019「ラウ六歳(初等部一年生) 飛び級と国の事情とロイの告白」
「ライオウ……飛び級の話は待ってもらおうか」
「……ロイ」
父ロイがライオウの『飛び級』の話に待ったをかけた。
「「と……父さん?」」
ロイが今まで見たことのない威圧を乗せた顔で『飛び級』の話に待ったをかけたことや、英雄剣士ライオウ・スピルデンに向かって『ライオウ』と呼び捨てたことにフィネスとサイモンが驚く。
「中等部への飛び級の話……つまり、それは『軍事参加』を考慮した……いや、考慮ではなく『軍事参加目的』なのだろ?」
ロイが今にも食って掛かりそうな顔でライオウにプレッシャーをかける。
「……ああ、ロイ、君の言う通りだ」
ライオウは素直に認める。
「……『戦力の強化』。これが今、我々の国が抱えている大きな問題だ。お前もわかっているはずだ……ロイ」
ライオウは素直に認めると共に厳しい顔で威圧を込めて返事を返す。
「ああ、わかっている。しかし……この子たちはまだ……まだ初等部だぞ! しかもラウに至ってはまだ初等部に入学したばかりの一年生だ! それは、あまりにも時期尚早だろうがっっ!!!」
ロイがすごい剣幕でライオウの胸倉を掴み大声を上げる。
これまでロイがそんな形相をして大声で叫ぶような光景は見たことがなかったフィネスやサイモンはただただ驚いていた……というよりビビッて足が竦んでいた。
しかし、そんな勢いで迫るロイに対しても微動だにしないライオウは、胸倉を掴んでいるロイの両腕を掴みながら答えを返す。
「……クシャリカ王国の軍部の動きがミレーネ女王陛下が即位して以来、急激に活発化しているのはお前も知っているはずだ、ロイ」
「!?…………そ、それは」
答えに詰まるロイ。
「それともう一つ……お前の知らない問題もある」
「何っ……?!」
ロイが狼狽える中、ライオウは更に厳しい顔で『あるもう一つの問題』を告げる。
「魔物の動きがここ最近変化している……」
「魔物の動き!?……ど、どういうことだ?」
「……ルミア王国周辺に限って魔物が組織化し山村を襲っているとの情報が最近増加している」
「何っ?! 魔物が組織化だと! バ、バカなっ!!」
ライオウの言葉に耳を疑うロイだが、ライオウは間違いないと答える。
「まだ調査中で確定はしていないが、私たちはこの二つの問題が裏で繋がっている……と考えている」
「ま、まさか、クシャリカ王国と魔物の組織化が繋がっている……だとっ!? あ、ありえん!!」
「うむ、本来ならな……。しかし、この二つの事柄は調査していくと妙に符合する点が多いという事実が浮かび上がってきている。いずれにしても、現状、初等部の生徒でも能力的に大人に匹敵する生徒であれば実戦に出てもらう必要性が出てきたということだ。勿論、我々としても初等部の生徒に出征することは望んでいない。しかし、万が一の時を考え、早いうちから有能な生徒には教育や訓練だけでも受けさせておけば敵国の兵や魔物に襲われても対処でき生存できる可能性が高まる。勿論、可能であれば実戦での投入を考えているのも否定しないがな……いずれにしても事はお前が思っているより深刻で準備は急を要するということだ」
「う、くっ……!?」
ロイが言葉に詰まる。
「……それに子供たちだけでなく、わかっていると思うがロイ……お前も出征することになる」
「えっ?」
「父さんも?」
「!?」
フィネスとサイモン、そして僕はライオウの言葉に反応する。
「いずれわかることだ。私から話そう……よいか、ロイ?」
「……」
ロイが黙り込む。
「返事がないということは了承したと私は捉え話すぞ、よいな?」
「ま、待て……!」
ロイがライオウを止める。
「わ、私が、自分で…………説明する」
「……わかった」
そう言ってライオウが引くと、ロイが意を決したかのような顔で話し始めた。
「フィネス、サイモン、そしてラウ……これまでお前たちに隠していたことがある……」
「「「…………」」」
三人が父親の話をじっと聞いている。
「お前たちには黙っていたが…………私はルミア王国の七武神の一人だ」
「「「ええええっ!!!!」」」
僕たち三人はロイのカミングアウトにただただ驚いた。
そりゃあ、そうだろう。
過去の戦争でルミア王国に勝利をもたらせ、それだけでなく、その後の国の繁栄をももたらした七武神だなんて。
さすがにそんなことを今まで隠していたなんて……。
ロイは静かに、七武神のこと、そして、ライオウ・スピルデンとの関係などを話してくれた。




