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自作自演の無双能力者  作者: てんやもの
第二章 ルミア王国魔法学園/初等部編
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017「ラウ六歳(初等部一年生) 運動会 目立つ人物たち その2」



 アビゲイル・マスカレード


 あのプライドの高いライオネルの口から「関わりたくない」と言わしめるクラスメートの一人。


 髪色は濃い目の青でロングヘアーのアシンメトリー。目も濃い青の瞳をしている。


 今更だが、この世界の人々は髪の色と瞳の色がだいたいが同じである。


 さて……ライオネルの話だと、このアビゲイル・マスカレードという人物、とにかく自己中心的な会話しかできない上、自分大好きなナルシスト上級貴族という貴族内でも変人扱いされている人物だった。


 また、『ミレーネ女王陛下ファン』を公言するほど、ミレーネを好きどころか、その好きという自分の感情を超越して『神格化』し、『ミレーネ教教祖』とまで言われるほどミレーネに心頭している男だった。


 その為、さきほどライオネルに突っかかったのだろう、とはライオネルの談。


 まあ、その点に関しては「ライオネル」も変わらないと思うが、その事は言わないでおいた……面倒くさいので。


 ちなみに、入学して今まではまったく目立つ存在じゃなかったのでまったく気づかなかったのだがそれはどうしてなのか、と、ライオネルに聞いてみたが


「そんなの僕がわかるわけないだろっ! 本人に聞いてみれば?」


 と、ほくそ笑みながら答える。


 おそらく、アビゲイルと関わって僕が狼狽する光景を見るのも面白いな、とでも思っているのだろう。


 ムカつくのでそれ以上、アビゲイルの質問をするのはやめた。


 そして、二種目めの『騎馬戦』が始まった。


 アビゲイルは宣言どおり、一年生の部で見事勝利をつかみ勝ち星を上げた。


「私は有言実行の男……アビゲイル・マスカレードだっ! 見てましたか、ミレーネ様っ!!」


 アビゲイルは叫ぶようにミレーネにアピールをする。ちなみにこいつの声が美声でしかも顔だけはかなりのイケメンなのでナルシストの性格がなければかなりモテたであろう『残念貴族』と、女子生徒は溜息を何度も吐いているとかなんとか……。


 とは言え、ある意味『スター性』を持っている部分もあり、今回の騎馬戦はまさにその『スター性』が輝いた……まさに『アビゲイル劇場』と相成った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 さて、第二種目の『騎馬戦』の結果を見てみよう。


 一年生の部では我がクラスが勝ち星を上げ、他にも四年生と六年生で勝ち星を上げたので『騎馬戦』は一組が勝利となり、十ポイントを取った。


 ちなみに騎馬戦の四年生の部で勝ち星を上げた一組のメンバーには一人有名人が在籍している。


「ふんっ! 骨のない相手だったぜっ!!」


 名は『ラン・カーペンター』。


 赤と黒のストライプをしたウルフヘアーで黒い瞳を持つワイルドな女子生徒。


 学園内で目立つ人物はだいたいが貴族出身が多い中、なんと『奴隷民』でありながら上級生、下級生問わず周囲から一目も二目も置かれている存在。その理由としては十歳にして大人以上の『異常なまでの身体能力の高さ』と『達人レベルの武道家』という点だ。


 『初等部の女番長』という二つ名を持つが、かわいい物に囲まれていたいし、かわいい格好を常にしていたいという、自身の武器と相反する『乙女体質』である為、本人はその二つ名を嫌っているらしい。


 そんな感じで『騎馬戦』で十ポイントを獲得した一組は三組を追う形となった。


 しかし、次の三種目めとなる『四百メートルリレー』では二組が勝ち星を上げ十ポイントを獲得。


 さらに、四種目めとなる『百メートル走』では四組が十ポイントを獲得。


 一年生の部ではライオネルがぶっちぎりで一位を取り、勝ち星を上げたがそれ以外の学年では一組は勝ち星を上げることができず、結果、四組が十ポイントを獲得した。


 そして、最終種目である『二人三脚』を残して、ポイントは一組、二組、三組、四組共に十ポイントを獲得して並んでいた。


 ちなみに五組は一ポイントも獲得できないでいるが、五組は『頭脳明晰クラス』という位置付けで学園の中で『魔法の研究・発展』や『政治・経済の研究・発展』などに特化した子供たちが在籍する『頭脳集団クラス』ということもあり、運動会では毎年、こういう形で影を潜める。


 そして運動会も大詰め、最後の種目『二人三脚』がやってきた。


「おい、ラウ! ミレーネ様には無理をさせず、且つ、一年生の部の勝ち星を必ず取って優勝を決めろよっ!」


 と、ライオネルが僕に無理難題の矛盾な要求を突きつけてくる。


「そうだぞ、ラウ! ライオネルの言う通り、ミレーネ様にはくれぐれも無理をさせずに勝利を物にしろ、いいなっ!!」


 と、ライオネルの横で赤と白ガラの縁起の良さそうな服を着て『必勝』のハチマキを巻いたサイモン兄さんがライオネルと似た無理な要求を重ねてきた。


 何か、ライオネルとサイモン兄さんが気のせいか、仲良くなっている……?


 ぜひとも気のせいであってほしい……。


 ところで現在、ライオネルやサイモンが僕に発破をかける理由としてはこの最後の種目である『二人三脚』がこれまで六年生から二年生の部まで競技が終了しており、現在、フィネス兄さん率いる三組が勝ち星を二つ稼ぎ、一組もまた勝ち星を二つ上げて同点となっていた。


 つまり、一年生の部の結果次第で優勝クラスが決まるという大盛り上がりの展開を見せていた為であった。


 ちなみに、一組と三組以外のクラスが勝ち星を上げたときは『引き分け』となり、『同時優勝』となる。


 しかし、プライドの高いこの世界の貴族連中は「同時優勝などあり得ない! 勝者は一人!!」という発想なので、一組と三組のクラスは特に気合いが入っている状況だった。


「私はラウを信じているから何も怖くないよ。がんばろうね!」

「ミレーネ……」


 殊勝なことを言うミレーネ。


 うむ、かわいい。


 ここは良いところを見せたい…………が、それはできない。


 なぜなら、ここで変に目立ってしまうとライオネルの件と同様、面倒なことに巻き込まれないかと思ったからである。


 そういったわけでステータス値を『一般的な六歳児』に戻そうとステータス値を調整する特殊魔法『偽装カモフラージュ』を展開しようとしたとき


≪すでに調整済みです、マスター≫


 と、『脳内ガイドアバター』のビショップの声が響いた。


 どうやら僕の思考や機微で行動を予測し、現在の状況で僕が望む理想のステータス値をすでに展開したようだった。


 ビショップ、マジ有能。


 そんなわけで僕とミレーネが『二人三脚』会場へ向かおうとしたとき、サイモンに腕を掴まれ耳元でボソボソと話しかける。


「ラウ……あの『敏捷性』を使って一位になれっ! これは俺、サイモン兄さんの命令だ。尚、逆らうことは許されません」


 ニッコリ顔で手を振るサイモン。


 サイモンの『悪魔の命令』が下る。


 もはや、選択の余地は無かった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 いよいよ、優勝クラスが決まる一年生の部の『二人三脚』が始まろうとしていた。


『二人三脚』の生徒である僕とミレーネや他の生徒も皆、スタート位置に付き、号令を待っていた。


「さ、さすがに、緊張するね……」

「えっ? あ、そ、そうだね……」

「??……ラウ?」


 最後の種目で且つ優勝がかかる舞台であることもあり、ミレーネはかなり緊張していたようだが、僕は別の意味で緊張していた。


「本当に敏捷性100の全力で走っていいのだろうか?」


 ビショップに確認してみた。


≪まあ、マスターの心を察するに遠慮したほうがよろしいかと思いますが、しかしサイモン様の命令に従うのであれば仕方が無いかと……≫


 超有能な脳内ガイドアバターのビショップでさえ、サイモンの命令と自分の本当の希望を満たす答えが見つからないのか狼狽えていた……無理もない。


「……やるしかない」


 僕の覚悟が決まった瞬間、スタートの合図がなった。


 皆がスタートする中、僕とミレーネはまだスタート地点に立ったままだった。


「おい、ラウ、何やってんだ! スタートしたぞっっ!!」


 ライオネルが激おこな顔で叫ぶ。


「おい、くっつき過ぎだ、離れろ、不埒者めっっ!!」


『二人三脚』の競技内容を理解していないのか、無理難題且つズレたことを叫ぶミレーネ教教祖のアビゲイル・マスカレード。


「ラ、ラウ君?! 大丈夫? もうみんなスタートしたよ?!」


 ミレーネが心配そうに声をかける。


「ミレーネ……すまないがサイモン兄さんの命令には逆らえないので全力出すから、こうすることを許してくれっ!」

「……えっ?」


 そう言うと、僕は右腕だけでミレーネの身体ごと持ち上げた。すると、二人の足を括っているミレーネ側の足も浮き上がる。


「しっかり……捕まってて!」

「ラ、ラウ?…………!!!!!!!」


 僕はスタート地点のグラウンドを思いっきり踏む。


 次の瞬間、先に進んでいた集団に追いつき、二歩目をまた思いっきり踏むと…………ゴールした。


「「「「「「…………はっ???」」」」」」


 周囲の全生徒と全教師の『はっ?』がハモる中、僕とミレーネはゴールした。


 周囲の異様な状況の中、一組の優勝が決まった。



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