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最後の手紙  作者: 白鳥 真一郎
第1章  ~転校生~
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2  ~はじめまして~

「ウエダくん、はじめまして。私はタチバナ・アオイといいます。アオイって呼んでください」


「アオイさん……。とってもいい名前だね」


 ウエダくんは柔らかく笑って私の方に向いてくれた。


「ありがとう。私、この学校のことで知らないことはないから、なんでも遠慮なく聞いてね。それとね、私も絵を描くのがとても好きなの」


「アオイさんはどんな絵を描くの? 僕のことはユウキって呼んでほしいな」


 『ユウキくん』なのね。そのままじゃないの。まあ、いいか、私もアオイのままだしね。私はちょっと考えてから答えた。


「最近は抽象画に挑戦しているの。でも、一番好きなのは風景のスケッチ。ユウキくんはどんな絵を描くの?」


「僕も風景をスケッチするのが好きなんだ。暇さえあれば発明をしているか工作をしているか絵を描いているよ」


 風景のスケッチね、気が合いそう。発明はよくわからないけれど。


 チャイムが鳴った。


「エヘン」


 とアズマ先生がこっちを向いて咳払いをした。


「それでは、授業を始めます」




 放課後、校長室の掃除を終えた後に校長先生から楽しい話をいろいろ聞いていたら、いつのまにか、かなり時間が経っていた。


 教室に戻ってくると、ユウキくんがひとり残ってノートに何かを書き込んでいる。聞いてみると、発明のアイデアが浮かんできたので忘れないうちに記録しているらしい。それが一段落した後、暖房の消えた教室でユウキくんと話をした。


「転校は初めてじゃないでしょう」


 私は自分の席に座って椅子ごとユウキくんの方に向かって言った。


「ああ、そうだよ。どうしてわかったの?」


 ユウキくんはちょっと不思議そうに首をかしげた。


「あいさつ、慣れてたよね」


「そうなんだ、転校はもう五回目だよ」


「えっ、そんなに!」


 私は思わずそう叫んでしまった。五回も!


「父さんの仕事の関係でね、あっちこっち行っているんだ。父さんは建築関係の仕事をしているんだよ」


「大変ね、そんなに転校したら」


「そうなんだ。友達ができたと思ったらすぐに転校……。僕にはふるさとってものがないんだ」


 ユウキくんは、やってられないというふうにため息をついた。


「私は生まれも育ちも東京だから、ふるさとがないなんて想像しただけで寂しくなる」


「アオイさんの言うとおりだよ。いつもひとりぼっちのような気がして、とても寂しいんだ」


 ユウキくんは寂しがり屋さんのようには見えないけれど、そんなふうに自分のことを思っているんだね。でも、私だったらとても五回も転校なんかできない。耐えられないと思う。きっとユウキくんは強い心を持っているんだろうな。もっとユウキくんのことを知りたい……。

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