!」
「あ、兄貴っ! 家宅侵入はまずいですって……!!」
「さすがマルスさん、マジかっけー、マジかっけー」
「本当、常識ない奴ね……」
そして、その後ろからは『踊る道化師』の皆さんも入ってくる。
「す、すみません、旦那様!? と、止めはしたのですが…………」
メイドのマーミア・トリータリヤが申し訳なさそうな顔をしてその後から入ってきた。
「あー……マーミアさん、大丈夫です。この『アホ』はどうしようもない奴ですから……マーミアさんのせいではないので気にしないでください」
「「「!!!」」」
いきなり侵入してきたマルスに対し、まさかの母ネルが『アホ』呼ばわりしてマルスを一蹴し、マーミアを慰めた。
僕や兄さんたちはそんな母の普段と違う言葉遣いやマルスを威圧するオーラに驚愕し畏怖する。
「おっ! 姐さん。相変わらず怖いオーラ放ってますね」
「誰のせいだと思ってんの、このアホっ!! 勝手に人ん家入ってきて…………殺すわよ?」
「「「…………」」」
僕と兄さんたちは開いた口が塞がらなかった……。
「お、おい、ネル! 子供たちの前だぞっ!!」
ロイが必死にネルを正気に戻すよう促す。
「あっ! ご、ごめんなさい、おほほ…………。で、マルスさんとゆかいな仲間たちはこの家に……何のようがあって……来てくれやがったのかしら?」
ネルがマルスだけでなく『踊る道化師』にも威圧オーラを掛ける。
「ひ、ひぃいぃい~~~!!! あ、兄貴~~! こ、怖いっ!?」
「ごめんなさい、とりあえず、ごめんなさい……」
「マ、マルスさん、助けてください~~!!?」
「す、すみません、本当にすみません……!!」
『踊る道化師』の皆がものすごいガクブル状態に陥り、必死にマルスに助けを求め出した。
「ネ、ネル……言葉、まだおかしいから。それと……単純に怖いからオーラ消しなさい!!」
ロイが必死にネルを止めに入る。
「あ、ご、ごめんなさい……私ったら……つい、あの無神経男のマルスを見たらつい………………殺らなきゃ、て」
ネルの言葉に全員が固まる。
「あ、姐さん……突然お邪魔してすみませんでしたっ! この通り…………っ!!」
と、マルスは全力の土下座をして謝る。
特に指示はしていないが、『ゆかいな仲間たち』もマルスの後ろできれいな土下座を披露した。
「わかりました、許します。て言うか、来るなら来るって事前に連絡すればこんなことにならなかったのよ、その辺、ちゃんとしなさい、マルス!」
「す、すみません……」
マルスがネルのことを『姐さん』と呼んだ。
ど、どういう関係?
と、思っていると……、
「は、母上っ! 七武神の一人で、『踊る道化師』のリーダーであるマルスさんとはどういう関係なんですかっ?!」
冒険者ギルドオタクのサイモンが興奮しながらネルに自分が考えていたことと同じ質問をした。
「あ、うん、あのね……サイモン……このアホ……あ、こほん……このマルス・ヴィンテージ君は学生時代のただの後輩なだけよ、おほほほほほ……」
あー、絶対、ウソだな…………と、思っていると、
「いや~、学生時代、姐さんは高等部時代……学園を裏で支配していたお人でよ! 俺の一こ上の先輩なんだが、とにかく怒らせたら誰も止められないっていうほどの人でよ、その影響力は生徒だけじゃなく先生にも及ぶほどすごい人……物……」
空気を読まないマルスがネルとのことを詳しく話してくれた…………が、直後、その後ろでネルが最大級の威圧オーラを放ち立ち尽くしていた。
「……マルス。お前、早死にしたいようだね」
「ちょ、ちょっと姐さんっ!? タ、タンマ、タンマ……!!!」
マルスがネルの本気を感じ、相当焦っていた。
さすが裏番。
て言うか、まさかネルが実は元ヤンキーだったとはっ!
そう言われると、確かにネルが本気で怒った時はロイよりも迫力があって怖いのも納得がいく。
そんな、少し和みのような空気が場を包みかけた…………その時っ!
パンッ!!!
「……それまでっ!」
ここで、ライオウが大きな拍手で場を制する。
「マルス。別に来るのはいいが場を乱しすぎだ……。今、大事な話をしているのだ……弁えろっ!」
ライオウが厳しい表情でマルスに告げる。
「わ、悪い……少し調子に乗りすぎた……」
マルスが素直に謝る。
「ご、ごめんなさい、ライオウさん。私もつい調子に乗ってしまって……」
「いえ、ネルさんは何も悪くありません。悪いのはマルスのみです」
「ひ、ひどい……」
まあ、ライオウの言っていることは別に間違ってはいない。
ただ、気になるのは…………なぜ、マルスと『踊る道化師』がここに……ハイドライト家に来たのかということだ。
「……で、どうしてここに来たのだ、マルス?」
ライオウが話を戻し、マルスに問い詰める。
「いや~、この前のラウとの一件の話はしただろ?」
「ああ……」
「で、その時、俺はラウをスカウトしたってのも話したよな?」
「ああ……」
ライオウがマルスをじっと見つめる。
マルスはそのライオウの視線を感じつつも特に意に介せず、今回、ここに来た目的を話し出した。
「俺は今回、王宮から魔物調査の依頼を頼まれている……あとはわかるだろ? ライオウ……」
そう言ってマルスはライオウに不敵な笑みを浮かべて逆に問いかける。
「……フッ、なるほど。そういうことか」
「!! お、おい、マルスっ! お、お前、まさか……?!」
マルスの言葉にライオウとロイが真意を理解したのか反応を示す。
「ああ! ラウは中等部への飛び級ではなく、俺と俺たち『踊る道化師』と共に魔物調査の依頼に参加させるってことだっ!!」
マルスがいきおいよく拳を上げ、キメポーズを決める。
すると、
ゴンッ!!!
マルスの後頭部をネルの拳がめり込んだ。
「ふざけないで、マルスっ! そんな……そんな危険な依頼にラウも連れて行くなんて何考えてんのよっ!!」
ネルが本気で怒り、マルスに怒鳴っている。
しかし……、
「ネルさん、待ってくれ……」
「!?……ライオウさん」
ライオウがネルを止める。
「確かに彼ら……『踊る道化師』は傭兵結社でありトップクラスの実力者集団だ。そんな彼らに与えられる依頼が簡単な依頼であるはずがないのは確かです。だが、同時に彼らのような実力者集団の中でいれば、そこはある意味『安全』であるとも言えます」
「ライオウ……さん?」
ネルがライオウの話に少し違和感を感じながら聞いている。
「そして、ラウ君の持つ能力を考えれば、今、中等部へ飛び級するよりも…………実戦で経験を積むことのほうが一番だと私は考えるっ!!」
「!!…………ラ、ライオウさんまで?!」
マルスの意見を否定すると思っていたライオウにネルは驚く。
しかし、ロイもまた、
「危険な任務ではあるかもしれんが、ラウの能力は実戦でこそ活かせる能力であることは否定……できない」
ライオウと同意見だった。
「で、でも、ロイっ! あの子はまだ六歳なのよっ!」
「確かに、ロイはまだ六歳だが、しかし……能力はもちろん、またそれだけじゃなく六歳とは思えない物の考え方や発想、対応力を大人以上に持っていることもまた事実」
「!?……」
ネルも思うところがあったのかロイの言葉に否定はしなかった。
「とは言え、まず、我々がどうこう言うよりもラウがどうしたいかが最優先だ……! ラウ、お前はどうしたい?」
「ぼ、僕は……」
皆が俺の言葉に注目し耳を傾ける。




