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自作自演の無双能力者  作者: てんやもの
第二章 ルミア王国魔法学園/初等部編
19/46

018「ラウ六歳(初等部一年生) 運動会閉幕。新たなる動き」



「な、何だ、今のは?……見えたか、パーシー?」

「何も……見えなかったよ……リチャード兄様」


 エイワス兄弟。


「はっ? 何、今の? すっごく興味ありますけどっ!?」


 アネスタ・グビルネ。


「むっ?! 何だ、あの尋常ならざる速さは……」


 アビゲイル・マスカレード。


「そ、そんな……私の目でも僅かにしか彼の速度を追えなかった…………何者っ?!」


 リン・カーペンター。


「ふっふっふ……よくやった、我が忠実なる弟よっ!!」


 得意満面の笑顔を向けるサイモン・ハイドライト。


「……はぁ~、サイモンの差し金だな。大丈夫だろうか、ラウは。今後の学園生活が心配だ」


 と、頭を抱え苦悩するハイドライト家長男、フィネス・ハイドライト。


 サイモンの命令により、圧倒的……というより異常なまでのやり方で一年生の部の『二人三脚』を制した僕とミレーネだったが、ここで冷静になった先生や生徒たちから『物言い』が入った。


「あの一年生のラウ・ハイドライト君の走りはすごかったが、だがしかし、この競技は『二人三脚』です。あのような片方を担いで走るのはルール違反ではないでしょうか?」

「確かに。あれはもはや『二人三脚』というより『借り物競争』に近いな」

「それにしてもミレーネ女王陛下の肌に触れ、さらに担がれるとは何たる不埒な……うらやまけしからんっ!!」


 と、先生たちの協議の結果、僕とミレーネは失格となった。


 おいっ! 最後の先生!


 お前、ちょっと犯罪の匂いがするぞっ!!


 そんなわけで、失格となった僕らの次に二位でゴールした三組が一年生の部のトップとなり勝ち星をゲット。


 よって、三組が逆転優勝となって今年の運動会は幕を閉じた。


「どうだ、フィネス! 私の言った通りお前の為に優勝してやったぞっ!!」

「あ、いや、だから、これ、団体競技…………まあ、いいや。ありがとう、アネスタ」

「ちょ、やめろよ、フィネス。照れるだろーー!!!」


 と、三組の優勝が決まり、テンション最高潮のアネスタ・グビルネといつものアネスタの調子に諦め、合わすことに徹した苦悩のフィネスを中心に逆転優勝で盛り上がる三組だった。


 ちなみにもうひとつのタイトルである『応援賞』を密か(本人にとっては密か。しかし、周囲からすれば明らか)に狙っていた一組の総合応援団長サイモン・ハイドライトにその栄誉が授与されることはなかった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



――運動会閉幕後、職員会議。


「皆様、お疲れのところすみませんが早速報告をお願いします」


 会議の議長らしき人物の言葉で会議が始まる。


「は、はい。六年生総合担任のシーマです。六年の各クラス担任からの報告では、六年生からすぐに『飛び級』させるほどの生徒は二人……リチャード・エイワス、パーシー・エイワスのエイワス兄弟です」


 学年総合担任の女性は緊張した面持ちで報告を行う。


「なるほど、エイワス兄弟ですか……問題ないでしょう。では次を……」


 議長らしき人物が了承し、女性はホッとして肩を撫で下ろす。


「は、は、はい……五年生総合担任のマルクです。五年生では……」


 そうして各学年の総合担任が各クラス担任の報告を元に『中等部への飛び級候補生徒』を報告、それを会議の議長らしき男が選定、判断していった。


 この会議の議長らしき男……その男は金髪のロングヘアで年齢が50歳とはとても信じがたいほどの若々しく精悍な顔立ちをしていた。


 男の名は……英雄剣士ライオウ・スピルデン。


 今年から運動会を通して『中等部への飛び級生徒』を選抜する『現場最高責任者』として職員会議を開いていた。


 そして、最後に一年生総合担任の男性から報告が入る。


「い、一年生総合担任のマイクです。一年生からすぐに『飛び級』させるほどの大きな才能と可能性を持つ生徒は一人……ラウ・ハイドライトです」

「ラウ・ハイドライト……あの子か、最後の『二人三脚』で驚くほどの速度で他の生徒をぶっちぎった……」

「た、確かに……。まだ、魔法や武道など他での才能は入学したばかりで不明ですが、あの身体能力は驚異的ですね……」

「ミレーネ女王陛下を抱き寄せあのような全力疾走するなど、うらやまけしからん。厳罰に処すべきでは?」


 ザワザワ……。ザワザワ……。


 さっきまでの会議の緊張感を破るほど、運動会最後の種目『二人三脚』で『敏捷性100』のステータス値で全力疾走を行ったラウのパフォーマンスは全生徒だけでなく全教師にも大きな印象を残していた。


 一人、最後のコメントの教師は前回と同様、犯罪の匂いをほのめかすパフォーマンスはここでも健在だった(歪みねーな)。


「ラウ・ハイドライト……」


 英雄剣士はその報告を受け、一人、虚空を眺め、様々な可能性や自身の願望などの思いに耽っていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



――次の日。


 運動会の翌日は学校が休みだったので朝は父に武道の稽古をつけてもらっていた。


「ラウ……だんだん型も出来上がってきたな、いいぞっ!」

「あ、ありがとうございます!」


 今、スタータス値はビショップにお任せしてある。


≪この『成長速度999倍』という能力の異常性がバレないのと、年相応の能力、且つ、安全が確保できる状態……というマスターの求めるステータス値を設定致しました。とりあえず、このくらいが妥当でしょう≫



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


名前:ラウ・ハイドライト

年齢:六歳

階級:ルミア王国傘下ハイドライト村の

   下級貴族の三男


[基本能力]

体力:30

敏捷性:100

攻撃力:30

防御力:100

魔法力:0

魔法量:0

知力:999


[魔法]

治癒魔法/1……[詳細]『浄化回復クリアリング

捕縛魔法/1……[詳細]『締まる鎖ロッキング・チェーン


[特殊魔法]

偽装カモフラージュ

ウィンドウ


[スキル]

なし


[武道]

ルミア王国一般武道/習得


[言語]

ルミア語/習得


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


≪敏捷性に関しては、マスターが敏捷性100の扱いに慣れてきたのもありますし、また、学園でも周知の事実になったようなのでステータス値はそのまま100で設定してありますので、あしからず……≫


 ビショップ、マジ有能。


 ということで、『成長速度999倍』という能力は基本能力の高さだけでなく、一度受けた魔法や武道、スキルも体験、経験すれば獲得できるというチートのインフレが中々高いので、その加減をビショップに相談できるようになったのはありがたかった。


 現状、ロイの武道の稽古で体験した『ルミア王国一般武道』は習得済みであるがさすがにそれがバレると何かと面倒なことになりかねないのではないかというマイ・チキンハートのネガティブ思考によりそこもバレないように自作自演を振舞って稽古に臨んでいた。


 そして、稽古がちょうど終わったタイミングで玄関のベルが鳴る。


「はーい……」


 髪は茶色のミディアムヘアで瞳も茶色、年齢は二十五歳だがクリッとした大きな瞳が年齢よりも若く見えるという特徴のウチのメイド、マーミア・トリータリヤがパタパタと玄関へ向かっていった。


 ちなみに、マーミア・トリータリヤは元は奴隷民だったとロイがいつか話してくれた。


 ロイの話だと十年前に奴隷商からマーミアを買い、前にいたメイドがマーミアをメイドのノウハウしっかりと教育したそうだ。しかし、前にいたメイドは七年前に病死で亡くなったらしく、ちょうどマーミアがメイドとして一人前になったタイミングで亡くなったとのことなのでロイはこれもまた『縁』だったのかもしれないな……としみじみと話してくれた。


 そんなメイドのマーミアが玄関に行くと、


「だ、だだだ、だ、旦那様~~~~~~っ!!!!!」


 と、慌てふためきながら叫ぶようにロイを呼んだ。


「?……一体何事というのだ?」

「何でしょう……?」


 僕もロイと一緒に玄関へと向かう。


 そして、そこにいたのは……、


「……ラ、ライオウ・スピルデン!?」

「あっ! ライオウさん」


 玄関には『泣く子も笑顔になる』……英雄剣士ライオウ・スピルデンが立っていた。


「お邪魔するよ……ロイ、あと、ラウ君」

「あ、どうも、おはようございます……」

「はい、おはようございます」


 ライオウは優しさが溢れそうな笑みを浮かべて朝の挨拶を返してくる。


 これ、本当、五十歳か?


「……何しに来た、ライオウ」


 すると、ロイが怪訝な表情でライオウ・スピルデンを『ライオウ』と名前で話しかけた。


「何、別に大したことではない。ラウ君やフィネス、サイモン君に対して学園からの通達があったものでね、それで伺った次第だ……」

「その程度のことなら手紙でも送れば済む話なのでは?」


 柔和な態度で接するライオウに対し、ロイは少々厳しい態度で対応していた。


 この二人……何だ?


 年齢が近いということもあるので、もしかしたら昔の友人かな、とも思ったけどそれにしては雰囲気が少し物々しい感じがする……。少なくとも、何かしらの深い関係があるようだが一体……?


「ロイ! 何してるの?!」

「……ネル」


 ここで、母親のネルが二人の間に入ってきた。


「お久しぶりです、ネルさん……相変わらずお美しい」

「まあ、ライオウさんも相変わらず上手ですね、さすがです」

「おいっ! ライオウ、ふざけるなよ……」


 ロイが二人のやり取りに何やら嫉妬めいた感情で間に入る。


「もうっ! あなたったら! ライオウさんに対しては本当、理性が効かないわね。普段はもっと柔和でダンディーなのに」

「え、あ、す、すまん……」


 ロイはネルに一方的に言われシュンと落ち込む。


「ライオウさんは子供たちのことで学園側として見えられたんでしょ? だったら、ちゃんと中に入れて話聞いてあげなきゃダメじゃないっ!」

「す、すみません……」


 さらにシュンとするロイ。


「こんなロイは見たくないな~」と思っていると、


「ほら、ラウも横で『お父さんのそんな姿見たくない』って顔してるわよっ!」


 マ、マザー……察し良すぎっ!


「そ、そうだな……すまなかった。ライオウ……さあ、中に入ってくれ」


 と、ロイはいつもの冷静さを取り戻し、ライオウを中へと招く。


 ちょうど、ライオウが応接間に案内され、ネルが紅茶と菓子を用意しテーブルに持ってきた頃、二階からフィネスとサイモンも一階の応接間に降りてきた。


「ラ、ライオウ・スピルデン様っ!!」

「ほ、本物だっ!!」


 フィネスもサイモンもまさか朝っぱらからウチの応接間にルミア王国最強剣士のライオウ・スピルデンがいるとは夢にも思ってなかったらしく声が上ずっていた。


 無理も無い。


「それで、何しに来た…………んでしょうか、ライオウ様」


 ロイが玄関とは違う礼儀を弁えた口調で用件を聞く。


「うむ……実は、今年の運動会から『あること』に対して生徒を選抜するという趣旨があったものでね……そして、その選抜に君の息子たちが選ばれたことを報告しにきた」

「えっ……選抜?」

「な、何のことだ……でしょうか?」


 フィネスもサイモンもライオウの言葉に疑問を投げかける。


「今年の運動会から成績や身体能力の高さなどを判定し、能力の高い子、将来性の高い子は『中等部への飛び級生徒』として選抜しようという趣旨がありました。そして、今回、その『中等部への飛び級生徒』としてハイドライト家の三兄弟、フィネス、サイモン……そしてラウ君がその選抜生徒に選ばれたということです」

「ちゅ、中等部への……飛び級」


 とりあえず、初等部に入ったばかりの一年生の僕としてはポカーンな話だった。


 しかし、僕とは対照的に二人は何やら興奮して喜んでいる。


「ちゅ、中等部へ飛び級……そ、それって僕らが認められたってことですか?」


 フィネスがライオウに尋ねる。


「そういうことです、フィネス君。君は下級貴族でしかも五年生でありながら初めて、上級貴族もいる学園で生徒会長に選ばれた。これは素質も才能も将来性も十分と言って差し支えないでしょう……」


 ライオウがフィネスの評価は高いということを威厳ある声色で答える。


「あ、ありがとう……ございますっ!!」


 フィネスは満面の笑みでお礼をする。


 こんなフィネスの笑顔は初めてだ。


 よっぽど、今回の評価がうれしかったんだろうな。しかも、英雄剣士ライオウ・スピルデン直々だもん。


「あと、サイモン君……」

「は、はい……!!」

「サイモン君の騎馬戦での活躍や総合応援団長として仲間を盛り上げたそのカリスマ性はとても将来性の高い生徒だと学園は高く評価している」

「マ、マジっすかーーー! あ、いえ……ありがとうございますっ!!!」


 まさかあの応援団長の振る舞いも評価されていたのかっ!?


 ま、まあ、確かに一組はサイモンを中心に皆、盛り上がってテンション高かったもんなー。


「……そして、ラウ君」

「は、はい……」

「君は、ライオネル君の一件や運動会での二人三脚でのあの敏捷性が全教師から高く評価された」

「あ、でも、ルール違反でしたが……」


 と、返答する横でサイモンのほうを見るとサイモンが目を逸らした。


 このやろ。


「まあ、二人三脚のルールではそうだが……しかし、先ほども言ったように今回の運動会からは『能力の高さや将来性ある生徒』を選抜する趣旨があり、その視点で言えば文句なく選抜されて当然です」

「あ、ありがとうございます……」

「あと、君と出会って仲良くなってからのミレーネの成長ぶりとかは私個人が高く評価している……」

「あ、ど、ども……」


 何だか周囲の視線が若干痛い感じがあるのは気づかないフリをした。


「……というわけで、以上の評価から君たち三人を我がルミア王国中等部へ飛び級での進級をしてもらいたい! 引き受けてくれるかい?」

「も、もちろん!」

「よろこんで!」


 フィネスとサイモンは二つ返事で答える。


 しかし、僕は返事を決めあぐねていた。


 理由は勿論、これ以上目立つようなことをするといろいろと面倒なことにならないかというチキンハートの警告がカンカンカンカン鳴り響いていたからだ。


 そんな僕が返事を考えて黙っていると、


「ライオウ様……いや、ライオウ……それはちょっと待ってもらおうか?」

「と、父さん……!?」


 ロイが『ライオウ』という口調に戻し僕とライオウの間に悠然と入る。


「……ロイ」


 ライオウがロイの言葉を予想していたのか、親密モードの顔から厳しく腹を据えた顔に切り替わった。



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