014「ラウ六歳(初等部一年生) ミレーネの妙案」
『踊る道化師』との戦闘中、魔法使いのシャンディの捕縛魔法を解除できた理由を追記しました。
「では、こういうのはどうでしょう!」
ここでミレーネが皆の前に入り、話を切り出す。
「ライオネル君を今後、私の専属従者として働いてもらうというのは……どうでしょう?」
「「えっ……!?」」
僕とライオネルが思わず気の抜けた声を出す。
「ほう、ライオネル君をミレーネの専属従者に……ですか?」
「むむっ……どういうことだ? それがグエルモの体裁の確保と罰を与えるということが可能となるのか?」
ライオウとマルスもミレーネの発言に考え込んだがしばらくすると、
「……なるほど、そういうことですね!」
「ほう! これは妙案だな!」
と、ミレーネの発言の真意を見抜き感心した。
「ど、どういうことなの……ミレーネ?」
僕は狙いが何なのかわからず答えをミレーネに求めた。しかし、その横でライオネルは……、
「ふふん! 僕はわかったぞ、ラウ。君は天才少年という肩書きもあるようだがどうやら大したことはないようだな。まあ、しょせんは『田舎の天才、首都の凡人』ということかな……?」
と、ライオネルがこの国のことわざ? っぽい言葉を入れて僕をディスりながら勝ち誇った顔で僕を見下ろす。
こいつ……さっきまで半ベソかいてたクセに。
「あのね、ラウ、これの狙いは……」
「!?」
すると、ミレーネが僕の手を握りながら優しく説明を始めた。
僕はミレーネの行動にビックリしつつも勝ち誇った顔をライオネルに向ける。
ライオネルは案の定、くやしさを前面に押し出した顔をしている。
おそらくライオネルとのやり取りを見ていたミレーネが気を遣った行動だったのだろう。まさに優しさと気遣いの塊……おそらくミレーネは『優しさと気遣いでできている』んじゃないかと言っても過言ではないな。
まあ、しかし、わかっていることとはいえ、つい、その態度に期待してしまう自分がいる。勘違いは『恥ずか死ぬ』ということをちょっと前のライオネルの画策にまんまと引っかかったことで学習したというのに……まるでチョロインだな。
それにしてもさっきからミレーネは僕のことを「ラウ君」から「ラウ」へと変化していたのに気づく。
おそらく、ミレーネが友達としてちゃんと認めてくれた上の変化なのだろうがチョロインの僕としてはそういった小さな変化も良いように捉えようとしてしまう。ああ……チョロインだな~僕って。
ミレーネが話を続ける。
「ライオネル君を私の専属従者にすることの狙いは『グエルモ・オードリッチ』にも得する面があるということがひとつ……」
「え? 何でライオネルをミレーネの専属従者にすることがオードリッチ家にとって得になるの?」
すると、ここでライオネルが答える。
「それはだね、ラウ君。貴族からすれば王宮、王族とのパイプは誰もが望むものなのだよ。ましてや、女王陛下とのパイプなんてそうそう築けるものじゃないしね……ラウ君、話の意味がわかるかい? それとも難しかったかな?」
ライオネルが皮肉を盛り込みながら説明する。
「なるほど。つまり、ミレーネ……女王陛下の専属従者を上級貴族の子息が担うというのが『罰』となり、でも、女王陛下とのパイプができたという点で見れば、世間体的にも、グエルモさんとしては鼻が高いということか」
「おお! 坊主、そこまで狙いが見えているとはやるじゃねーか!!」
「……ふむ。やりますね、ラウ君」
「すごーい! 私の狙いを今のやり取りだけでそこまで理解していたなんて!」
と、ライオネル以外の皆が褒めてくれたのには少し戸惑ったが、それはそれでありがたく言葉を受け取り、同時にライオネルに上から目線をお返しする。
「くっ……君のそういうところが嫌いだ! ふんっ!」
ふてくされるライオネルの横でライオウとマルスがミレーネの提案で行こうという話をしていた。どうやらミレーネの提案はかなりの妙案だったらしく、また、これまで遠慮がちで自分の意見を言わないミレーネがこんなにも立派になったことについても二人はすごく感心していた。
そして、その二人の横にいたミレーネはずっと顔を紅潮させて終始、下を向いたままだった。
うむ、かわいい生き物だ。
「……ということは、今後、ライオネルは王宮で住むということだね、ミレーネ? なるほど、君の妙案には、あまり自由を与えてもらえない初等部時代にライオネルを父親から離れさせる、という狙いもあるんだね?」
「は、はい。今回の件を聞く限りグエルモ・オードリッチさんは子供の喧嘩にも介入するほど、少し、怖い部分もありましたので……ライオネル君にとってはしばらくの間……できれば初等部卒業まではお父上から離れることはつらいことかもしれませんが……よろしいですか?」
「はい! 全く問題ないです! こちらこそよろしくお願いします!」
即答だった。
「私、ライオネル・オードリッチは生まれ変わった気持ちで、専属従者として、朝となく、昼となく、夜となく、ミレーネ様に尽力することを誓います!」
と、言ってライオネルがまた勝ち誇った顔で僕に顔を向ける。
おそらく、従者とはいえミレーネと同じ王宮に住むことになることを自慢しているのだろう。
ふん。べ、別にうらやましくなんてないんだからねっ!(僕も一緒に王宮に住ませてもらえないだろうか?)
そんなこんなで、ミレーネの妙案により話がうまくまとまったところで解散となった。
ライオウは早速、その足でライオネルの家に行き、グエルモ・オードリッチに話をつけてくるとのことでミレーネ、ライオネルと一緒にオードリッチ家へと向かった。
「さて、一人になったし、もう学校でやることもないから帰ろうかな……」
「おい、まだ俺がいるぞ」
「あ、マルスさん、そういえばいましたね」
「扱いひどいなっ?!」
しばらくすると、気絶から目覚めた『踊る道化師』の面々が森から僕らのところへやってきた。
「兄貴、仇は取ってくれましたか?!」
「降参した」
「「「「うえええええ~~~~~!!!」」」」
四人が合わせて元気よく驚く。
「な、なんで戦わなかったんですか?」
治癒士のメルシー・アイライナが聞く。
「単純に勝てる気がしなかった」
「うそだー!! そんなわけないでしょ! 七武神の一人なの……」
「うるせー。七武神の名を出すなって言ってるだろっ!」
ゴンッ!
重く鈍い音が響き渡り、『七武神』のワードを出した戦士のゾイド・オッペンハイマーが本日二度目の気絶に入った。
「バカだなー、ゾイドは。本当、バカだなー、ゾイドは」
大事なことかはわからないがゾイドの横で同じ言葉を二回口ずさむ超個性的な(超変人な)武道家のアーカム・タルト。
「マルスがここまで認めるってのも珍しいわね……今日この後、土砂降りにでもならなきゃいいけど」
「どういう意味だよ、それ……」
「褒め言葉よ」
と、色っぽい外見と喋り方でマルスにちょっかいを出す魔法使いのシャンディ・バーナムがふと、さっきの戦いで気になったことがあるということでラウに質問をした。
「そう言えば、ラウ君……でいいのかな? さっきの戦闘中の話なんだけど、あなた、どうして私の捕縛魔法『締まる鎖』を解除できたの? 最初、魔法を受けたときは初めて受けたように見えたけど……」
「あ、え、えーっと……あまり詳しくは言えないですが、僕は一度受けた魔法を吸収することができる体質? でして……」
「「「「「……は?」」」」」
これにはシャンディ以外の四人も呆然とした。
「……ま、魔法を一度受ければその魔法を吸収することができる……だとっ?!」
マルスが咄嗟に呟く。
「……で、その魔法を吸収すると『解除方法』も同時に取り込むので、さっきの戦いで魔法の解除ができました」
「そ、そんな体質……聞いたことないわ……」
シャンディはラウの説明を聞きながらだんだん常識の外のことばかり話すラウにただただ呆気に取られていた…………が、マルスが見込んだだけのことはあると改めてラウに感心しつつ認めるようになっていた。
「まあ、これが俺のチーム……『踊る道化師』だ。今日は本当にすまないことをしたな、坊主……いや、ラウ」
マルスが四人が揃ったところで(一人気絶中)改めて謝罪した。
「気にしないでください。特にケガしたわけではないので」
「……ふー、お前本当に六歳かよ」
そんな感じでマルスは改めて呆れるが、すぐに話を切り出す。
「ラウ、お前、冒険者には興味ないのか?」
「えっ? どういうこと?」
「ああ、いや、もしお前が興味あるならウチのチームにたまに入ってみないかって思ってな……」
「マルスさんのチームに……」
「マジっすか、兄貴っ!? それってまるでスカウトみたいっすね!」
「スカウトしてんだよ、ボケッ!」
ゴンッ!
また殴られるゾイド。
「……そこまで買ってるんですか、その子を」
治癒士のメルシーが真面目な顔で問いかける。
「ああ。こいつはこの年齢ですでに大人どころか国のどんな熟練者よりも圧倒的な力を持っている……俺にはわかる」
「マ、マルスさんにそこまで言わせるなんて……信じられないです」
「ああ……『規格外』ってやつだな、こいつは…………というわけでどうだ、ラウ。バイト感覚でいいからウチのチームでやってみないか? どうだ?」
「あ、え、えーと……」
僕は考える。
冒険者ギルドは前々から興味があった。
しかし、本来、ギルドに入れるのは中等部の学生からなので初等部の……ましてや初等部一年生の子供が冒険者になるなんてことはまずありえない。
そういう意味ではマルスの申し出はすごく興味がある。
でも、僕に大人の……しかも有名なチームらしいマルスのチームに入ると連携が取れずに足手まといにならないか心配でもあった。
しかし、そんな僕の考えを見透かしたような話をさらに出してくる。
「ちなみにチーム内の連携とか気にしてんのならムダだからな。ウチのメンバーは元々、ソロの冒険者ばっかりだから連携とかそんなの無いから」
「うん。僕はただ美しい技で敵をバッタバッタとなぎ倒したいだけだしっ!」
と、武道家のアーカムが横槍を入れる。
「そうね……まあ、少なくとも私たちがちゃんとフォローできるから君はただ動きたいときに動けばいいから」
魔法使いのシャンディがさらに的確なアドバイスを盛り込む。
「じゃあ、決まりだね! ラウ君! よろしく!!」
止めは治癒士のメルシー・アイライナ。
「よ、よろしくお願いします…………ああっ!? 思わずオーケーしちゃった!!」
自然な流れで握手を求めたメルシーの手をそのまま握ってしまっていた。
「ヨシッ! 決まりだな! とりあえず、参加して欲しいときに連絡するから、まあ、気長に待っていてくれ。じゃあな!」
「わ、わかりました……」
こうして、冒険者ギルドの傭兵結社『踊る道化師』はワイワイ騒ぎながら帰っていった。
「何だかいろんなことがあった一日だったな~…………て、明日、運動会当日じゃん!」
さっきまでいろいろとあったため、明日が運動会の本番であることをコロッと忘れていた。
結局、今日一日のバタバタ感は夜になると疲れへと変化。次の日の運動会当日の朝は起きてからしばらくすると大あくびを何度もするなど寝不足状態からのスタートだった。
あー、身体がだるい。




