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最後の手紙  作者: 白鳥 真一郎
第2章  ~文通~
38/59

38 ~クリスマスが誕生日~


 アオイはどんどん自分の足で歩んで行く。


 美大に行ってもいいって言われてから、悩みが完全に吹っ切れたみたいに進んで行く。すごいなあ。


 アオイに教えてもらった『目の体操』をするようになった。効果はよく分からないけれど、これをした後は目の奥がとても気持ちいい。


 十二月になった。クリスマスにはアオイに何か贈ろう。ペンダントを作ろうかな。このまえ吉野川の河川敷で見つけた青く輝く石を磨いて飾りにしよう。




【アオイへ


 少し早いけどクリスマスプレゼント兼誕生プレゼントを贈るよ。手作りのペンダントなんだけど使ってほしいな。きっとアオイに似合うよ。


 真ん中の石は吉野川の石。ヒスイみたいな色だろう。僕が見つけたんだ。


 最近、ついにメガネをかけ始めた。なんだか慣れないね。でも、遠くがよく見えるようになった。ちょっと(かしこ)そうに見えるらしい。アオイに教えてもらった『目の体操』を毎日している。とても気持ちがいいよ。


 アオイが僕のメガネ姿を見たらどう思うか、実はとっても気になっている。会ったときに笑ったらだめだよ。アオイに笑われたらショックだから。


 『青い東大寺』ってどんな絵なんだろうなあ。内面から輝くような青。うーん、想像できない。写真に撮って送ってよ。

 

 建築の雑誌も立ち読みしているんだって? 絵だけじゃなくていろいろなものから美を吸収しようとしているんだね。そういえば、誰かの本に書いてあったよ。表面じゃなくて奥行きが大切だって。建築とか彫刻って奥行きがあって重量感があってそれだけで心に迫ってくるものがあるよね。


 絵で奥行きや重量感を表現するには色や形を超えた何かが必要なのかもしれないね。そういえば、この前、モネの睡蓮(すいれん)の絵の写真を見ていたら気付いたんだ。睡蓮に囲まれた水面に、別の世界へ通じるトンネルのようなものがあることに。


 なぜそう思ったかというと、そこだけ遠近法が狂っているんだ。あるはずの位置や大きさや角度とは違う睡蓮が描かれている所があって、そこだけ時間と空間が(ゆが)んでいるように見えるんだ。モネの睡蓮の絵を見ているうちに魔界に足を踏み入れるような感覚になるのは、きっとそのせいだよ。


 アオイの絵を見ていると魔界ではなくて幸せな世界に足を踏み入れるような感覚になる。それはいったいどんなトリックを使っているんだろうね。えっ? トリックなんか使ってないって?


 そう言うと思ってたよ。じゃあ、魔法かな。アオイはきっと自分でも知らないうちに魔法を使っているんだ。僕はアオイの魔法で知らないうちに幸せになっている。でも、アオイが消えたらその幸せは消えてしまう。


 なんだか自分でも何を書いているのかよくわからなくなってきた。とにかく、僕が言いたいのは一つだけ、アオイとこうしてつながっていることができて幸せだってこと!


         十二月十八日  ユウキより 


 追伸:写生のこと、アオイが乗り気でとてもうれしい  】





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