邂逅;離別
――六女神が信仰され始めたのは邪神戦争が勃発する少し前。
――細かく言えば数年前から急激に増加している。
――だがそれ以前の伝承や逸話を全く聞いた事がない。
――ならいったい六女神は何から生まれたのか。
――違う。
――そうじゃない。
――生まれたんじゃない。
――やって来たんだ。
――それなら辻褄が合う。
――つまり六女神とは・・・
この先は文字が掠れていて読むことが出来ない。
とある異端者の考察より
sideシュン
ローブ姿の謎の人物の方向からあの青白い球が飛んできたということは、恐らくあの人物が攻撃を放ったのだろう。
「誰だか知らないが助かった、ありがとう」
とりあえずはお礼を言っておく。
「問題無い。こちらも目的があってやった事だ」
ローブについているフードを目深に被っているために中身が全く分からないが、その下から聞こえてきた声からすると恐らくは少年だろう。
「目的とは?」
先程の会話で気になったことをとりあえず聞いてみる。
自分達が何か特別なアイテムや情報を持っているならまだしもそんなものに覚えは無い。
「お前、まさか助けたから全財産置いていけとか言う気か?」
マサが不機嫌そうに吐き捨てる。
「おいマサ!今さっきの犬にイラついてるのは分かるがそんな言い方は無いだろう!」
流石にこれは怒らなければならない。
「ああすまん、そんなつもりは無かったんだ。」
マサもすぐさま謝る。
「俺からも謝っておく、根はいいやつなんだ。」
「構わない。警戒するのは当然だろう。」
あちらも許してくれるようだ。
「そういえば自己紹介がまだだったな。シュンだ。」
「俺はマサだ。」
「私はユリといいますー。」
「カナ。」
まだ名乗っていないことを思い出し、自己紹介する。
しかし彼は、
「生憎と名乗る名前など捨てた。名無しとでも呼べばいい」
と名乗ることを拒否した。
何かを隠している様子が気にはなったが、助けてくれたのも事実なので深く聞かないことにする。
その後本題を切り出してみることにした。
「それで、目的とは一体?こっちは助けてもらったんだからある程度ならお礼もできるが?」
と聞いてみると、
「金など要らん。必要なのはこの地域のモンスターの名称や採取物の情報だ」
とのこと。
どうも何か事情があって鑑定のスキルが使えず、街に近づくこともあまりしたくないらしくモンスターの名称が分からないらしい。
採取物の情報は自分の情報と照らし合わせて見落としがないかの確認するためのようだ。
事情とやらが一体何なのかは語ってくれなかったがモンスターの名前や特徴、採取した物についての情報を教えるだけなのでさほど問題では無かった。
「そういえばあの青白い球って何だったの?」
「私も気になる」
ユリとカナはあの飛んできた青白い球が気になるらしい。
ユリは職の前に(基本)と付くが6神都についた後に『光の女神』の洗礼を受けて[光魔法使い]になる予定のため、見たことの無い魔法らしきものが気になるのだろう。
カナは元々好奇心が強く、知らない情報は進んで調べようとする性格のためだろう。
彼は何か悩むような仕草を見せた後、ゆっくりと話し始めた。
「これも事情に引っかかるが故に余り多くを語ることは出来ないが、掻い摘んで言ってしまえば魔法の一種のようなものだ。根本は全く同じだがその先は全く別の物だ。」
と説明してくれた。
話す前に悩んでいた時、一瞬だけ違和感を感じたが嘘を言っているという訳では無さそうなので特に気にしなかった。
その後、しばらく同じ道を進むようだったので一緒に行動することになった。
彼は周りのモンスターの位置がわかる魔法を常時使っているようで、探知した瞬間に魔力球で撃ち抜くため目立った苦戦もなく目的地である光の女神の都市[神都シャインメルス]へ続く道が見えてきた。
「そろそろ満腹度や疲労度がやばくなってきたから一旦休憩しないか?」
目的地までもう少しだがマサの言う事ももっともだ。
満腹度は無くなると、疲労度は高くなるとステータス全体にマイナス補正がかかる上に、空腹の場合は体力が減り始め、疲労した場合は動きが非常に鈍くなる。
そんな状態でモンスターの集団にでも出くわしたら目も当てられない。
さっそく休憩を取ることにする。
「己はそろそろ行かねばならない。」
彼は別の目的地があるようでここからは別になる。
「もう行くのか、寂しくなるな。」
「おう!元気でな!」
「お気をつけてー。」
「・・・またね。」
短い間ではあったがたしかに仲間だった。
少し寂しいが引き止めるわけにはいかないので、せめて最後はしっかりと見送ろう。
「短い間だったが共に旅をしたよしみだ。最後に一つだけ言っておく。」
「神殿の連中に気を付けろ。奴らは真実を隠匿した。」
「だがそれは今となっては知らない方が幸せな真実だ。」
「幸福を捨て真実を知る事も、真実を捨て幸福の中で生きる事も、それはお前達の自由だ。」
「せいぜい悩むといい。それはまだ知らぬが故の権利なのだから。」
そう言い残すと彼はまるで蜃気楼のように消えてしまった。
驚きはしたが、そういう特殊な魔法なのだろう。
言葉の意味は分からないが休憩を終えて歩き出すことにする。
目的の神都はもうすぐだ。
sideカナ
どうしても最後の言葉が気になる。
他のみんなはいつか分かるだろうと気にしていないようだけど、私はそう思わない。
何か致命的な事のような予感がする。
元々神殿に対して懐疑的だった。
神殿はβ版の邪神戦争の頃からずっと存在していて巨大な組織である事は分かっている。
けれど悪い噂を全く聞かない。
この大陸全土で広く信仰されている女神を崇める巨大組織であれば、普通良くない噂の一つや二つは必ずある筈。
信仰に熱心と言われてしまえばそうだけど、他の宗教の話を全く聞かないということは少なからず宗教戦争があったはず。
けれど宗教戦争や他の宗教についての話や伝承すら伝わっていない。
明らかにおかしい。
神殿側が何らかの隠蔽工作をしている事は確実。
問題はそうまでして何を隠そうとしているのか。
宗教戦争なんて時の流れとともに忘れ去られるようなもの。
そんなものに対して完全に秘匿する程の手間をかけるとは考えにくい。
ということは別の何らかの事実を隠そうとした?
・・・情報が足りない。
神都に着いたら秘密裏に調べてみることにする。
かなり遅れました。
就職活動が辛いです。
ですがいい職に着けるように頑張ってます。
今回は作品初の他プレイヤーと遭遇です。
人との絡みって難しい・・・。
でも書いてて楽しいです。
最後の方に少し不穏な影を出してみました。
後々伏線として回収しようかなと思ってます。
ちなみに今回の前書きも伏線として使おうかなと。
構想だけどんどん膨らんで大変ですが面白い展開が書けそうなので頑張っていきたいです。
次回は手に入れた素材を使ってのキューピー3分苦ッ禁愚を予定してます。
それと次回もかなり遅れそうです。
本当に、申し訳ない。