表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/21

ストーリーログ6。認定クエストを受けましょう。 ファイル2

「ご登録ありがとうございます。しかし、まだこの段階では

我々ファイターズギルドの一員として、認定することはできません。

一つ、最低限ファイターとして充分な実力かを判断する、

『認定クエスト』を、達成していただかなければなりません」

 

 自分のプレイヤーデータが見られる、ファイターズカードって言う、

 名刺みたいな物を受け取ったぼくたちは、

 今、受付嬢さんに、まだ半人前だってことを聞かされた。

 

「このクエストを達成して、ここにまた来ていただければ

晴れてファイターとして認定され、

様々な依頼を、受領することが可能になります。

今すぐお受けになりますか?」

 そう聞かれて、ぼくたちは同時にはいって答えた。

 

「わかりました。では、ファイターズカードに依頼を書かせていただきます」

 それからすぐに、アイテムを入手した時のピコンって音がして、

 音の後で「それでは、ご武運を」のひとこと。

 それで、ぼくたちは送り出された。

 これが、クエスト受注の流れみたいだね。

 

 二人でいっしょに登録したけど、

 クエストは、それぞれ別の物として、

 達成条件を個別にこなさないといけない。

 パーティー組んでるわけでもないから、当然か。

 

 

 クエストの内容は、ジャッコイーノって言うモンスターを

 十匹討伐する物。生息地は多いみたいだけど、一番近くは

 次の町である、アルフィーチアに向かう道中。

 

 

「ところでシオンくん、どうする?」

 ギルドを出て早々、アヤメちゃんが聞いて来た。

 でも、なにを訊きたいのかわかんなくって、

 なにを? って聞き返す。

 

「お友達のパーティーに、合流するつもりなんだよね?

あたし、お邪魔じゃないかな?」

 歩き方はあいかわらずで。

 「なんだ、そんなことか」って、ぼくは笑う。

 

「大丈夫だよ。ウイト君だって、ぼくを介助してくれた人だ

って言えば、いやがらないだろうし」

「そう? じゃあ、えっと。

エリク……えーっと……。なんだっけ?」

「エリクシオン・サーガ」

 

「そうそう。そこに、あたしも入っていいかな?

せっかく知り合ったんだし」

「そうだね。ぼくも、アヤメちゃんといっしょの

パーティーでやれるなら、嬉しいよ」

 

「よし。じゃ、お友達さんと合流したら交渉しよう」

「うん」

 そんなこんなと歩いてたら、町のざわめきが背中になって。

 更に歩くと、それがだんだんと遠ざかって行く。

 

 

「シオンくん。戦闘に入ったら、こうやって手引きじゃいられないから、

その……そのスーパー聴力でなんとかして」

「あ、うん。わかった。がんばってみるよ」

 スーパー聴力ってセンスに、吹き出しそうになったけど、

 なんとか抑えた。

 

 耳をそばだてながら歩いてると、

 なんか、変な声みたいなのが聞え始めた。

「いた。ジャッコイーノ。って言っても、まだ見えないんだけど」

「じゃあこの、なんかグニャグニャしたような音の、声みたいなのが

ジャッコイーノの声ってこと?」

 

「そう。動画で見た限りだと、

『ギョラーン』って、言ってるように聞こえたなぁ。

今聞いたら、シオンくんの言う通りグニャグニャしてて

なに言ってるのかわかんなかったけど」

 

「ぎ……魚卵って……すごい鳴き声」

 ぼくの言葉に反応したのか、すぐ右からガサガサって音がした。

 草があったのか。

 

『ギョラーン!』

 

「出たよ!

シオンくん。木剣しまって、戦うのに邪魔だから!」

「……うん。怖いけど、しかたないか」

 木剣を右腰に刺す。手ぶらなのがどうにも不安で、

 だから早々に、左腰からヌルマタイトのつるぎを抜く。

 

「左側からもガサガサ聞こえる」

「左右から出たってことか。あたしは左をやるから、

シオンくんは右ね」

「わかったよ」

 どんどん数が増えてきてる。

 

「んー……声の高さは腰の辺りか。

上から叩き切るしかないな」

 もうギョアギョア言ってるようにしか聞こえない、

 左右から聞こえる、複数のジャッコイーノの声に、

 頭を抱えたくなる。

 

 けど、攻撃しないと始まらないんだ。

 ーーやるぞ!

 

 

「てっ! やっ! はぁーっ!」

 左側から、アヤメちゃんの力の入った声と、

 打撃と斬撃の重なったような音が、何度も連続して鳴ってる。

 最後のは五発を一息だ。

 

「とっべぇっ!」

 この、それまでより、更に少し気合の乗った声と同時に、

 最初のラッシュより、少し鈍い打撃音。

 ジャッコイーノの、悲鳴っぽいのが上がった。

 

「っと、聞き入ってる場合じゃない。

ぼくも攻撃しないと。だぁっ!」

 一歩踏み込んで、草ごと叩くイメージで、

 おもいっきりけんを振り下ろした。

 

 ズバシャ。そんな独特の斬撃音と、腕に伝わる鈍い衝撃。

 エコーがかかったジャッコイーノの悲鳴。

 その後に、シューンって言う、回復音に少しノイズが混じったような

 それでも汚くない音がする。

 

「今ので、もしかして……一匹?」

 あんまりにもあっさりした討伐に、

 ぼくは拍子抜けしてしまった。

 

「だって、ジャッコイーノってっ、

一番弱い、モンスターだよっ!」

 アヤメちゃんは連撃をしながら、ぼくの声に答えてるみたいで、

 声といっしょに、さっきの音が聞こえる。

 

 ううん……打撃音と斬撃音がいっしょに鳴るって。

 いったい、どんな武器なんだろ、アヤメちゃんの武器。

 

「これぐらい、簡単に、倒せなきゃねっ!」

 今度は『ね』までずっと、シュウウウウって

 エネルギーが溜まるような音がしてた。

 そういえば格闘家グラップラーって、チャージ攻撃できるんだっけ。

 

「それも、そっか。でやっ!」

 腰を少し低くして、右から左へ剣を振り回した。

 そしたら二回、重たい衝撃が腕に伝わって。

 ジャッコイーノの悲鳴と、さっきの討伐音って言えばいいのかな?

 あの音がした。

 

「余裕だねっシオンくん!」

 また一匹、アヤメちゃんは倒したみたい。

「そうだね。これなら、木剣なくても大丈夫だっ!」

 今度は、踏み込んで腰の辺りから、真っ直ぐ前に剣を突き出した。

 そしたら両手で持ってた剣の、刃の半分ぐらいまで重みが迫って来た。

 

 ーー見えなくてよかった。たぶん、今ジャッコイーノ、

 ぼくに貫かれてるもん。

 

「よっし、後五匹っ!」

 いいながら、アヤメちゃんはまた一匹倒した。

 ぼくも負けてらんない……!

 

「はっ!」

 右上から振り下ろして、一匹を斜めに切る。

 ……うん。きっと見えてたら、ぼくたぶん、刃物武器使えない。

 

 重みが来ただけで、その状況想像して

 ちょっといやな感じになってるのに、

 それが見えたら、たぶん駄目だ。

 

「けどっ!」

 勢いそのまま、今度は右上に振り上げる。

 幸い、小さく動き回ってくれてるおかげで、

 位置は掴みやすいから、攻撃を外すことは、

 今のところ、ありがたいことにない。

 

 

 ーーなんだ。案外やれるんじゃないか、ぼくでも。

 

 

「後一匹! そっちは?」

「わかんない。たぶん、七匹ぐらい倒してると思うんだけど」

「そっか。いっしょにクリアしよ。

クエストクリアすると、一分間だけ、

ギルドまでの転送効果の、魔法玉が出るから」

 

 

 狩りゲーでの話にはなるけど。

 クエストをクリアすると、一分後に拠点に戻るって表示が出て、

 そこからリアル時間で一分間、自由に動けるんだよね。

 

 それが終わると、報酬表示画面になる。

 一分間、拠点まで一発で戻れるって言うのは、

 狩りゲーのオマージュだろうな。

 

 

「そうだったね。でも、どうしよう?」

「いったん合流。あたしが数確認するから」

「わかった」

 草むらを歩きながら、アヤメちゃんの足音を確認。

 

 短い感覚で鳴ってるのがそうだな。

 よし、あっちが道に出た。それをたよりに動くぼく。

 ほんとにすごい。その場で足踏みしてる。

 それで、ぼくに場所を教えてるんだ。

 

「アヤメちゃん。どうして、そんな場所の教え方上手なの?」

 合流しがてら聞いてみると、

「ん? だって、こうしないとシオンくんわかんないでしょ?」

 ってあっさり。

 

「それは、そうなんだけど……」

「あ、ステータス開けてくれる?」

 ぼくの感心なんて気にしてない。マイペースだなぁ。

「あ、うん。ステータス」

 握り拳を開いて宣言。

 

「クエスト状況はっと」

 ぼくの左手を、右手で握りながら言うアヤメちゃん。

「えっ?」

 突然のことで、顔がちょっと熱くなっちゃったぼく。

 

 でもアヤメちゃんは、

「八匹だって。後二匹……って、どしたの?

顔赤いけど」

 ぜんっぜん気にしてない。

 

 さっき町中走ってる時は、あんなに気にしてたのに。

 変なの。

「えっ、あっそのっ。なんでもないんだ」

 そりゃあしどろもどろにもなるよ。

 

「えっと。八匹、だったよね。ありがとう」

 なんとかお礼をしてから、

 ぼくは、開いた掌の指を握り拳にしながら

 クローズを宣言。ウィンドウを閉じた。

 

「声も足音もまばら。って、なんでアヤメちゃんついて来るの?」

「だって、左側にはもう残ってないから。

あたしについて来てるの、ジャッコイーノ」

「そうなんだ。っと、いた。また固まってる」

 

「じゃ、せーので一発。いい?」

「うん」

 ザッ、アヤメちゃん、構えたみたい。

 

 ぼくの方も、思いっきり踏み込めば届く、って位置に敵がいる。

 ちょいちょい動いてるから、場所はすぐわかった。

 なにしようとしてるんだろう?

 

「「せーのっ!」」

 どっちが言うか決めてなかった。

 だからって、まったく同時に言わなくてもいいのになぁ。

 

「とりゃーっ!」「てえやっっ!」

 ぼくたちは、今の一撃でジャッコイーノを、

 クエストクリアのノルマ達成到達、最後の一匹を討伐した。

 すると。

 

 キュイイーン

 

 討伐音を引き延ばしたような音がした。

「この音、動画で聞いたことあるな」

 まるでぼくの呟き声に答えるみたいに、

『クエスト、クリア』

 あの女の子な声が告げた。

 

『一分間、魔法玉が出現します。それを使えば、

クエストを受注したギルドまでの移動が可能です』

 アナウンスの後で、

 キーン

 って、高く澄んだ音が聞こえた。

 

 

「シオンくん。顔の少し斜め上に魔法玉あるから、掴んで」

「わかった」

 言われた場所には、ひんやりした感触の、

 掌サイズのボールが浮かんでいた。手に取るぼく。

 

「またせーので、使用ユーズって言おう。あたしが振るから」

「うん」

「よし。せーのっ」

 

 

「みつけたデースリア充ううう!!」

 

 

 突然、。

 ガシャガシャドタバタ、走って来る足音

 ーー 足音は聞き取れないけど、ガシャガシャ言う音で

 足運びが簡単に想像できる ーー と、

 徐々に大きくなって来る、女の子の声。

 思わずぼくたちは声を飲み込んだ。

 

「ねえ、シオンくん。この声。明らかに」

「うん。ぼくたちに向いてるよね。他に人いないし」

 ぼくたちは顔を見合わせた……と、思う。

 少なくとも、ぼくはそのつもり。

 

 

 

 ーーなんなんだろう。この声のぬし

現在のシオンのステータス

括弧内のEは現在装備中を表してます。

 

アバターネーム:シオン

性別:男

レベル1

ラビット1

職業:剣士

 

スキル

雲竜印ネッラ・ヴィジョン

 

所持アイテム

初心の木剣

 

装備品

ヌルマタイトの剣(E)

物攻プラス15

 

黄昏色の名装(E)

属性ダメージ30%カット

地形ダメージ・フィールドダメージ無効

バッドステータス無効

即死無効

 

革の鎧(E)

物防プラス5

 

影護のアルカー(E)

物防プラス10 魔防プラス10

 

 

HP:100+10=110

MP:100+10=110

物攻:30+10(プラス15)=55

魔力:40+10=50

物防:40+10(プラス5、プラス10)=65

魔防:40+10(プラス10)=60

素早:40+10=50

 

 

現在のアヤメのステータス

 

アバターネーム:アヤメ

性別:女

レベル1

職業:格闘家グラップラー

 

スキル

ヘヴィ・リインフォース(補助スキル)

 

所持アイテム

なし

 

装備品

スラッシュフィスト(E)

物攻プラス15

 

革の鎧(E)

物防プラス5

 

キャスティングレット(E)

呪文詠唱を、使用スキルの消費MPの半分(小数点以下切り捨て)を追加消費することでカットできるブレスレット。

効果使用時にはキャストと宣言する必要がある。

 

HP:100(初期値)

MP:100(初期値)

物攻:45(プラス15)=60

魔力:25(初期値)

物防:30(プラス5)=35

魔防:30

素早:60

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ