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最後の手紙  作者: 白鳥 真一郎
第2章  ~文通~
13/59

13 ~まるで目の前に~


 アオイが書いた字を見ていると、まるでアオイが目の前にいるみたいに思える。不思議だなあ。


 アオイは鉛筆じゃなくて色付きのペンで手紙を書いている。なんとなく読めるけど知らない漢字がある。そうか、アオイは辞書を引きながら書いているんだ。僕もそうしよう。


 それにしても、女の子と文通するなんて初めてだ。返事はどう書こうかなあ。なんだか緊張する。僕も拝啓とか敬具とか使ってみようか。




【 拝復 陽春の候、アオイ様にはいかがおすごしでしょうか。


 なんてね。アオイ、元気かい? なんだかね、拝復とか書くと、アオイが書いていた気恥ずかしさが僕にもわかったよ。


 でも、アオイが全然寂しがっていないっていうのはちょっとショックだな。だって、僕がいなくなってもちっとも心に痛手を受けていないっていうことだろう。


 まあ、それがアオイのいいところなんだけどね。絶対めげないというか、芯が強いというか、そんなところがアオイにはあるからね。


 ふたりだけの秘密の世界がこれから始まる、か。いいこと書くなあアオイは。そう考えたらいいんだね。なんだか僕もちっとも寂しくなくなってきたよ。


 白状するとね、アオイと遠く離れてから僕はとても寂しかったんだ。でも、アオイと同じように、だんだんワクワクしてきたよ、これからふたりの世界を作っていくんだと思ったらね。


 こっちの学校は鴨島中央小学校っていうんだ。家から歩いて二分くらいだよ。とっても近い。そっちと違って一学年二クラスしかない。


 町の外れに吉野川がある。一度行ってみたけれど、とても大きな川だ。きっとアオイにも気に入ってもらえると思うな。


 アズマ先生とヨシダ先生の結婚の話は初耳だよ。あのふたり、どこをどうしたら一緒になるんだい? アオイの言うとおりいつもケンカばかりしていたもんね。ケンカするほど仲がいいって言うけど、そのとおりなのかな。


 僕とアオイはどうだろう。話し合いはしてもケンカはしないよね。本当は仲がよくなかったりして。なんて言ったらアオイに叱られそうだ。  敬具


     アオイ様  四月十日   ユウキより     】




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