020「ラウ六歳(初等部一年生) ロイの過去、ライオウとの関係、ラウの強さ」
すみません。
ちょっと、第十一代国王のウィンスター・キング・ルミアと第十二代国王のロマネシア・キング・ルミアがごっちゃになってました……すみません。
ライオウ・スピルデンやマルスの『七武神』と友人だったのは、第十二代国王のロマネシアとなります。
さっき、気づいてビックリでした。
そんなわけで、修正しております~。
「今から四十年前――第十代国王ハミルトン・キング・ルミアの圧政で国も国民も苦しんでいた時代…………」
英雄剣士ライオウ・スピルデンが横で見守る中、ロイが静かに自身の過去を語り始めた。
「……その息子、第十一代国王のウィンスター・キング・ルミアが父親の王政に反旗を翻しクーデターを起こした。その時、そのクーデターに協力したのがウィンスター・キング・ルミア国王の息子であり、お前たちも知っている先代国王である第十二代国王ロマネシア・キング・ルミア、そして、当時学生時代からの友人、仲間だった、そこにいるライオウ・スピルデンと私を含めた『七武神』……」
「「「ごくり……」」」
フィネス、サイモンそして僕は、これまで絵本や歴史で知っていたこの国の話をその当事者である、しかも『七武神』であり、自分たちの『父親』という身近な存在から……生々しく、そして、その絵本や歴史書では語られていない『真実』も含めた話を聞くことに今までに経験したことのない緊張感を持って全力で耳を傾けていた。
「当時の国王、ハミルトン・キング・ルミアにも彼を守護する『七天』という存在もおり、彼らとの戦いは壮絶を極めた…………が、最後はライオウが『七天』のリーダーに止めを刺し、我々のクーデターは成功を収めた」
「す、すげえ……絵本や歴史に出てきた『七天』と親父は実際にやりあったってのかよっ?!…………凄過ぎるっ!!!!」
最近、ロイのいないところで『父さん』から『親父』という言い方に変わっていたサイモンが、ロイの話に興奮、夢中になり、思わず『親父』という口調で自身の感動を漏らしていた。
そんな口調で感動を漏らすサイモンを見たロイは半ば諦め顔をしていたが、同時にサイモンの個性、自立部分の成長にフッと笑みを零す。
「……クーデター成功後、ウィンスター・キング・ルミアは『クーデターの成功は息子と友人たちのおかげだ』と言い、息子のロマネシア・キング・ルミアに王位を継承し、ウィンスター様は『大長老』と言う形で現役を退く。以後、ロマネシア・キング・ルミアの王政は、現王政の基礎となる『国民への豊かさの享受』や『適切な税制』『自由市場の開放』といった新王政を推進していこうとしたが、しかし、苦難はまだこれで終わりではなかった……」
「……ご、五大国頂上戦争」
フィネスが呟く。
「そうだ、フィネス。『五大国頂上戦争』……これまで圧政を敷いていた第十代国王のハミルトン・キング・ルミアだったが、他国家からすれば『無慈悲で獰猛な荒ぶる獅子王』と恐れられていた王だった。しかし、その王がクーデターにより命を落とし、また、新王政は『国民と豊かさを享受する』というような体制にガラッと変わったことを受け、他国家は『現在のルミア王国、恐るるに足らず』とこれまでハミルトン王に苦渋を舐めてきたことも含め、五大国すべてが戦争状態へと突入した。これが『五大国頂上戦争』だ」
絵本や歴史ではハミルトン王の詳細は特に記載はなかったので今のロイの話は新鮮だった。まあ、自国の王だった人間をあまり悪く書かなかったのは『大人の事情』『身内びいき』ということなのだろう。
「五大国頂上戦争……この戦争は五大国すべてが争ったというよりもクシャリカ王国とペティシ王国が周辺国であるラズベリア王国、イーロン王国を巻き込んで我がルミア王国に挑んだというのが正しい」
「そ、そうなんだ!? 歴史の授業とかでは大まかに『五大国すべての国と戦った』ということくらいしか聞かなかったのに……」
「……まあ、現在、五大国は表向きには友好を結んでおり、互いの国へ行き来したりする関係です。そうなると歴史をそのままの事実で伝えると周辺国……特にクシャリカやペティシにとってはあまり面白くない話ですからね。まあ、この辺も『大人の事情』という奴です」
とライオウが淡々と説明しロイのフォローをする。
「そして、私たちはその戦争ですべての国を退け、戦争に終止符を打った。ここで当時のイーロン王国国王である『チェン・イーロン』が当時の国王ロマネシア・キング・ルミアに『ロマネシア王よ、今後はルミア王国が五大国の頂点として世界を統治し、五大国すべてを繁栄させよ。我が国は貴殿の国にこれ以降、絶対なる協力を約束する』と宣言。同時にラズベリアもイーロン王国と同様に支持することを宣言した……こうして、我がルミア王国はこの『五大国頂上戦争の勝者』という形になり、世間にもそう浸透していき、そして今に至るというわけだ」
ロイは懐かしみながらも、同時に暗い顔をしていた。
「……また、クシャリカなのか」
ロイがライオウの向けて呟く。
「ああ、クシャリカだ。あそこは昔も今も変わらず軍事国家だし、それこそ血気盛んな連中が多い国柄だからな。そう考えると今回の軍部の活発化は、まだ初等部一年生で六歳という幼女がルミア王国のトップになったというニュースを聞けば色めき立つのもわかりやすいと言えばわかりやすい……」
「まったく、クシャリカ王国は今度は一体何を企んでいるんだ!」
「……現状はクシャリカ王国では表向きはいつもと変わらない振る舞いをしているそうですが、それとは対照的に軍部が武器の搬入や兵士の増強を促進している……おそらくウチに(ルミア王国)戦争を仕掛けるのは間違いないだろう」
ライオウとロイ二人だけが見える視点でいろいろと論じ合っていた。
僕ら三人は父親と英雄剣士の二人が生き生きと話すのを見て不思議な感じになる中、ネルが後ろから僕らに声をかけた。
「あの二人はね、昔から……ちょうど今のラウと同じ初等部時代からずっと親友として切磋琢磨してきたのよ」
ネルがライオウとロイを尻目に僕らに二人の関係を説明した。
「二人は初等部時代から凄かったのよ。ライオウさんは剣士として、ロイは武道家として、その名を轟かせていたわ」
「へーそうなんだ……」
「何だか意外というか、わからんでもないというか……」
フィネスとサイモンがネルの話を聞いて感心やら驚きやら共感やら感情が慌しかった。
それは僕も同じだった。
「でも、二人と他の七武神たちも二人の初等部時代からの仲間でね、いっつもつるんで何かしてたわ。だいたい、ライオウとロイがセットでひとつのグループを作って、あともうひとつ、七武神の一人のマルス・ヴィンテージっていう魔法剣士の人がグループを作って二グループでいろいろと活躍していたわ」
「マルス・ヴィンテージ……か」
そう、あの運動会前日にライオネルが僕に焚きつけた冒険者ギルドの傭兵結社『踊る道化師』のリーダーで、戦闘後、「ウチのチームにたまに参加してみないか?」と誘った男だ。
確かに、チームの仲間もマルスに『七武神だった』という話をしていたな。
それにしても、こうも身近に『七武神』が存在していたとは驚きである。
特にロイなんて父親だし、血縁だし、一番の驚きだったということは言うまでもない。
そんなロイとライオウが一通り、最前線の情報やお互いの意思疎通をした後、
「……まあ、そんなわけで申し訳ないが三人を『中等部へ飛び級』させてもらうよ?」
「わかった、わかったよ……認めるよ。だが、フィネスとサイモンは二人とも了承したから良いとしてラウ、お前はどうなんだ?」
「あ、その……」
そう、僕だけはまだ『中等部への飛び級』を躊躇していた。
これ以上、目立ちたくないということもあるが、それ以上にミレーネと別れるのが一番つらい。
「……ミレーネのことかな?」
(ドキッ……!!!!)
ライオウは以前と同じようにこっちの心を察したかのような言葉をかけた。
「ま、まあ、そ、そう……ですね」
唐突にミレーネという単語を聞いて動揺した僕はつい同意する。
「なるほど……まあ、その辺に関してはミレーネ、あと専属従者のライオネルも一緒に『中等部へ飛び級』させても良いと私は考えてます」
「えっ?! いいんですか?」
「ええ。個人的には二人とも持っている潜在能力は高いと私は判断しています。ただ、まだ中等部へ上げるのは早いかと感じる部分もありますが、それはそれでラウ君が中等部への飛び級に了承してくれるのであればその辺は対処、フォローします。どうですか、ラウ君?」
ライオウは顔を近付け、僕の肩を掴み、さらに追い討ちをかける。
「ラウ君、君の能力は今のところ『敏捷性』くらいしか表には出ていないが私にはわかる。君はまだ能力を隠しているね。しかも、おそらくだが、相当高い能力を持っていると私は見ている!」
「!?……うっ!」
ライオウはかなりの自信を持ってラウに詰め寄った。
「君とマルスのチームである『踊る道化師』との戦いを傍で見て私はある想いを感じた。それは…………君と戦ってみたい、だ」
「「「えええええ!!!!!!」」」
フィネスやサイモンはおろかネルもライオウが興奮まじりにラウを口説く様を見て驚愕している。
しかし、ロイはライオウの口説きだけでなく、もうひとつ気になる部分についてライオウに問いかける。
「マルスのチームとラウが……戦った? どういうことだ、ラウ、ライオウ……っ!!!」
ロイの質問にそれはそれで確かに「何の話だ?」という程度でフィネスとサイモン、ネルが反応する。
「ラウ君は一度、マルスのチームである『踊る道化師』と戦って…………勝っている」
「「「「はぁああぁああぁ~~~!!??」」」」
休日の朝から急転直下の話が二つも三つも起こり、もはや感情の大洪水となったハイドライト家であった。




