021「ラウ六歳(初等部一年生) まずは整理しましょう」
「ラウが……マルスのチーム『踊る道化師』に勝っただと……?!」
「……ああ」
ロイが驚く中、ライオウが事実を突きつける。
「ちょ、ちょっと待ってくれ……どうしてそんなこと……そもそも何で六歳のラウとマルスのチームが接点を持ってしかも戦う状況があったんだ……? おい、ラウ、どういうことだ?」
ロイが困惑しながら僕に問いかける。
僕が何て答えればいいか迷っていると、
「……すまん、ロイ。そのことについては口外しないよう私がラウ君に指示をしていた。お前がいらぬ心配をすると思ってな」
「な、当たり前だろっ! 息子だぞっ!!」
と、ロイが剣幕でライオウに食って掛かる。
「すまない……。そもそもの事の発端はライオネル……『オードリッチ家』がラウ君に対して仕掛けたワナだった」
「!?……オ、オードリッチ家? グエルモか?」
「……ああ」
「な、なんでここであいつ……オードリッチ家が出てくるんだ?」
ロイとライオウのやり取りを見るとどうやらライオネルの父親の『グエルモ・オードリッチ』は知り合いっぽい感じだ。
確か、『踊る道化師』との戦いの後、ライオウとミレーネが来た時に『グエルモ・オードリッチと先代のロマネシア・キング・ルミアは親友だった』とか言ってたっけ……。
いずれにしても、ロイもライオウも同世代なんだから何かしらの関係があるんだろうな。
そんなことを考えていると、ライオウがライオネルとの一件の詳細(ミレーネのことも含めて)を話し始めた。その話を聞いたロイやネル、フィネス、サイモンも驚きを隠せないでいた。
「そ、そんな……ライオネルがそんなことをしていたなんて……」
特に、運動会で意気投合していたサイモンはショックを受けていたようなので、
「サ、サイモン兄さん! 前はそうだったって話なだけで今、ライオネルは自分がしたことの重大さや父親に煽られていたこともあって、その、悪い奴じゃないんだっ!? だから……」
僕はフォローを入れる
「……ライオネルはお前の友達なのか?」
「う、うん……」
「同情じゃなく、本当にそう思えるのか?」
「う、うん。た、確かに今でも前と変わらず上から目線の部分はあるけど、でも、前みたいに敵意のあるものじゃないし、お互い、今は認め合っている部分もできて変わったっていうか…………とにかく、同情で言っているなんてことはないよっ!!」
「……そうか、わかった。お前がそこまで必死にフォローするってことはそれだけ今は大事な友達ってことなんだろう」
「サイモン兄さん……」
「まあでも一発は殴る。あとお前もだ……ラウ!」
ポカッ!
サイモンが軽いゲンコツを入れた。
「痛っ! えっ? なん……」
「当たり前だろがっ! どうしてこんなことがあったのに俺やフィネス、親父や母さんに相談しなかったんだ! 俺たちは家族なんだぞ! いくら口止めされていたとしても、それが起こる前にわかっていたことがあるだろ? 俺、言ったよな? 何かあったら相談しろって?」
「あ、う、うん……」
「ライオネルとちょっと揉めてるのは知ってたが、大ごとになりそうなときはちゃんと相談しろっ! 事後じゃない、事前にだ! わかったかっ!!」
「は、はい。ごめんなさいっ!」
サイモンが真剣な眼差しで僕のことを想い叱ってくれた。
その事が何よりもうれしく、また、みんなへの申し訳なさを痛感した。
「俺にじゃない! みんなに謝れっ!!」
「父さん、母さん、フィネス兄さん、本当にごめんさいっ! 今度からは何か起こる前にちゃんと相談します!!」
そう言って、家族に頭を下げて謝った。
「……もういいよ、ラウ。サイモンが私の言いたいことは全部言ってくれた……サイモン、ありがとう」
「べ、別に、そんな、か、家族として当たり前のことを言ったまでだよ……」
ロイが心を込めて感謝の言葉を言うと、サイモンは急に照れ出し、あたふたしながら返事を返した。
「サイモン、立派になったな……」
ロイがサイモンの頭を撫でる。
サイモンは顔を赤くしながらも特に拒否せず、そのままロイに頭を撫でさせた。
「あ、とりあえず、補足としてだが……」
ライオウが家族に向かって進言する。
「マルスのチーム『踊る道化師』とラウ君が戦ったのは事実だが特にケガもなかったし、むしろ、マルスのチームは最初から手荒なマネをするつもりはなかった。もちろん、一歩間違えれば大ごとになりかねないのは当然だが……とにかく、ラウ君がケガをしたということはないので安心して下さい……。皆、すまなかった。私の無神経な発言を許してくれ」
ライオウが『自分も無神経だった』ということで家族に対し頭を下げて謝罪する。
皆、英雄剣士という国の英雄が一家族に頭を下げたという目の前の出来事にただただ呆然としていた。
「や、やめてくれ、ライオウ! わかったから……」
ロイがライオウの下げた頭を上げさせる。
と、ここでフィネスが二人に声をかける。
「ちょ、ちょっと整理させてもらってもいいですか? あまりにも情報が多すぎて……」
「うむ、そうだな。そうしてくれ……」
と、ここでフィネスがこれまでの情報を整理する。
「えーと、まず……『中等部への飛び級』の件ですよね? 僕ら三人とも先生方に認められて飛び級の生徒として抜擢された……」
「うむ、そうだ。ただし、あくまでも個人の意見を尊重するので強制ではない」
「わかりました。では、次は父さんとライオウ様の関係ですが、まず、父さんはあの……『七武神』というのは本当……なんですか?」
「うむ、本当だ。お前たちには初めて話すな」
「どうして今まで黙ってたんだよっ! 七武神の人だなんて……そんな凄いこと」
サイモンが隠してた理由が全くわからないということでロイに詰め寄った。
「私がその事を話すと正直、お前たちがどう思うか、心配だったんだ……」
「??……どういうこと?」
「『七武神』という存在はこの国からすれば国を支える『柱』のようなもの。そんな特別な存在の一人が父親となったとき、子供たちは苦労するんじゃないかと思ったんだ……」
「「??……どういう意味ですか?」」
フィネスとサイモンがロイの言ったことに理解できていなかったみたいだったので、僕が間に入って進言する。
「……つまり、『七武神の息子』というプレッシャーだったり、または『七武神が父親』という理由で近づいてくる迷惑な輩や、やっかい事に巻き込まれるんじゃないかとか……そういうこと?」
ロイが僕の発言を聞いて驚いた顔をする。
「……そ、そうだ。確かにそうなんだが、よく今の言葉だけでそこまで深い理解ができたな、ラウ」
「あ、い、いや、たぶん、そんなことかなぁ~って何となく思ってみただけだから……あはは」
「……まあ、でも、そういうことだ」
「そっか……父さんが僕たちに気を遣ってくれてたんだね……ありがとうございます」
フィネスが頭を下げる。
「おいおい、やめんか、フィネス。親が子供の幸せを考えるのは当たり前のことだ。お前たちに気を遣うとかそんなことじゃないぞ」
ロイがフィネスの頭を撫でる。
フィネスもまた嫌がらず、ロイの思うがままに頭をナデナデさせた。
「……さて」
「問題は……ここからだな」
フィネスとサイモンが真剣な面持ちで気持ちを切り替えライオウに質問する。
「「ラウと戦ってみたい……て、どういうことですか?」」
フィネスとサイモンの二人から質問を受け付けると、ライオウは涼しげな顔でラウのことを話し始めた。
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現在までの物事の整理一覧表
・中等部への飛び級に三人が選ばれる
・ロイとライオウが昔の仲間で、ロイは『七武神』の一人
・ラウが『七武神』の一人、マルス・ヴィンテージの『踊る道化師』と戦い、勝ちを収めた
・ライオウはラウとの対決を望んでいる ←いまここ
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