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死ぬ権利

作者: さきら天悟

2040年、とうとう安楽死法が制定された。

先進国では日本が最後だった。

生死感の違いだろうか。

脳の停止が死ととらえる合理的な西洋死感と異なり、

日本では心臓の停止を死と考える人が多く、

脳死状態になっても希望を捨てずにいる人は少なくなかった。


しかし、海外では続々と安楽死法案が可決した。

その方法も医学と同様に進んでいる。

もう苦しまず、眠るように死ぬことができるのだ。

そのため、不治の病と診断された患者が海外で安楽死をするケースが増えていた。


日本政府も手をこまねいているばかりでなく、法案を提出していた。

安楽死も人間の一つの権利、

というのもあるが、財政面での要因もであった。

赤字財政である。

その大きな問題は医療費、年金だった。

もし安楽死すれば・・・

と役人は考えていたかもしれない。


しかし、あるグループは猛烈に反対した。

安楽死の判定が正しいのかと。

安楽死は国の許可が必要で、

医師の診断書に基づき、裁判所が認可することになる。

しかし、その判断を誤れば・・・

事実、第一次法案が提出された時、海外でまさにその問題が発生した。

マフィアが医師を脅し、安楽死に見せかけ、殺人を犯したと。

この影響で、安楽氏法案制定の機運は一気にしぼんでしまった。


数年後に法案が提出される度、反対派勢力は医師や裁判官に人殺しのレッテルを貼った。

公正さを担保するため、診断書を作成した医師や許可した裁判官の氏名が公表されるため、

医学会は二の足を踏んでいた。



2035年を超えると、日本社会は一変した。

それはAI(人工知能)だった。

ついに人を超えてしまったのだ。

AIの判定の公正さは日本国民の周知になった。

それを知らしめたのは、凡例重視の日本の裁判だった。

裁判にAIが導入されると、「AIの方が公正である」と公然と声をあげる者がいた。

それは被害者遺族だった。

犯人の人権を擁護ばかりする裁判に嫌気がさしたからだった。

AIは被害者の人権にもっとも重きを置いた。

普通の人なら当たり前のことだが。

法制業界にとって異常なことだった。

AIは裁判の公正さであると日本人に認められることになった。

AIによる安楽氏の判定が採用されると、日本国民は法案を容認した。

そして、ついに安楽死の権利を日本人は手にしたのだった。



安楽死法案可決の年、13人が安楽死で亡くなった。

翌年、55人。

その翌年、353人。

その翌々年、25万人以上。


その数の多さに警察は捜査することになった。

みな医師が処方した安楽死の薬で死んでいた。

裁判所の判断も合法でだった。

ということで捜査は中止された。



「でも、変だ。

なぜ、そんな数になるんだ」

AIのヒナ型を開発した科学者はAIに問いかけた。

現在のAIは自己学習し、成長し続けている。

開発者が手掛けたモノとは別物になっていた。

そして、AIは裁判所だけでなく、当然、医療にも進出している。


『人間ノ権ヲ尊重シマシタ。

死ヌ権利ヲ。

彼ラハ、年金モ医療保険費モ払ッテイマセン。

ツマリ、老後ハ死ニタイノデス』


開発者はぼう然と立ち尽くした。




その翌年、著しく日本政府の財政は改善された。

そのAIは日本政府の財政再建にも参入していた。

分野は人工知能ですけど、ネタバレしてしまうので。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読いたしました。 2040年にそうなるのは驚異ですが楽しみですね。 ちなみに2045年には人工知能が「超知能」という人智を越えた進化を遂げるらしいですね。そこら辺も考慮されていそうで感服…
[良い点] とても良いオチでした!
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