011「ラウ六歳(初等部一年生) ライオネルの画策と暴走」
――運動会前日。
約十日前にミレーネと一緒に登校して以来、ライオネルたちから何かをされることはなく、また、ミレーネと他のクラスメートは身分に関係なくフランクに楽しくおしゃべりするなど教室の雰囲気もどんどん良くなっていた。
ちなみに十日前に初めてミレーネが僕を迎えにきた日の夜は『ちょっ! ラウ君、詳細kwsk』というテーマでハイドライト家の家族会議が開かれ、僕はミレーネと友達になるまでの一部始終を報告した。
すべてを話した後、ロイは「この子は何か持っているのかもしれんな」と親バカ脳全開で褒め、ネルは「とりあえず失礼のないようにね」と心配し、フィネスは「とりあえずあの子は女王陛下であることを常に意識して付き合うようにね」と釘を刺され、最後のサイモンは「今度、俺にも紹介しるよね、ラウ! 絶対だぞっ!!」と意外にもミレーネの話題に一番食いついていた。
そんなこんなで運動会前日の放課後、僕はミレーネと練習している運動場へ行こうと靴箱を開けると一通の手紙が入っていた。宛名を見るとどうやら『ミレーネ』のようである。
「ミレーネから手紙?……何だろう、わざわざ手紙なんて」
そう思いながら中身を空けて内容を確認すると、
『ラウ君に大事なことを伝えたいので、校舎奥の裏山まで来てください ミレーネ』
と、短い文章が書いてあった。
「えっ? 大事なこと? わざわざ手紙にして、場所まで指定して伝えたいことって………………はぅあっ! ま、まさかっ?!」
僕はそこでピーンと来た。
「あ……愛の告白っ!!!!」(美しい人生よ~、限りない……以下略)
ま、間違いない。
だ、だって今は二人三脚の練習で放課後は一緒にいるのにわざわざ手紙で、しかもあえて、いつも練習している運動場ではなく、人目のつかない校舎奥の裏山への呼び出しって…………愛の告白以外に何があるってんだよーーーーーー!!!!
僕はドキドキしている。
今まで……いや前世のときからでさえ、自分から告白することはあっても相手から告白されることなんて一度もなかったそんな僕が……。
緊張と興奮がないまぜとなった混乱気味の僕は、一旦、大きく深呼吸をして意識をしっかり持ったあと、手紙で指定された『校舎奥の裏山』に向かった。
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裏山に着いた僕は「おーい、ミレーネ~…」と声をかけながらミレーネを探した。すると、
「会いたかったですよ……ラウ君」
僕の目の前に現れたのは不敵な笑みを浮かべるライオネル・オードリッチだった。
「お前の愛の告白かよ!!!」
初めて告白されると思い、期待と不安でガチガチに緊張していた僕だったが、それは、ライオネルの『高度な策略』によるただのワナだったことを知り、盛大な勘違いをした僕はライオネルの精神攻撃『必殺・恥ずか死ぬ』を受け大ダメージを食らった。
「……や、やるな、ライオネル・オードリッチ、見事だ……くっ!?」
「い、いや、僕はまだ何もやってないのだが……?」
こうして、ライオネル・オードリッチの『巧妙なワナ』にやられ、早くも精神的ダメージを受けた僕は、ライオネルに恐怖を覚えた。
「ライオネル……恐ろしい子っ!」
とりあえず、自分の盛大な勘違いを忘れるための『ひとネタ』を入れたところで改めて状況を確認する。
どうやらライオネルは『一人ではない』ようだ。
「こんにちは、ラウ君。君は相変わらずムカつく奴だね……何だい、あのミレーネ様と一緒に学校に登校するというパフォーマンスは? それだけじゃない、教室ではまるで我が物顔で周囲の生徒を支配しようとするなんて……それが貴族のやることかい?」
うわ~、すごいな、この子。
盛大なブーメランを展開しやがった。
「学校に一緒に登校するようになったのは、そもそもミレーネからの申し出だったし、教室でのことは別に皆で楽しくやろうとしているだけで特に命令しているわけでもないし、ていうか、まあ、一つ言いたいのは…………お前がそれを言うかってことだ」
と、僕はライオネルの独りよがりな意見を一刀両断する。
「う、うるさい! 君ってやつは……そういうところがムカつくって言うんだよ!!」
僕の言葉で盛大なブーメランに気付いたのか、ライオネルは顔を紅潮させ癇癪を起した。
「まあいい。お前にはここで痛い目にあってもらう……出てこい!」
「……!?」
ライオネルが合図をかけるとライオネルの後ろに顔を黒いスカーフのようなもので隠した五人の大人が姿を現した。
「彼らは僕が雇った冒険者ギルドの傭兵だ。少し痛い目にあってもらうよ?」
ライオネルがそう告げると五人の大人……冒険者ギルドの傭兵らが前に出てくる。
「君が悪いんだ……前の忠告で僕の言うことを素直に聞いてれば、ここまでするつもりはなかった。でも、これ以上……父上の期待を裏切るわけにはいかないんだ!」
父上の期待?
ライオネルの今の言葉はどういう意味だ?
すごくひっかかる……。
「じゃあ、よろしく頼むよ。僕はもう行くから」
「ちょ、ちょっと待て、ライオネル。『父上の期待』ってどういう……」
「うるさい! お前は大人しくそこでやられてろ、じゃあなっ!」
そう言うとライオネルは森の中に消えていく。
僕はライオネルをすぐに追おうとしたが、傭兵集団が僕の行く手を阻んだ。
「なるほど。こんな大人を目の前にしても動じないとは…………君は只者ではないようだな」
この傭兵集団のボスっぽい奴が声をかける。
「そんなことないです。僕はただの六歳の子供です」
とりあえず、この場は子供として許してもらおう的な発想で返事を返した…………が、
「こういうところが君は只者ではないと……言ってるんですっ!!」
その男は言葉と同時に少し太めの棒のような武器を振り下ろした。
僕は『敏捷性100』の状態で咄嗟にその攻撃をかわす。
「!? こ、こいつ……」
「「「「!!!!! は、はやい……!!!!」」」」
さっきまで余裕をぶっこいていたボスと、その手下っぽい四人の顔が僕の動きを見て表情を変える。その表情はもう僕のことを『子供扱い』することは絶対にないであろう本気で獲物を狩るような……そんな表情だった。
僕は心の中で作成した魔法……『偽装』を展開し、すべての基本能力のステータスをフルコンプリート状態にして戦闘態勢を整えた。
「大丈夫、大人が相手でも僕の……僕の能力ならきっと大丈夫なはずだ」
大人と本気で戦ったことのない僕は、元々、前世ではケンカを売られたことも買ったこともない世界で生きていた一般人だったので膝がガクガク震えていた。
一応、大人……父親のロイと武道の稽古はしているが今はそんな稽古とは違う緊張感と恐怖が僕の中を駆け巡っている。
とりあえず、思いっきりやってみるしか…………ないっ!
そう心で自分を鼓舞した僕は五人の目の前でいつも武道の練習をしているときに構える型(ボクシングのファイティングポーズのような『左腕を右腕より少し前に出す構え』)で立ち、彼らに対峙した。
毎日投稿を心がけていますが、今後はもしかしたら二日かかるときがあるかもです。
ちなみに、更新時間は平日は21時あたりで、日曜日は15時ごろになるかなといったところです。
あと、けっこう編集すること多いです(だいたいは誤字・脱字の修正ですが、内容自体の大幅変更の場合は前書きに情報を載せますね)
というわけで、今後とも毎日更新を心がけて頑張りますっ!!




