9 ~トランプ~
「いいに決まってるよ」
「ああ、よかった」
アオイは笑顔になって絵筆を持った両手を高く上げた。
「でも、どうやって描くんだい」
「しばらくの間、学校が終わったら私の部屋に来てほしい。デッサンしたいの」
「わかった。じゃあ、アオイの都合のいいときに来るよ。でも、弟さんや妹さんは? 世話をしなくてもいいのかい」
「私がユウキを描いているのを見ているか、飽きたら下の公園で遊ぶからだいじょうぶ」
「ちゃんと目がふたつ、口がひとつっていう絵を描いてくれるのかな」
僕はちょっぴり心配になって聞いた。
「抽象画はいやなのね。心配しなくてもだいじょうぶ。見たままを描くから」
「よかった、安心したよ。じゃあ、明日から描く?」
「明日は日曜日ね。ユウキがいいのならそうさせて」
アオイの声は、うきうきしている。
「ねえ、ユウキ、みんなでトランプしない?」
「いいね」
僕たち四人はトランプの七並べをした。アオイが勝って、小さなきょうだいたちは残念そうにしていた。
「お兄ちゃん、またしようね」
と小さなふたりが言ったので、
「じゃあ、明日もしよう」
と僕が答えたら、
「わーい」
と喜んでいた。
僕はアオイに紅茶とクッキーをごちそうになって帰った。