023「ラウ六歳(初等部一年生) カミングアウト……しちゃいました」
昨日はいろいろ忙しく更新できなくてすみませんでした。
ということで、早速、更新で~す。
皆から注目を受けている、いわば『針の筵』状態の中、僕は話を始める覚悟を決めた。
ただし、とりあえず『前世』や『異世界への転生』『女神セイラ』の話はしなくてもいいだろう。話すのは能力のことだけで問題ないはずだ。あと、能力の話にしても『成長速度999倍』をそのまま説明せずとも『こっちの都合に合わせた能力』として説明することもおそらく可能であるはずだ…………僕は頭の中で話す内容を整理してゆっくりと説明を始めた。
「僕は…………『ある特殊能力』を持っています……」
「「「「!!!」」」」
ライオウ、ロイ、フィネス、サイモンが僕の言葉にピクッと反応する。
「その能力とは生まれつきのもので……その内容は…………『自分の身体能力を調整できる』というものです」
「「「「し、身体能力の調整っ……!?」」」」
ここで、ライオウが言葉を発する。
「ラ、ラウ君、それは……つまり、自分の身体能力を都合に合わせて変化できる、ということですか?」
「はい、そのとおりです。ちなみに今は通常の六歳児の平均身体能力となっていますが、能力を発動し身体能力を変更すると……」
と、言って僕はビショップに心の声で『敏捷性100をお願い』と指示し、
フッ!
「「き、消えたっ……!!」」
フィネスとサイモンが叫ぶ……と同時に僕は彼らの背後に移動し説明を続ける。
「……と、このように自分の身体能力をコントロールすれば……今だと『敏捷性』を飛躍的に上げればこのようなことが可能になる…………それが僕の能力です」
「す、すごい……なんて能力だ…………」
ライオウが驚きの言葉を漏らすと共に質問を続ける。
「と、ということは……ラウ君……『敏捷性』以外の能力、例えば『体力』や『攻撃力』といったものも変化できるのかい?」
「はい……ただ、『攻撃力』に関しては加減を誤ると大変なので基本ほとんど触りませんね。だいたいよく使っているのは『体力』や『敏捷性』『防御力』がほとんどです」
「こ、こんな、能力……聞いたことが……ないぞ…………」
そして、ロイは僕の説明に困惑しながらただただ現状目の前で見聞きした感想を呟く。
「うーん……これは…………想像以上でしたね」
ライオウもまた困惑を隠しきれていない。
「それと、僕にはもうひとつの能力があります」
「な……これだけじゃない……のですか?」
ライオウが僕の言葉が予想外だったようで、今日一番のビックリ顔を持って返答する。
「はい。先ほどの『基本能力の調整』という能力と……『一度、魔法や武道、スキル効果といったものを体験、経験すれば、それを自分のモノとして吸収する』……という能力があります」
「な、なんとっ……!!」
ライオウが先ほどの今日一番のビックリ顔をさらに更新しつつ、一際、大きな声で言葉を発した。
「ちょ、ちょっと待てっ!?…………ラウ、それじゃあ、お前、もしかして武道の稽古を初めて体験したとき、私が稽古で教えている『ルミア王国一般武道』を…………」
「……はい、吸収、習得できました」
「は、はあぁぁあ~~!? な、なんだよ、それ……」
サイモンが唖然とした顔で呟く。
「習得……六歳で……すでに……」
フィネスは目が点となりボーッとしながら呟いた。
「!?……そ、そんな、そんなことが…………なんて能力だっ?!」
ロイは『信じられない』という言葉を顔に思いっ切り出して素直な感情を漏らしている。
「な、なるほど…………だからラウ君はあの『踊る道化師』と戦ったとき、魔法使いのシャンディから受けた『締まる鎖』を解除することができたんですね」
「……はい。一度受けた魔法であればその魔法の吸収には『解除方法』も含まれます…………て言うか、それも知ってるんですか、ライオウ様…………っ?!」
「ま、まあ、マルスや『踊る道化師』のメンバーがいろいろとその戦いの時の詳細を嬉々として教えてくれたからね…………とは言え、今、こうしてラウ君に説明されるまでは信じられませんでしたが……」
さすがに、英雄剣士ライオウ・スピルデンといえど、今回のラウの能力があまりにも『常識外』のことだけに『踊る道化師』の面々が言ったことがどこまで真実なのか測りかねていた。
「ほ、捕縛魔法……!? しかも、『締まる鎖』て…………それって、上級魔法の一つじゃないですかっ!!!」
フィネスが『捕縛魔法』に反応する。
「う、うむ。フィネス君の言うとおりだ。しかし、それをラウ君は吸収していると言う…………のであればちょっと私にかけてみてくれないかい?」
「ええっ!? そ、そんな……」
「大丈夫。私は解除できますので……」
「わ、わかりました……」
そう言って僕はライオウの要求どおり『締まる鎖』をライオウへ展開した。
「捕縛魔法、『締まる鎖』!!」
ガキーン!
ギュギュギギ……!!
ライオウの身体を薄い光でぼんやりしたようなものが締め付ける。そして、そこから発する音は鎖が締め付ける音や鎖どおしが軋み擦れ合う硬い音が響き渡った。
「むっ!? た、確かにこれは捕縛魔法『締まる鎖』に間違いない……本当に吸収しているとは…………解除っ!!」
ライオウは魔法を確認すると解除し、鎖を消してさらに質問を続ける。
「す、すごい……本当に上級魔法の『締まる鎖』でした……。ラウ君、君の言う『体験する』……という意味は、魔法やスキル、武道なんかも含めて一度身体で受けないとそれは吸収できない、という認識でよろしいですか?」
「はい」
「……なるほど。しかし、そうなるとその魔法……例えば攻撃魔法とかは一度食らえば吸収できるかもしれませんがそれは…………生きていればの話ですよね?」
「ええ……。ですので、基本戦闘中は防御力を全開にして防ぐことに全力を注ぎます……たぶん」
「たぶん?」
「はい。まだやったことがないので。なので、もし、魔法をいろいろと吸収したいと思って行動するならそうするかな、と思っただけです……すみません」
「あ、いや、別に怒っているわけじゃないから謝らなくてもいいんだよ。それにしても六歳にしてこれほどの特殊能力を、しかも二つも持っているとは……今なら『踊る道化師』に勝ったことや、マルスがラウ君を『スカウト』したという話も納得がいきますね……」
と言いつつ、ライオウの額に冷や汗が見られる。
それほど、ラウの能力が『常識外』ということを物語っていた。
「し、信じられないけど……これはまぎれもない現実であり事実なんだ……でも、そんな規格外な能力なんて……」
フィネスは今までラウの中に見た秘めているであろう『何か』を感じてはいたものの、その『現実』があまりも『現実離れ』していたとは皮肉だな、と一人苦笑いを浮かべる。
「はぁ~~~、まさか、ラウがこんな特殊な奴だったとはな…………まあ、あの敏捷性を見て改めて今の話を聞けば納得するしかないじゃん。まだ、混乱しているし、訳がわからないけど……」
混乱しつつも話をするサイモンはラウの肩を両手で叩き、
「でもっ! ラウはラウであることに変わりはないし、これまでもこれからも俺たちが家族であることにも変わりはない! むしろ、お前がその大きな能力を使って、人の為に尽くしていけばいい、それだけの話だ、なぁ、ラウっ!!」
サイモンが力強くラウに言葉を紡ぐ。
「サ、サイモン……兄さん……」
僕は、サイモンの言葉に感動し、不覚にも少し瞼に涙を浮かべた。
畜生、サイモン……かっこ良過ぎるっ!!
「そうだ、ラウ。サイモンの言うとおり、お前がどれだけ特殊であろうと私たちがお前に注ぐ愛はこれまでもこれからも変わりはしない……確かにこれまでこのことを黙っていたのは良くなかったのかもしれんが、しかし、それもまた、お前が自分で周囲のことを考えての『結果』『判断』だったのだろう。心優しいお前のことだ、私はお前のその判断を信じるよ…………いろいろと気を遣わせたね、ラウ」
「と、父さん……」
父さんもサイモンと同じように愛のある言葉をかける。そして……、
「ラウ、お前の中に潜在する能力……何となく感じてはいたが、事実は僕の予想を遥かに超えていた。だが、その力をお前なら世の為、人の為に使いこなせることを僕は信じている……普段から人の役に立とうとするその考え方や行動を見れば十分にな。これからお前は力ある者としてお前にできること、お前にしかできないことを実践していくんだ、いいね?」
「は、はい……あ、り、がとうござ、い、ます、フィネス兄さん」
フィネスの愛が篭った言葉はさらに僕の涙を誘う。最後は……
「ラウ。あなたはとても心優しく、男女、身分、区別なく接することのできる慈愛に溢れた子です。また、身体能力とは別に知性も大いに溢れている、素晴らしい可能性を感じていました。今回、ラウが話してくれたおかげでお母さん、あなたの可能性を感じていたことが間違いなかったとわかってすごく嬉しいです。これから世の為、人の為に生きることを迫られるかもしれませんが、無理をしてはいけませんよ。身体だけでなく心も無理せず、自分の信じる道を進みなさい……」
「か、母さん……ありが、と……ぅ、うう……」
母ネルの言葉に完全に涙腺崩壊しました。
『成長速度999倍』の話を省いたとはいえ、僕にとってはかなりぶっちゃけたカミングアウトだったのだが、こうして皆に受け入れてもらえるという最高の着地点に帰結するのであった。




