問題;旧友
女神の日記より抜粋――
気にかけていた少年が[魔術]を作り上げて数ヶ月。
あの子は少しづつおかしくなっている。
どんどんと魔術にのめり込んでいっている。
それに私や教皇、いえ教会そのものと距離を離し始めている。
それに不穏な噂もある。
都市の城壁の外にあるスラム街、そこに暮らす人々の中でも親から捨てられた身寄りのない子供たちが次々にいなくなっていくという。
嫌な予感がする。
今日、あの子の実験室を調べるように教皇に頼みました。
何もありませんように。
外の世界での用事を終え、暗い図書塔の最上階へとようやく帰還する。
やはりこの暗い世界こそ己の理想たる世界だ。
外の世界は真実を知らない愚か者と、それを隠す無能がほとんどでどうにも居心地が悪い。
ともあれ、早めにやるべき事をやってしまおう。
採取した薬草類の仕分けや効能の調査、保存方法の確率などやるべき事は大量にある。
流石に人手が足りない。
助手が必要だ。
久々に[侍女隊]を使うことにする。
side 侍女長エーネウス
待ち望んでいた日が遂にやって来ました。
主様より、「配下の侍女を伴い研究棟に集合するように」との通達がありました。
主様は目覚めるなり直ぐに表側の世界へ行ってしまわれたのでなかなか役割を果たす機会がありませんでしたが、ようやく自分達の役割を果たす事が出来そうです。
「直ぐに配下の者達に通達して研究棟へと急ぎましょう。」
同じ侍女長であり双子であるクーネウスの意見に賛成し、準備を整え直ぐに研究棟に向かう。
研究棟につくとさっそく実験器具や保存器具、薬品などの準備を始める。
準備を済ませると扉へ向かって整列し、主様が来るのを待つ。
しばらくすると扉が開き、敬愛すべき主様が部屋へと入る。
「侍女隊総員15名、集合致しました。」
「何なりとご命令ください。」
クーネウスに続き指示を乞う。
主様は採取してきた薬草類に検査や試験を行った後、その結果を書類にまとめ、然るべき場所へ保存するように。とご命令されました。
「「承りました。」」
検査及び試験を行う者、書類を作成する者、処理を施して保存する者に分かれてすぐに作業に取り掛かる。
久々の仕事に、役目を果たし主様のお役に立てるという高揚感を感じながらも作業を黙々とこなしていく。
side主人公
[侍女隊]は実験の助手、及び身辺警護、並びに試作品の試験等の複数の役割を持つ。
それ故に選び抜かれ、より優れた者が[侍女隊]へと配置されている。
当然仕事も手早く済ませる。
1人で片付けるとなると膨大な量に見えたアイテムもほんの数時間で終わった。
やはり優秀な助手がいると便利だ。
次に外に出る時は何人か伴って行くのもいいかもしれない。
今回採取してきた薬草類はその大半が効果の低い低級の物だったが、幾つか優秀な物が混じっていた。
とはいえその効果が魔術を使わなければ引き出せず、通常の薬品スキルでは扱えない事から、他のプレイヤーから半ば無視されてきたからこそ残っていたのだろうと推測する。
すぐに実験に取り掛かりたい所だが一つ問題が発生した。
取ってきた薬草類のうち、優秀な物は数が少ないためどうにかして増やす必要がある。
しかしこちら側の世界で表側の世界の植物を育てるのはかなり難しい。
太陽も無いうえに瘴気によって変質するのが関の山だろう。
β時代は友人と言えるNPCの国で薬草類を育ててもらっていたが、とそこまで考えたところでふと思った。
あの友人は己がゴーレムの体に作り替える実験を行ったため寿命こそ無いもののまだ存在しているのだろうか?
国自体はある事を確認しているが、友人がいるのかは分からない。
ならば友人の生死を確認しに行き、まだ生きていれば薬草類の栽培を頼もう。
そうと決まれば話は早い。
[侍女隊]の中から双子の侍女長を呼び、共に来るように命じ、旅支度をする。
目指すは[覇王国ヴァルカン]だ。
[侍女隊]
初めは実験の助手としての役割のみしか無かったが、主の近くに長い時間ついていることから側付き及び近衛の役割を、更にそこから試作品の試験役をと役割が追加された。
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いかがでしょうか。
憎たらしい就職活動の準備で全く手がつけられませんでした。
本当に、申し訳ない。
さてこれからの展開ですが、旧友の治めている?国へと向かいます。
王族との繋がりとかかなり大事そうなのがついで扱い。
書いててなかなかシュールだなと思いました(小並感)。