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自作自演の無双能力者  作者: てんやもの
第二章 ルミア王国魔法学園/初等部編
13/46

012「ラウ六歳(初等部一年生) 踊る道化師(ダンシング・ピエロ)と、七武神と、英雄剣士」

いつもよりちょっと長め。



――校舎奥の裏山


 五人の冒険者ギルドの傭兵集団はラウの動きを見て困惑し、ボソボソと話し合っている。


(ちょ、ちょっと!? どうなってんの、この子。動き見えなかったんだけど……!)

(お、おい! 何だ、このガキ……動きが尋常じゃなく速いぞ! 尋常じゃなく速いぞ!!)

(なるほど、アーカムが同じことを二回言うってことはそれだけ大事だということだな。まあ、確かにその通りだが……)

(ちょ、どうするのよ……これだとちょっと痛い目に合わすっていうより……私たちも真剣にやらないとやばいわよ、マルス!?)

(……わかってる)


 そう言うと冒険者ギルドの傭兵結社『踊る道化師ダンシング・ピエロ』リーダーのマルスは、魔法使いの『シャンディ・バーナム』にボソボソと進言。そして、戦士の『ゾイド・オッペンハイマー』、武道家の『アーカム・タルト』、治癒士の『メルシー・アイライナ』にもそれぞれ進言し、指示をする。


「よし! では、いくぞ、みんな……気を引き締めてかかれ!!」

「「「「ラ、ラジャー!!!!」」」」


 く、来るっ!


 僕は集団のリーダーの合図で再び身構え、拳に力を入れる。


 !?


 すると、驚く光景が目の前で展開した。


 それは…………彼らの動きすべてが『超スローモーション』に見えるのだ。


「こ、これって、まさか……『敏捷性』のステータスがフルコンプリートにした状態だからなのか?」


≪そう……ラウ様の敏捷性フルコンプリート状態である『敏捷性999』の世界では視認性も敏捷性と連動しているので同じように引き上がり、その結果、このような超スローモーションな状態になってしまうのです。また、当然、敏捷性がフルコンプリート状態なので、この超スローモーションの中で動くこともできるので攻撃を仕掛けることも可能。ただし、その攻撃力はフルコンプリート状態の『攻撃力999』になっているので思いっきり攻撃すればそれは『とてつもない威力』となります。その威力は控えめに言っても『相手を殺すどころか、塵ひとつ残さないほど』と言っておきましょう……≫

「あ、あのう~、今、僕の脳内で解説しているあなたは………………何者?」

≪あ、どうも。私、女神セイラ様から源栄太……今はラウ・ハイドライト様でしたね、の能力ガイドアバターとして創られましたビショップと言います。以後、よろしくお願い致します≫


 と、トランプのジャックのような顔や服装をしたロマンスグレーのおじさまが会釈した。


 僕もその人に合わせ現実の身体で会釈する。


 ちなみに現実……現状はラウが傭兵集団の戦士と武道家の攻撃をかわしながら脳内ガイドアバターのビショップと話をしているという状態だった。


「それにしてもどうしてこれまで出てこなかったのに突然、この状況で現れたの?」

≪これまではラウ様の能力の使い方や判断が概ね正しかったので必要がないと思い、特に介入はしておりませんでした。しかし、今回、ラウ様は大人と真剣に戦うということで基本能力をフルコンプリートにし全力で戦おうとしていたので……それだと相手を殺してしまうどころか、この周辺一帯の地形を変えて大問題になりかねないと判断しましたので僭越ながら登場した次第であります≫


 と、ビショップは深々とお辞儀をして答える。


「じゃ、じゃあ、どう、すれば、いいの?」


 ラウは戦士のゾイド、武道家のアーカムの波状攻撃をかわしながらビショップに質問をぶつける。


≪はい。基本、ラウ様の判断を最優先とはしますが状況に応じてのステータス値の設定を私のほうで都度、調整させていただきますがどうでしょう?≫

「調整……どういう、こと?」


 二人の攻撃はなおも激しく続くが、スイスイかわしながら話を続けた。


≪はい。ラウ様の知識、感覚に合わせてわかりやすく言うと『自動調節機能オートレギュレーション』……つまり、その時々に合わせて効率的な……わかりやすく言うと『良い塩梅あんばい』のステータス値を自動で私ビショップが設定する、ということです。いかがでしょう?≫

「すごい! それ、とっても助かります! ぜひ、お願いします!!」

≪かしこまりました。では『自動調節機能オートレギュレーション』を設定。攻撃力のステータス値を999から70に調整します…………あ、ちなみに今はこうしてお話しながらなので設定値を言いましたが本来はラウ様の無意識下で行うものなので、特にステータス値の報告は致しませんのであしからず。確認の際は特殊魔法の『ウィンドウ』でステータス値を確認ください。あと、『自動調節機能オートレギュレーション』を解除する際は特殊魔法『偽装カモフラージュ』を展開すればその時点で『自動調節機能オートレギュレーション』は解除となります。再度、『自動調節機能オートレギュレーション』を設定したいときは特殊魔法欄に『自動調節機能オートレギュレーション』があるのでそれをお選びください。あと、能力のことで聞きたいときは私の名前……『ビショップ』と普通に声を出しても、脳内で呼んで頂いても現れますので気軽にご相談くださいませ≫

「ありがとう。じゃあ、ちょっと、戦いに、戻りますね」


 相手の戦士と武道家は一発も当たらないことに驚愕な顔を出しながら必死になってパンチや蹴りを重ねてくるが、僕はすべてかわす。


 そして、今度は僕が相手の攻撃にあわせてカウンター攻撃を仕掛けてみた。


「えいっ!」

「「うぐあっ!!!!」」


 戦士ゾイドと武道家アーカムが十メートルほど吹っ飛び、木に激突した。


「「「えええええええっ!!!」」」


 リーダーのマルス、魔法使いのシャンディ、治癒士のメルシーが盛大に驚く。


「はは……バケモノかよ」

「こ、こいつ……とてつもない、いや本当……とてつもない」


 飛ばされた二人は驚愕の顔と同時に苦笑していた。


「これは想像以上だな。やはり、作戦通りに行くとするか…………シャンディ!!」

「はぁーい! 準備万端よ!!」

「やれっ!」


 マルスの指示を聞いて、魔法使いのシャンディを見ると、すでに両腕を前に出して両方の人差し指と親指を使って、『三角形』にして僕に狙いを定めていた。


「捕縛魔法……『締まる鎖ロッキング・チェーン』!!」


 !?


 魔法使いが魔法名を唱えた瞬間、僕は身動きができなくなった。


 まるで見えない鎖にギュウギュウと締め付けられているようだ。


「な、なんだ、これ……は?!」


「ふう……さすがに魔法は効いたか。この辺はまだ六歳ということだな」


 マルスが少し安心したように口ずさむ。


「いやいや……こんな六歳おかしいでしょ!? 捕縛魔法まで使わないと捕らえられないなんて冒険者ギルド傭兵結社『踊る道化師ダンシング・ピエロ』の名が泣き過ぎるわよ!」


 魔法を展開したシャンディが悲観した表情でマルスに突っかかる。


「いや~俺とアーカムの攻撃がカスリもしないなんて…………とんでもねーガキだな」

「いや、本当、マジすごい、マジすごい!」

「おー、今日はアーカムさん、二回発言が連発してんなー!」


 戦士のゾイドと武道家のアーカムも少し安心した様子でくつろいでいた。


「もう……マルスさん、今度からはあのオードリッチ家の仕事の依頼は断ってくださいね。どう見ても私たち百パーセント悪者集団ですからっ! 私、こんな仕事、もう二度としたくありません! いいですねっ?!」

「い、いやでも、今回、簡単そうな仕事でしかもすごい金額の依頼だったから……つい」

「い・い・で・す・ね……?」

「は、はい……二度とあいつからは仕事もらいません」

「いくら借金があっても、こんな仕事引き受けてたら『踊る道化師ダンシング・ピエロ』の名に傷が付きますから二度と引き受けないでください」

「ご、ごめんなさい……」


 小柄で童顔の治癒士のメルシーがマジギレして、マッチョな体格のマルスを終始圧倒していた。


「でも、まあ、この子、すごいわね。単純に身体能力だけならマルスと同じレベルじゃないの?」

「いや、こいつはたぶん…………俺よりも上だ。しかも遥かにな」

「「「「!!!!」」」」


 一同がマルスの発言に思わず呆然とし固まる。


「い、いや、さすがにそれは言い過ぎだろ、マルス。お前はルミア王国七武神の一人……」

「ゾイド!」


 マルスはゾイドに対して『その名は口に出すな』と言う眼差しを飛ばす。


「あ、す、すまね~……」


 ゾイドが慌てて口に両手を当ててこもる。


「……まあいい。とにかく、彼には睡眠魔法でしばらくここで寝てもらう。依頼はその子の『足止め』だけしか言われていない。だから、何もしなくても問題ないだろ」


 と言って、マルスがシャンディに催眠魔法をやってもらおうとシャンディに声をかけようとしたとき、


「……解除リリース!」


 バキャン!


 という音と共に、僕に絡み付いていた見えない鎖っぽいのが割れた音がした。


「「「「「な、なんで~~~~????!!!」」」」」


 五人ともが今日一番のビックリ顔をしていた。


「スキありっ!」


 そう言うと僕は一瞬でマルス以外の四人を気絶させた。


 ちなみにアクション映画とかで相手を気絶させる時の要領で見よう見まねで首筋と肩の境目を手刀で『トン!』としてみたらうまくいった。


 傭兵集団のリーダーにやろうとしたが、彼だけはかわされてしまった。


 これにはちょっとビックリした。


 たぶん、反射神経とかではなく単に『勘』で動いたように感じた。


「おじさん、かわすなんてすごいね」

「こっちのセリフだ……六歳児」


 僕とリーダーっぽい男との間に緊張が走る…………が、すぐにその男は、


「はい、降参! おじさん、降参です」

「えっ? 降参?」

「ああ。お前にはどうも勝てそうにないからな……だから、降参してもいいかい?」

「あ、えーっと…………う、うん、いいよ」

「そっか、ありがとう! いや、本当にすまねーな、こんな恥ずかしいことして」

「あ、いえ、大丈夫です」

「いや、本当、申し訳ない! この通りだ!!」


 と、マルスは六歳のラウに対して、土下座をして謝った。


「ちょ、ちょっと! やめてください!」

「いや、それだけのことをしちまったんだ! 本当に申し訳ない、許してくれっ!!」


 マルスは土下座してさらにこめかみを地面に摺りつけた。


「わ、わかった、わかりました! 許します! 許しますから顔を上げてください!!」


 そう言うと僕は、そのマッチョおじさんの身体を強引に引き上げた。


「あ、ありがとう、ラウ君」

「いえ、おじさん、自分からは土下座を崩そうとしないと思ったので……強引にいかせて頂きました」

「なるほど……ふふ、そうか」


 マルスの顔がほころぶ。


「じゃあ、おじさん……僕、急ぐから、これで」


 僕はライオネルがおそらくミレーネのところに行っているであろうと推測していたので、そっちに向かおうとした…………が、


「ふん、その必要はないさ」

「えっ?」


 マルスが少し苦笑して叫んだ。


「いるんだろ?…………ライオウ! もう、出てこいよ!!」

「えっ? ライオウ?」


『ライオウ』……って、まさか、この国の英雄剣士『ライオウ・スピルデン』のことか!


「ふふ、やはりバレてましたか」

「あ・た・り・前・だ! そんな闘気……わずかでも俺には隠せねーよ」

「なるほど……。一応、闘気をかなり押さえ込んでいるので漏れてる闘気は微量のハズなんですが……さすがですね、七武神の一人……マルス・ヴィンテージ」

「……こんなかっこ悪い状況でその名を出すなよ。相変わらず、嫌らしい性格してんな、ライオウ」

「お互いさまです」


 と、森の中からライオウ……英雄剣士ライオウ・スピルデンが現れた。


 そして、その横には……、


「ラウ君っ!!」

「……ラウ」


 笑顔で僕のところに走ってきたミレーネと、目を腫らし俯きながらトボトボ近づいてくるライオネルの姿があった。


「一部始終をお話しましょう……」


 そう言うとライオウが僕に事の顛末を話してくれた。



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